
うさぎのおなかが張っている!?それは腸の動きが悪くなっているサインかもしれません。重篤な場合、外科手術が必要な命に関わる病気『腸閉塞』について解説します。
腸閉塞ってどんな病気?
腸の中の通り道がふさがれてしまい、腸の動きが悪くなったり、完全に活動が停まってしまう状態です。通り道が完全にふさがれてしまう急性の腸閉塞は、命に関わる状態です。閉塞を引き起こすもので最も一般的なものは、うさぎ自身の被毛が集まってかたく固まったものです。詳細が明らかになっていない部分もありますが、この塊は盲腸で作られることが多く、盲腸便と一緒に排泄され、食糞時に口から取り込まれることで、細い腸管に詰まってしまうのが原因と考えられています。大きさにしてアーモンド1粒程のものでも閉塞を引き起こすと言われています。
腸閉塞はどんな症状が出る?
腸の内容物が、閉塞した部分で詰まってしまい、それより先の消化管へ流れなくなることから、便秘が主な症状と思われがちですが、便の量が減少する前後に、食欲低下や沈うつ(元気がない様子)の症状も並行して発生します。不完全な閉塞であれば落ち着きなく体勢を頻繁に変える様子が見られることがありますが、完全な腸閉塞は痛みを伴うため、体を丸めるなどして活動性が明らかに低下します。腸が閉塞すると、閉塞した手前の部分に水分が急速に貯まります。合わせて、腸内細菌のうちガスを発生させるものが増殖するため、ガスも貯まってしまいます。このため、お腹を触ると液体かガスが貯まっているような張った感触になります。
症状の進行の度合いは閉塞の場所によっても異なり、重篤なものは数時間以内にショック症状に進行するため要注意です。閉塞の発生初期は呼吸や心拍が速くなりますが、ショック状態になると心拍、体温、血圧ともに低下していきます。自宅で体温を測れる場合、通常と様子が異なり、体温が37℃前半を下回るようであれば至急病院を受診してください。また、腸閉塞などの消化器症状の場合、肛門に触れることを嫌がり、体温測定させてくれないうさぎが多いです。体温が測れない場合でも、上述のように、便の異変や食欲低下、沈うつの症状がみられたら、速やかに病院を受診しましょう。
腸閉塞に関連する病気はある?

口から食べたものだけが腸閉塞の原因になるとは限りません。腸管の腫瘍や寄生虫、外科手術後の炎症などにより、腸管の通り道が細くなってしまうことも原因になる場合があります。
腸管が完全に閉塞すると、そこを中心に血流が滞り、前述のように液体やガスが貯まってしまい、腸の組織が壊れていきます。閉塞を取り除かない限り腸の組織は壊れ続けるため、発見次第、病院での処置が必要になります。胃の出口付近で閉塞が起こってしまった場合、病気の進行に伴って胃が破裂してしまうこともあるので要注意です。また、液体が大量に腸管に貯まることで、全身をめぐる血液量が減ってしまい、低血圧が引き起こされるのも特徴です。元気がない、と気づいたら迷わず病院へ行ってください。
腸閉塞はどんな治療をするの?
閉塞を解除する処置を中心とし、ショック症状の改善のために体温を維持し、痛みを取り除き、体液バランスを元に戻していきます。腸閉塞が胃に近い部位で、胃に液体やガスが貯まっている場合、鎮静または麻酔下で胃までチューブを差し込み、中身を取り除きながら胃の張りを解消していきます。閉塞が解除されれば、レントゲン画像で腸管のガスの移動が観察できるようになります。状態が改善しない場合や、閉塞物が動かない場合、または腸管内容物ではない別の原因による閉塞の場合、お腹をあけて外科的に閉塞を解除し、状況によっては組織の回復が見込めない腸を一部切除します。
家庭では、いつもと同じ環境で安静にしてあげましょう。ケージやトイレ等に段差があると、その段差を超えるのが負担になる場合があります。うさぎの様子を確認し、負担になっているようであれば取り除くなどの対策をしてあげましょう。
腸閉塞の予防法は?

腸閉塞の原因となりやすいのは被毛の塊ですが、うさぎは生理的にグルーミングを行うため、消化管内に被毛があるのは異常なことではありません。問題となるのは、消化管の動きが低下し、正常であれば問題なく排泄されるはずの被毛が、腸の中に長時間滞在することで硬くかたまってしまうことと考えられています。うさぎの消化管機能の低下には様々な要因があり、全てが解明されていませんが、脱水と繊維成分の少ないごはんが主に問題視されます。常に新鮮な水と牧草を口にすることができるような環境を用意してください。主食の牧草をあまり食べない場合、牧草の種類が好みではない可能性もあります。マメ科やイネ科、1番刈りや2番刈りなど、さまざまな種類があるため、年齢や健康状態を考慮しながら、美味しく食べてくれる牧草を探してみてください。また、カーペットやビニール製品などを噛みちぎる癖がある場合は、それらに接触できないよう注意してあげてください。
被毛の抜ける量や毛玉のできやすさは、うさぎの種類により異なります。ネザーランドドワーフのような短毛腫よりも、アンゴラやライオンヘッドのような長毛種の方が毛玉になりやすいため、できれば毎日ブラッシングをしてあげましょう。換毛期は、うさぎ自身のグルーミングで普段より多くの被毛が消化管内に入ってしまうため、ブラッシングの回数を多くすることをお勧めします。
まとめ
腸閉塞は命にかかわる重大な病気です。外からは、腸の中で何かが閉塞しているのかどうかは見えません。急に元気がなくなった、食べなくなった、便の量が少ない気がする、じっとしている、おなかが張っている気がする、などの異変に気づいた場合は、早急に動物病院を受診してください。
