女の子のうさぎで気を付けるべき病気に子宮腺癌(しきゅうせんがん)があります。

避妊手術をしていないうさぎは子宮の病気になる確率が非常に高く、特に子宮腺癌は発症してしまうと命を落とす可能性がある怖い病気です。そのため、予防や早期発見が非常に重要になります。正しい知識を持って、病気に備えるようにしましょう。

今回は、うさぎの子宮腺癌について解説します。

うさぎの子宮腺癌ってどんな病気?

女の子のうさぎ

子宮腺癌は、避妊手術をしていない女の子のうさぎで最も多い腫瘍です。

うさぎは子宮の病気になりやすい動物で、3~4歳ごろからかかり始め、7~8歳でほとんどが子宮の病気になるといわれています。子宮腺癌のほかに子宮内膜過形成(しきゅうないまくかけいせい)、子宮水腫(しきゅうすいしゅ)、子宮筋腫、子宮蓄膿症などさまざまな病気が起こります。まれに3歳以下でも発症することがあります。

子宮腺癌は6~24ヶ月かけてゆっくりと進行し、治療しないと24ヶ月以内にほとんど命を落としてしまうといわれています。また、転移しやすく、肺や消化管、腹膜、肝臓、脾臓(ひぞう)など様々な臓器に広がることがあります。

うさぎの子宮腺癌はどんな症状が出る?

初期は無症状なことがほとんどです。

最も気が付きやすい症状は血尿です。その他には、陰部からの出血、お腹のはれや硬いものがお腹に触れるといった症状が見られます。

食欲不振や元気がなくなる様子は、末期になるまで起こらないことが多いです。

末期になると、長期的な出血による貧血や、腹膜の炎症による腹痛、肺への転移による呼吸困難などさまざまな症状が現れ、最終的には命を落としてしまいます。

うさぎの子宮腺癌の原因は?

うさぎは1年中繁殖が可能で、1ヶ月の間に数日の発情休止期がある以外は年中発情状態になっています。

野生のうさぎは妊娠、出産を繰り返しています。この場合、妊娠している時期はプロゲステロン、それ以外の時期はエストロゲンという女性ホルモンが優位な状態になっています。

しかし、妊娠しない飼育されているうさぎはホルモンのバランスが崩れ、子宮がエストロゲンに異常に長期間さらされている状態になっていて、これが子宮疾患を起こす原因と考えられています。

その他には、遺伝なども原因と考えられています。

うさぎの子宮腺癌に関連する病気はある?

うさぎ

うさぎの子宮疾患でよく見られるものに、子宮内膜過形成(しきゅうないまくかけいせい)があります。やはりホルモンバランスの影響で子宮の内膜に嚢胞(のうほう:液体のたまった袋のこと)やポリープができる病気ですが、子宮腺癌に移行していく可能性があるといわれています。

主な症状は陰部からの出血や血尿で、見つかった場合には早めに卵巣と子宮の摘出手術(避妊手術)をすることがすすめられています。

また、子宮の疾患と同じようにホルモンバランスの影響で起こる病気として乳腺嚢胞(にゅせんのうほう)があります。乳腺の複数個所に嚢胞ができることが多いです。

菌が感染して乳腺炎になったり、乳腺腫瘍に移行したりすることもある病気で、やはり避妊手術によって治療します。

乳腺の病気と子宮の病気は同時に見られることが多いため、乳腺をこまめにチェックして異常があれば子宮の検査も一緒に行うようにしましょう。

うさぎの子宮腺癌はどんな治療をするの?

子宮と卵巣を摘出する手術(避妊手術)を行います。

ただし、末期で転移がある、腎不全や肝不全などがある、貧血を起こしているなどの場合、手術のリスクが高くなるため、できない可能性もあります。

その場合には、痛み止めや点滴などの補助療法(手術の他にできる治療のこと)を行い、なるべくうさぎの負担を取り除きます。

ただし、内科的に治療することは難しいため、早期発見、早期治療が大切になります。

治療費は?どれくらい通院が必要?

みんなのどうぶつ病気大百科』によると、子宮腺癌における1回あたりの治療費は7,992円程度、年間通院回数は2回程度です。

病気はいつわが子の身にふりかかるかわかりません。万が一、病気になってしまっても、納得のいく治療をしてあげるために、ペット保険への加入を検討してみるのもよいかもしれません。

うさぎの子宮腺癌の予防法は?

避妊手術が一番の予防法になります。

避妊手術は生後6ヶ月~1歳齢の間に受けるのが望ましいとされています。早すぎると子宮が細いため手術が難しく、また、年齢を重ねると、脂肪が臓器に多くついてしまうことで手術がしにくくなったりさまざまな内臓に問題が出てきたりするため、麻酔や手術のリスクが高まります。

避妊していないうさぎの場合には、血尿や陰部の出血、乳腺のはれなどの症状がないかをこまめに確認し、気になることがあれば早めに病院に行くようにしましょう。

まとめ

女の子のうさぎは子宮の病気になる危険がとても高く、その中でも子宮腺癌は命に関わる病気です。

最大の予防は避妊手術です。手術には適した時期やメリット、デメリットがあるため、女の子のうさぎを家に迎えたら早めに病院で相談することをおすすめします。手術を受けさせないという選択をした場合には、子宮に異常がないか定期健診を受けるようにしましょう。

監修獣医師

石川美衣

石川美衣

日本獣医生命科学大学卒業。2008年、獣医師免許取得。卒業後は横浜市の動物病院で診察に従事、また東京農工大学で皮膚科研修医をしていました。2016年に日本獣医皮膚科認定医取得。現在は川崎市の動物病院で一次診療に従事。小さいころからずっと犬と生活しており、実家には今もポメラニアンがいて、帰省のたびにお腹の毛をモフモフするのが楽しみ。診察で出会う犬猫やウサギなどの可愛さに日々癒されています。そろそろ我が家にも新しい子を迎えたいと思案中。