かわいいうさぎの病気の予防とお手入れ、さらには健康チェックやコミュニケーションも兼ねて行うブラッシング。ところが専用のブラシを用意していざ始めようとすると、当のうさぎは嫌がって逃げたり怒ったりすることがあります。最後にはブラシを持った手を近づけただけで、うさパンチをお見舞いされることも。実は、ブラッシングが嫌いなうさぎは珍しくありません。ここではうさぎがブラッシングを嫌がる理由と対処法を解説します。

ブラッシングが嫌いなうさぎは多い

うさぎといえば、ふわふわの毛。うさぎの毛をきれいに保つためにブラッシングはこまめにしてあげたいという飼い主さんもいるでしょう。そもそもうさぎにブラッシングが必要なのは、うさぎが抜けた毛を飲み込み過ぎてお腹に詰まってしまう毛球症を防ぐため。大量に毛が抜ける換毛期は、抜け毛の量に応じて1日1回もしくは2日に一度はブラッシングをしたいところです。換毛期以外でも、室内飼育のうさぎは長期間にわたって少しずつ毛が抜けることもあるため、短毛種は週に1回、長毛種は週に2~3回がお手入れの目安となっています。

ところが、大半のうさぎはブラッシングが好きではありません。うさぎの皮膚はデリケートなので、毛が引っ張られる感触を不快に思うようです。ブラッシングが嫌いなうさぎは、ブラシをかけられている間落ち着かず、逃げ出そうとしたり、噛みつこうとしたりします。うさぎがブラッシングを嫌う場合、飼い主はどうすればいいのでしょうか。まずはうさぎの気持ちに寄り添うために、嫌いな理由を考えてみましょう。

嫌がる理由1ブラシのあたりが不快

ブラシが皮膚にあたることが不快で嫌がるうさぎは多く見られます。残念ながら効果的に抜け毛が取れるブラシほど、うさぎが嫌うことが多いものです。うさぎが許してくれるかどうかと、毛の取りやすさのバランスを見ながらブラシを選ぶことになります。うさぎのためのブラシはいろいろありますが、種類によって使用目的や注意点が異なります。代表的なブラシの特徴は次の通りです。

ラバーブラシ

ゴム製の柔らかいブラシ。嫌がらないうさぎが多く、マッサージにも使用できます。使いやすいブラシですが、表面の毛(オーバーコート)を取るもので、下の方の毛(アンダーコート)は取れにくくなっています。ゴムを誤食することもあるので気をつけてください。

スリッカーブラシ

皮膚に近い下毛がよく取れます。小動物・うさぎ用の先端が丸くカバーされたあたりがやさしいものを選びましょう。それでも先端が皮膚に触れると痛いので、嫌がるうさぎは多いです。皮膚に直接あてないように使用してください。

コーム

目が細かいものから粗いものまでさまざまなタイプがあります。目が細かいものは下毛がしっかりとれます。特に目が詰まったノミ取り櫛はよく取れるものの、毛を引っ張るためうさぎは嫌がることが多く、家庭では使わないことが多いでしょう。金属製のものは皮膚を傷つけるので、皮膚にあてないように使用します。家庭での使用にはプラスチック製もおすすめです。

なお、うさぎの皮膚を傷つける可能性があるので、犬や猫などほかの動物用のブラシ、特に金属製や硬い毛のブラシの使用はNGです。

嫌がる理由2触られたくないところにあたっている

最初はブラシを嫌がらなくても、途中で怒ったり逃げ出したりすることもあります。丁寧にブラッシングしようとするあまり、お尻や足、お腹など触れられたくない部分にブラシがあたることで、嫌になってしまうことも。ブラッシングの一番の目的は、うさぎが飲み込んでしまう毛の量を減らして毛球症のリスクを減らすこと。全身を完璧にブラッシングする必要はありません。短毛種は仰向けにしてお腹までブラシをあてなくても、背中や顔まわりから抜けた毛を取り除ければOKと考えてください。
また、体調を崩して痛いところがある場合もうさぎは触れられることを嫌がります。急に嫌がる、怒るといったことがあれば、食欲やうんちの状態など、体調も気にかけてあげましょう。

嫌がる理由3:慣れていなくて警戒している

うさぎは知らないものを警戒するので、見慣れないブラシを突然体にあてると、それだけで怒ってしまうかもしれません。新しいブラシは突然使用し始めるのではなく、しばらくうさぎの見えるところに置く、ぬいぐるみにかけるところを見せるなどして、慣れる期間を設けましょう。
換毛期は一生懸命ブラッシングをしても、それ以外の時期はあまりしていない場合も多いかもしれません。換毛期のうさぎはそれだけでも苛立つことがあるので、そのタイミングで慣れないブラシを持ち出されると、さらにイライラさせてしまう可能性も。短毛種は換毛期以外はブラッシングの必要を感じないかもしれませんが、週に1度のブラッシングを習慣づけましょう。ブラシに慣れてもらうためなので、時間は短めでOKです。

嫌がる理由4:ブラッシングのための抱っこが嫌

ブラッシングのために膝の上に載せられることを嫌がっていることも考えられます。この場合、膝の上でブラッシングすることにこだわる必要はありません。床の上で済ませてしまいましょう。手でなでてリラックスしている間にブラシをかけます。うさぎが飽きてしまわないように、手でなでることとブラシをかけることを交互に行うといいでしょう。

嫌がる理由5:グルーミングスプレーが嫌

毛の抜ける量が少なめのとき、毛を集めるのに便利なグルーミングスプレー。でも、うさぎはこのグルーミングスプレーの香りが嫌い、スプレーが耳や目など顔にかかるから嫌、という場合もあります。うさぎが嫌っているようであれば、水をスプレーしても。スプレーされること自体を嫌がる場合は、手に水をスプレーしてから触れるなどして、工夫してみましょう。

ブラッシングを好きになってもらう工夫

上で説明したように、無理に抱っこしたり台の上にのせたりするのではなく、慣れた場所の床で行っても構いません。マッサージなど好きなことと組み合わせてなるべくリラックスしてもらいましょう。前後におやつをあげることも、ブラッシングに前向きになってくれることにつながります。

どうしても嫌がるとき、できること

ブラシにこだわらず、手のひら部分にゴムがついたグルーミンググローブや、素手で余分な毛をとる方法もあります。そして、できるだけなでてあげることも、ブラッシングの代用になります。なでるだけでも不要な毛は多少取り除かれるからです。どうしてもブラシを使いたい場合は、深めの段ボールなど、狭くて深い箱にうさぎを入れて動きにくくして、短時間でブラッシングを終わらせるといいでしょう。長毛種でブラッシングが難しく、毛が絡まってしまってほぐすことが難しい場合は、うさぎ専門店や動物病院で相談することもひとつの方法です。

まとめ

うさぎがブラッシングを嫌がる原因は、ひとつではなく上記が組み合わさっている場合も。まずはわが子の様子をよく見て、うさぎと飼い主双方に快適なやり方を探していきましょう。

ライター

佐藤華奈子

佐藤華奈子

大学の動物系学科を卒業後、教育情報誌、ライフスタイル誌の編集プロダクション勤務を経て、2009年よりフリーランスの動物ライターに。「動物を飼うことは動物と暮らすこと」をテーマに活動中。おもにペット、動物園、牧場の動物関連の雑誌、書籍などで執筆。2011年よりうさぎ(ネザーランドドワーフ)と暮らしているうさぎ愛好家。