ちくわの袋を開けると、どこからともなくやってくる猫。可愛い顔で見つめられたら、少しくらいあげてもいいかな?と思ってしまいますよね。本当のところ、ちくわをあげもいいの?食べても大丈夫?と心配している方のために気を付けてほしいポイントを解説します。

猫にちくわをあげても大丈夫?

結論から言うと、猫にちくわをあげるのはNGです。ちくわは、人が食べるものとして作られているため、人には安全な基準でも猫にとって安全かどうかの検査をしているわけでもありませんし、「猫にあげるかもしれない」と考慮して作られているわけでもありません。

魚を主原料としているためあげても問題なさそうに思えますが、ちくわは加工食品であり、魚のすり身だけでなく卵や調味料などが含まれています。

また、市販されているちくわのメーカーや商品の種類によって原材料は異なりますので、もしも食べてしまった場合には、パッケージ裏の原材料を確認して控えておきましょう。

ちくわの栄養分

一般的なちくわの栄養成分は、可食部100gあたりの数値で以下の通りです。

エネルギー 119kacl
水分    69.9g
たんぱく質 12.2g
脂質    2.0g
炭水化物  13.5g
灰分    2.4g
ナトリウム 830mg
カリウム  95mg
カルシウム 15mg
マグネシウム15mg
リン     110mg
鉄      1.0mg
亜鉛     0.3mg
銅      0.03mg
マンガン   0.03mg
食塩相当量  2.1g

その他、ビタミン、脂肪酸、コレステロールなどが含まれています。

ここで気になるのは、やはり塩分と糖分です。塩分は動物にとって欠かせないものなので、摂取することに問題はありませんが、注意したいのは、塩分の量が多いということです。

糖分は、栄養成分表だけではわかりづらいですが、商品に記載されている「原材料名」に注目してもらうとわかりやすいと思います。

多くの商品で「砂糖」と記載されていたり、調味料の中に砂糖が含まれていたりします。猫は甘味を感じる味蕾細胞がなく、糖の消化や代謝が苦手です。

【出典】日本食品標準成分表2020年版
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=10_10381_7

【関連サイト】
「異物誤飲に注意」
https://www.anicom-sompo.co.jp/doubutsu_pedia/node/1340

塩分過多になる可能性

自然界において、塩分は主に肉から摂取しますが、肉には私たちが感じるほどの塩気はありません。しかし、ちくわなどの人間用の加工食品は味付けをしなくてもおいしいと感じる程度の味ががすでに付けられているので、人間用のものは猫には塩分過多になるといえます。

健康体であれば塩分を一時的に過剰摂取したからといって大きな問題ではありません。体内に蓄えられる量は決まっていて、不要な分は尿によって体の外に排出されます。とはいえ、過剰摂取が続くと、尿毒症を引き起こす可能性があります。腎臓疾患のある猫の場合は疾患を悪化させるなどの影響が考えられます。

【関連サイト】
尿毒症 <猫> | みんなのどうぶつ病気大百科
腎不全 <猫> | みんなのどうぶつ病気大百科
猫の食事(4) <注意が必要な食材> | みんなのどうぶつ病気大百科

アレルギーの心配も!?

ちくわは白身魚で作られていますが、魚の種類はさまざまです。魚以外にも、でん粉・大豆たんぱく・卵白などアレルギー源となりやすい食材が含まれていたり、添加物によってアレルギーを引き起こしてしまう可能性もあります。

アレルギーの症状としては、かゆみ、発赤、脱毛などがあげられます。食物アレルギーは、食べてすぐに発症する場合と少量でも食べ続けることで発症するものがあります。後者の場合「ちくわを食べてアレルギーになった」と言い切ることは難しいかもしれませんが、動物病院を受診する際には「いつごろ、どの程度食べたか」といった情報をきちんと伝えるようにしましょう。

もし、猫がちくわを食べてしまったら…

もし、猫がちくわを食べてしまっても少量であれば命に関わるようなことにはなりません。ですが、塩分濃度の高い食品であることから飲水量や排尿の回数が増えたり、肉食の猫にとって消化しづらい食材が使われていることなどから、下痢や嘔吐をすることも考えられます。

明らかに元気がない場合や食欲がない場合、慢性的な腎臓疾患がある猫の場合はすぐに動物病院へ連れて行くようにしましょう。

魚の加工品でほかに注意したいものは?

ちくわの他にも魚を使ったすり身の加工食品は同じように注意する必要があります。それぞれ原材料を見てみましょう。

かまぼこ

かまぼこの原材料名の一例です。ちくわと同じような原材料名が並んでいるのがわかると思います。ピンクのかまぼこには、着色料が使われています。

魚肉、デンプン、砂糖、食塩、大豆たんぱく、発酵調味液、なたね油、かつお魚醤/加工デンプン、調味料、ソルビット、ミョウバン、コチニール色素など

はんぺん

はんぺんの原材料名の一例です。「やまいも」が入っているので注意が必要です。

魚肉、卵白、デンプン、砂糖、食塩、やまいも、発酵調味料/加工デンプン、調味料(無機塩等)、増粘多糖類、ポリグルタミン酸(一部に卵・乳製品・小麦・やまいもを含む)など

カニカマ

カニカマの原材料名の一例です。カルシウムの量が多いので注意が必要。

魚肉、でん粉、砂糖、大豆たんぱく、植物油、乾燥卵白、食塩/加工でん粉、調味料(アミノ酸等)、炭酸カルシウム、着色料、貝殻焼成カルシウム、ポリグルタミン酸(一部に卵・小麦・えび、かに、大豆を含む)など

魚肉ソーセージ

魚肉ソーセージの原材料名の一例です。オニオンエキスや香辛料が気になります。

魚肉、植物油脂、砂糖、結着材料、食塩、オニオンエキス、香辛料、酵母エキス/加工でん粉、炭酸カルシウム、調味料、コチニール色素、香辛料抽出物など

つみれ

いわしつみれは種類が多く、シンプルなものの原材料名には、以下の記載があります。

いわし、植物油脂、食塩/加工でん粉、酸化防止剤(ビタミンC、ビタミンE)

中には、ネギ類やごぼうといった野菜やパン粉、しょうが、砂糖、着色料にカカオが使われているものもあります。

さつま揚げ

さつま揚げもつみれと同じように、商品によって原材料が異なり野菜などが入っているものもあります。比較的シンプルなものの原材料名には、一例ではありますが以下の記載があります。

魚肉、デンプン、ぶどう糖、砂糖、大豆たんぱく、植物油脂、発酵調味料、食塩、魚醤、香辛料/調味料(アミノ酸等)、加工デンプン、ソルビットなど

まとめ

ちくわは香りもよく、欲しがる猫も多いと思いますが、猫にとって良くない成分も入っています。「少しなら…」とあげてしまうと、それがくせになってちくわを開けるたびにほしがってしまうということになりかねないので注意しましょう。

どうしても欲しがって可哀想ということでしたら、猫用の“ちょっといいおやつ”を用意してあげるとよいでしょう。

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監修獣医師

長根あかり

長根あかり

大学で動物行動学やアニマルセラピーを学ぶ。保護犬を家族に迎えたこと、野良猫の保護をした経験から、「保護犬・猫について」や「正しい飼い方」の情報発信の必要性を感じ、大学卒業後はペットメディアで勤務。その後はフリーライターとして執筆活動しながら保護シェルターで働き現状を知る。現在は、動物ライターとしての執筆活動のほか、ドッグトレーナーとして飼い主さんとワンちゃんの暮らしが良くなるように、アドバイスやトレーニングを行っている。