チモシー(牧草)はうさぎの主食。単に栄養源になるだけでなく、歯とお腹の健康を守るためにも欠かせない食事です。ところが、チモシーをたっぷり与えているのにうさぎがあまり食べない!という場合も。それも決して珍しいことではありません。うさぎがチモシーを食べないときはどうすればいいのか、飼い主にできることを考えていきましょう。

もともと食べない場合

「飼い始めてからずっと牧草を食べる量が少ない。健康に問題はなく元気ではあるけれど、このままで大丈夫?」という場合、次のような原因が考えられます。

ペレットやおやつの量が多い

そもそもペレットの量が多く、それだけでお腹がいっぱいになっていると牧草を食べなくなります。ペレットやおやつのおいしい味に慣れてしまい、チモシーの味に満足できなくなっている可能性も。

【対策】
ペレットとおやつの量を見直しましょう。大人のうさぎの場合、1日に与えるペレットは体重の1.5~2%が目安です。適切な量がわからないときは、うさぎに詳しい動物病院などで相談しても。おやつは量だけでなく内容も見直しを。甘味が強いおやつは本当に特別なときに留めて、日頃は野菜やハーブ、牧草ペレットなどヘルシーなおやつにしましょう。

チモシー(牧草)の香りがとんだり湿気たりしている

チモシーを牧草入れにたっぷり入れて時間が経つと、チモシーの香りが少なくなったり、湿気たりして食べる気が起こらない、食べてもおいしくない、という状態になります。

【対策】
チモシーを入れるタイミングを見直してみてください。ペレットを入れるとき、同時にチモシーも交換していませんか?同時に与えると先にペレットを食べてしまい、チモシーが後回しになっていざ食べようと思ったときには、香りがとんだり湿気たりしておいしくなくなっているかもしれません。ペレットを入れた2〜3時間後か、ペレットを入れる時間の中間など、時間をずらしてチモシーを交換するようにしましょう。

新しいチモシーをできる限りこまめに補充するのもひとつの方法です。こまめに入れるなら1回あたりの量を減らしてもいいのですが、うさぎにとっては食べる部分を選ぶことがチモシーを食べるときの楽しみであることも。少なすぎると選ぶ楽しみがなくなって結局食べる量が変わらないかもしれないので、ほどほどにしましょう。

また、チモシーの袋は必ず密閉して湿気の少ないところで保管してください。

与えているチモシー(牧草)自体が苦手

うさぎの好みは千差万別で中にはチモシー自体が好きではない、という子もいます。

【対策】
同じチモシーでもハードタイプ(一番刈り)だけでなくソフトタイプ(二番刈り)を加えたり、シングルプレスからダブルプレスにかえたり、産地が異なるものを購入するなどして、好みを探ってみましょう。どうしてもチモシーが気に入らないようであれば、イタリアンライグラス、オーチャードグラスなどほかのイネ科の牧草をメインにしても。アルファルファなどマメ科の牧草は栄養過多になるので、好んで食べてもチモシーの代わりにはなりません。

そのほかにできること

上であげた対策のほかに、次のことも試してみてください。

・チモシーの置き場所を見直す

ケージの中でどこにチモシーを置くかも重要です。トイレに行ったついでに食べるのが好きな子もいれば、水の近くにチモシーがあるとうれしい子も。うさぎの好みに合わせて置き場所を変えるか、複数の場所に置いてみてもいいでしょう。

・牧草の容器を見直す

うさぎは基本的には、チモシーを選んで引き出して食べることを好みます。牧草入れは、すき間から牧草を引き出して食べられるタイプが第一候補になります。ただ、これもうさぎによって好みが異なり、直置きの方がうれしい場合も。牧草の容器も色々と試してみましょう。

・遊びの要素を入れる

遊びに夢中になることで食べることも。チモシーで編まれたかじるおもちゃや、転がすと牧草が出てくるおもちゃ、ボールタイプの牧草入れなどを用意して、遊びながら食べてもらうことも試してみましょう。

・ふりかけで味に変化をつける

同じチモシーに飽きてしまっている場合、いつもとちがう香りをプラスすると興味を持って食べてくれるかもしれません。乾燥ハーブや乾燥野菜を細かくして、チモシーにふりかけてみるのもおすすめです。

・生牧草を与えてみる

生牧草はペットショップや通販で手に入ります。「猫草」として販売されているエンバクもイネ科の牧草です。メインの牧草にするには管理が難しくおやつ程度にはなりますが、生牧草をおいしく食べたことがきっかけとなり、乾燥された牧草もよく食べるようになる可能性があります。

突然チモシー(牧草)を食べなくなったとき

それまではよく食べていたのに突然食べなくなった場合は、次の原因が考えられます。

食欲不振

胃腸の不調やほかの病気で食欲が落ちているかもしれません。

【対策】
ペレットは食べられているか、またうんちの様子もチェックしましょう。食欲が落ちているようであれば、早めに動物病院を受診してください。

口の中に痛みがある

歯が伸び過ぎて口の中にあたっている場合や、口の中に何らかの異常があるとき、牧草を食べなくなることがあります。

【対策】
よだれがあふれる、口をくちゃくちゃするなど、お口の中に異常がある様子が見られたら早めに動物病院を受診してください。

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牧草のロットが変わった

ロットは製品の生産単位のことで、同じロットであれば、同じ環境・タイミングで作られた同一仕様の製品であることを意味します。チモシーの場合は、一度に入荷した単位を指し、同じ畑で同じ時期に刈り取られたチモシーになります。同じ畑で育ったチモシーでも、そのときの雨量や保管の状態で品質は変わるものです。敏感なうさぎの中には、このロットの変化を察知して食べなくなる子もいます。

【対策】
チモシーを新しい袋に替えるときは、ロットが変わっている可能性があるので、古いチモシーに新しいものを少しずつ混ぜて慣れてもらいましょう。ロットナンバーがわかるチモシーを購入して、なるべく同じものを与えても。ロットナンバーが切り替わるときは、慎重に少しずつ混ぜていきましょう。

まとめ

うさぎがチモシーを食べない理由はさまざま。健康に問題がある場合もあるので、気になるときは受診をしましょう。今は健康に問題がなくても、あまり食べない状態が続くと将来的に歯の不正咬合につながることも。牧草ペレットを食べてもらうという最終手段もありますが、飼い主としてはより安価なチモシーを食べてくれることが理想でしょう。うさぎをよく観察したり、コミュニケーションをとったりして楽しみながら、チモシーをたくさん食べる方法を試してみてくださいね。

ライター

佐藤華奈子

佐藤華奈子

大学の動物系学科を卒業後、教育情報誌、ライフスタイル誌の編集プロダクション勤務を経て、2009年よりフリーランスの動物ライターに。「動物を飼うことは動物と暮らすこと」をテーマに活動中。おもにペット、動物園、牧場の動物関連の雑誌、書籍などで執筆。2011年よりうさぎ(ネザーランドドワーフ)と暮らしているうさぎ愛好家。