
「うさぎのうんちの状態がいつもと違う」「うさぎが下痢をしている」と感じたとき、消化管で異変が起こっている可能性があります。うさぎは常に消化管が動いているどうぶつなので、消化管の異常は体調不良に直結し、早期に治療しないと重篤化してしまうことも多く、注意が必要です。今回は消化器官の異常の1つ、大腸菌症について解説します。
大腸菌症ってどんな病気?
大腸菌(Escherichia coli)により引き起こされるうさぎの下痢を指します。衛生状態の悪い環境において多頭飼育されたうさぎで集団発生が認められ、病原性の高い大腸菌は人獣共通感染症にも該当するため問題となったこともありました。現在、一般家庭で過ごすうさぎではあまり発生がありませんが、特に若齢のうさぎ・基礎疾患や病気によって免疫力が低下しているうさぎで注意が必要です。大腸菌は一般家庭の健康なうさぎの腸管にはほとんどいないと言われていますが、腸内細菌のバランスがくずれると一気に増殖して毒素などを作り出します。大腸菌が異常に増えたり、毒素が作られたりすることで、下痢が引き起こされます。
大腸菌症はどんな症状が出る?

幼いうさぎでは週齢によって症状が少し異なります。1~2週齢では黄色の水下痢をし、死亡率も高いと報告されています。感染性が高く、一緒に育っているうさぎに広まることもあります。4~6週齢では緑褐色(緑がかった茶色のような色)の下痢で、早期に適切な処置を行わないと死に至ります。下痢による脱水と栄養不良状態が目立ち、うまく治療できた場合でも発育不全となることもあります。
大腸菌症の原因は?
大腸菌症は大腸菌による下痢を指しますが、この病気の主な背景には腸内細菌バランスの崩壊があります。腸内細菌バランスの崩壊の一因にはストレスや消化管への過剰な負担があり、大腸菌以外の病原性腸内細菌(病気を引き起こす腸内細菌のこと)を増殖させる引き金にもなります。幼いうさぎに限らず、ライフステージに合った適切なごはんを与え、多頭飼育の場合、過密になることを避けましょう。また、移動する必要がある場合はストレスを与えないよう十分に注意してください。なお、下痢が認められた場合は週齢に関わらず、急いで動物病院を受診してください。大腸菌症に限らず、下痢を引き起こす病気は急速にうさぎの体力を奪います。早い回復のためにも様子見はなるべくしないでください。
大腸菌症はどんな治療をするの?

増えてしまった大腸菌を減らすために抗菌薬を投与します。また、脱水や栄養状態が良くない場合、輸液や栄養療法を行うことでさらなる体力の消耗を防ぎます。離乳前の1~2週齢のうさぎは身体的な機能も未熟なため、体温の管理にも注意が必要です。うさぎに適した室温は18℃~23℃と言われていますが、暑さには弱いので、保温のために温度を上げる場合でも25℃までが良いとされます。
家庭では、下痢による脱水を防ぐため、いつでも新鮮な水を摂取できるようにすることが大切です。なお、下痢で被毛や足底が汚れると皮膚感染症を引き起こすため、牧草や床材は汚れたら可能な限り交換し、通常よりも掃除回数を増やすことをおすすめします。
大腸菌症の予防法は?

前述のとおり、消化管への負担やストレスによる腸内細菌バランスの崩壊に注意しましょう。急な環境や気温の変化、大幅なごはん内容の変更、長距離移動などが該当します。とはいえ、季節の変わり目や引っ越しなど、避けられないこともあります。便の形状や量がいつもと変わらないか、牧草やペレットはきちんと減っているかをよく確認することが大切です。
ごはんは十分な水分とチモシーを主食とした繊維を採れるものにし、食事を変更したり、新しいものを与える際には、少量ずつにして変化が無いか様子を見ることが大事です。なお、胃腸の調子を整える善玉菌が含まれるサプリメントも年齢に応じて使用可能のため、かかりつけの先生にもご相談ください。
他のうさぎへは、排泄された大腸菌が口に入ることで広まるため、排泄物がたまらないよう、普段から衛生的な管理をし、万一感染してしまった場合は徹底的に消毒をして拡大を防いでください。
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まとめ
大腸菌症は、異常に増えてしまった大腸菌による下痢で、特に幼いうさぎで大きな問題となります。体力的に未熟な状態での発生が多いため、下痢が認められたらすぐに動物病院を受診しましょう。他のうさぎもいる場合は感染リスクを考慮し、消毒方法などは獣医師の指示に従ってください。
