イヌ血小板由来成長因子療法とは
近年、血液を利用した新しい再生医療が注目されています。
それは血液の中の血小板という細胞から成長因子を抽出し、患部に投与する治療方法です。
成長因子には組織の修復を促進したり、炎症を抑える機能があります。
この治療方法はヒトの医療では数多くの有用性が報告されており、新たな治療効果が得られたり、副作用を抑えて治療を継続したりできる可能性があります。

イヌ血小板由来成長因子療法にまつわるQ&A
そうはいっても獣医療ではまだ一般的ではないため、分からないことが多いでしょう。様々な疑問にQ&A形式でお答えします。
Q. イヌ血小板由来成長因子療法は猫にも投与できるの?
A. 犬のみが対象です。
Q.犬のどんな病気に投与できるの?
A. 以下の病気が挙げられます。
・角膜潰瘍
・乾性角結膜炎
・変形性関節症
Q. 採血は必要?
A. 健康な犬から血液を採取し、その血液を加工したものを投与するため、患者である犬自身の採血は不要です。
Q.投与する時は手術が必要?
A. 手術は行わず、目の疾患(角膜潰瘍、乾性角結膜炎)は点眼、関節の疾患(変形性関節症)は関節腔内注射により投与します。
角膜潰瘍における実症例
角膜潰瘍って?
眼の表面にある、複数の層でできている透明な膜を「角膜」と呼びます。これが外傷や刺激物質、感染症、ドライアイなどの影響で傷つくと、角膜潰瘍という病気を起こします。
角膜の深くまで侵されると穴が開き、眼球内部の炎症や感染、視覚障害にいたることもあります。
軽度であれば、1~2週間ほどの点眼治療のみで治癒することもありますが、深層まで欠損を起こすと、手術が必要になる場合もあります。特に角膜全層に完全に穴があいてしまう角膜穿孔は、眼球内の細菌感染を起こす可能性が高く、緊急手術を要する場合もあります。
角膜潰瘍にかかりやすい犬種は?
パグやフレンチ・ブルドッグなどは、眼球が大きく突出しているため、角膜を傷つけてしまうことが多いです。
また、眼をぶつけやすい持病があると、角膜の外傷はおこりやすくなります。
例えば、白内障による視力低下(高齢や糖尿病の影響など)や、よろめきのある要介護犬、神経症状があり正常な歩行が難しい犬などでは、眼の外傷が起こりやすいです。
ここからは「角膜潰瘍」においてイヌ血小板由来成長因子療法を実施した結果、改善の兆候がみられた症例をご紹介します。
※ 治療の効果は、患者の状態、対象の病気、投与方法などによって異なります。
12歳/ボストンテリアの症例
■ Before

緑色に光っているのが角膜に傷がついている部分です。
角膜上皮の接着障害により、角膜潰瘍の再発を繰り返していました。一般的な点眼治療に加えて外科的処置も行いましたが、それでも再発してしまいました。
■ After

緑に光っていている部分が消え、角膜の傷が修復したことがわかります。
14歳/イタリアン・グレーハウンドの症例
■ Before

一般的な点眼治療を行っても、目のくぼみや充血、濁りが改善しませんでした。
■ After

目のくぼみや充血、濁りがかなり改善したことが分かります。
再生医療を受けられる病院はこちら
再生医療は、全国どこの動物病院でもできるという訳ではありませんが、以下の病院で受けていただくことができます。
■アニコムどうぶつ病院グループ病院
アニコム先進医療研究所株式会社が運営する動物病院の一部では、再生医療の適切な普及・拡大を目的とする「動物再生医療技術研究組合」に加入しているため、再生医療を受けることが可能です。
※ 一部の病院を除く
►アニコムどうぶつ病院グループ一覧はこちら
※アニコム先進医療研究所株式会社のHPに移動します。注射器のマークがある動物病院で再生医療が受けられます。
■動物再生医療技術研究組合の加入病院
「動物再生医療技術研究組合」に加入している他の動物病院でも再生医療を受けることが可能です。
►動物再生医療技術研究組合参加病院一覧はこちら
※アニコム損保が加入している再生医療の研究を行う組合(動物再生医療技術研究組合)のHPに移動します。
なお、アニコム損保では、飼い主さまに代わり、かかりつけの動物病院へご連絡することも行っています。ご希望の場合は以下のアニコム損保あんしんサービスセンターへご連絡ください。
► 0800-888-8256
受付時間: 平日 9:30~17:30 / 土日・祝日 9:30 ~15:30
※サービス向上のため、通話内容を録音させていただきます。
【WEBでお問い合わせ】
►お問い合わせはこちら※1,2
【再生医療対応の病院をさがす】
►全国の実施可能病院一覧※1
※1 動物再生医療技術研究組合のHPに移動します。
※2 お問い合わせへの回答は動物再生医療技術研究組合から行います。
<最後に>
角膜潰瘍は、犬の眼科疾患でよくみられる病気です。他の眼科疾患や体質がもとで発症することもあれば、健康な犬が眼をケガすることでも起こります。急激に悪化し、角膜に穴があいたり、眼球内に細菌感染を起こすこともあるので、眼を痛がる様子や角膜表面にへこみが見られたときは、すぐに動物病院を受診しましょう。
また、これまで治らなかった病気でも、再生医療で治せる可能性があります。諦める前に、新たな選択肢を一度ご検討ください。