猫に手作りごはんを与えようと思っても、栄養のバランスや与えてはいけないものなど、意外とわからないことがたくさんあるのではないでしょうか。ここでは猫の食性や必要な栄養素、手作りごはんのメリットとデメリットについて解説します。
猫に必要な栄養素は?

動物が生きていくためには、食べ物から栄養を取り入れなければなりません。動物にとって必要な栄養素は、炭水化物、脂質、タンパク質、ミネラル、ビタミンです。
ただ、動物種によって必要な栄養素の割合が異なります。
猫に必要な三大栄養素の割合は人間や犬とは異なる
たとえば、上記の栄養素のうち、炭水化物、脂質、タンパク質は三大栄養素と呼ばれていますが、猫にとって必要な割合は、人間や犬とは異なります。
人間や犬は「雑食」または「肉食に近い雑食」ですが、猫は「完全肉食性」の動物です。そのため消化吸収の仕方が異なるので、猫には猫に合った栄養バランスの食事を与える必要があります。
犬猫の平均的な食事に含まれる3大栄養素は、犬ではタンパク質18.0%、脂質5.5%、炭水化物76.5%に対し、猫はタンパク質26.0%、脂質9.0%、炭水化物65.0%です(※)。
(※飼い主のためのペットフード・ガイドライン〜犬・猫の健康を守るために〜平成30年環境省)
タンパク質は、20種類のアミノ酸から構成されています。犬はこのうち10種類が、食事から摂取しなければならない『必須アミノ酸』です。猫はこの10種に「タウリン」を加えた11種類が必須アミノ酸となります。猫はこのタウリンの必要量を、十分に体内で作り出すことができません。そのためキャットフードには必ずタウリンが入っています。手作り食を与える場合にはタウリンが多く含まれる食材を使用したり、サプリメントなどで補ったりする必要があります。
アミノ酸 | 犬 | 猫 | 人 |
グリシン | × | × | × |
アルギニン | 〇 | 〇 | × |
ヒスチジン | 〇 | 〇 | 〇 |
ロイシン | 〇 | 〇 | 〇 |
イソロイシン | 〇 | 〇 | 〇 |
リジン | 〇 | 〇 | 〇 |
メチオニン | 〇 | 〇 | 〇 |
フェニルアラニン | 〇 | 〇 | 〇 |
トレオニン | 〇 | 〇 | 〇 |
トリプトファン | 〇 | 〇 | 〇 |
バリン | 〇 | 〇 | 〇 |
タウリン | × | 〇 | × |
タウリンが欠乏するとどうなる?
タウリンが不足すると、目や心臓の病気を引き起こす他、免疫力の低下、繁殖能力の低下、子猫の発育不全など、さまざまな影響が出る可能性があります。
猫に手作りごはんをあげるメリット、デメリット

猫に必要な栄養素がわかったら、手作りごはんのメリットとデメリットを確認し、生活スタイルや愛猫にあった食事方法を考えてみましょう。
メリット
- 好みや体調に合わせて作ることができる
- 水分を摂取しやすい
- 食材やサプリなど細かく選ぶことができる
- 手作りごはんを食べてくれることが、喜びやさらなる愛情につながる
特に水分摂取がしやすいというのは、手作りごはんの大きなメリットといえます。
乾燥地帯に生息していたリビアヤマネコを祖にもつ猫は、本来捕まえた獲物をすぐに食べることで必要な水分を得ています。そのため、水分補給のために「水を飲む」という行動が他の動物に比べて少ないのです。自分で狩りをしない飼い猫は、水分の摂取がうまくできていないと、尿の濃度が濃くなって結石ができてしまうなどの病気になりやすいです。
デメリット
- 栄養管理が難しく偏りやすい
- 時間も手間もかかる
- 食材によっては中毒を起こしてしまうものもある
- 栄養素の補助的に必要となるサプリメントなどのお金がかかる
- 入院時や災害時など食事が変わることで食べなかったりストレスになったりする
いちばんのデメリットは、やはり栄養管理が難しいということです。
愛猫のために、と手間暇かけて作っていた食事も、栄養バランスが取れていなかったり、猫に与えてはいけない食材が入っていたりしたら病気になってしまうこともあります。
猫がおいしいと感じるごはんのポイント

せっかく手作りごはんを作るのなら、「おいしい」と思ってもらえるものを作りたいですよね。猫も人間と同じように味覚はありますが、感じ方は同じではありません。
そもそも味を感じるための受容体である「味蕾(みらい)」の数は、人間が約6,000個、犬が約1,700個であるのに対し、猫は500個ほどしかありません。
そして猫は5つの味のうち、「甘味」を感じることができません。「塩味」は感じられますが鈍く、「酸味」に対しては強く拒絶します。「苦味」も敏感に感じ取り基本的には回避します。猫がおいしいと感じるのは、「旨味」であるタンパク質と脂肪です。なおかつ新鮮で、温かく匂いのあるものだと嗜好性が強いです。
温度はだいたい30~40℃前後で、猫が野生で狩るネズミや小鳥といった小動物の体温が目安になっています。
もしも作り置きなどをして冷蔵庫で保存する場合には、与える前に少し温めてからあげるといいでしょう。
猫に手作りごはんを与えるときの注意点

ドライフードから手作りごはんに切り替えるときは、いきなり変えるのではなくトッピング程度からスタートして、少しずつ量を変えていくようにしましょう。
1食分をいきなり手作りごはんに変えてしまうと、うまく消化できず下痢や嘔吐をしてしまうことがあります。
また、猫によっては1度に食べ切らずちょこちょこと食べる子もいます。
ドライフードであれば、半日出しっぱなしにしていてもすぐに悪くなるということはありませんが、手作りごはんはそうはいきません。
猫の普段の食事の様子や体調などを見て1回の量を決め、もし残した場合には冷蔵庫に入れるか処分するようにしましょう。
猫に与えてはいけない食べ物は絶対にあげない
人間の食材の中には、猫にとっては中毒症状を引き起こし、摂取量によっては命を落としてしまうこともあるので、食材選びは特に注意が必要です。
たとえば、タマネギなどのネギ類、ニラやニンニクなどは「アリルプロビルジスルファイド」という赤血球を破壊する成分が含まれているので、重度の貧血、嘔吐、下痢、呼吸困難などの症状を引き起こす恐れがあります。
生の魚貝類や甲殻類は「チアミナーゼ」というビタミンB1を分解する酵素を持っているので、与えることでビタミンB1欠乏症になり、足に麻痺が出ることがあります。重症になると、歩けなくなってしまうこともあります。
その他の食材についてはこちらの記事を参照してください。
【関連記事】
これって猫が食べても大丈夫? 人間の食べ物で食べてはいけないものと大丈夫なものを解説!
猫のごはんによく使われる「ささみ」は猫の身体にとってよいもの?
「ささみ」は高タンパク低脂質、低糖質の食材です。肉食性の猫にとって一見とても良い食材にも思えますが、同じタンパク質だけをあげ続けると、アレルギーになりやすかったり栄養が偏ったりします。
特に「ささみ」にはリンが多く含まれていますが、リンの過剰摂取は腎不全を引き起こしてしまうことがあります。また生体内ではリンとカルシウムが適切なバランスで存在する必要があるのですが、体内のカルシウム量が減ってこのバランスが悪くなると、身体は骨を溶かしてカルシウムを補充しようとするため、骨が弱くなってしまうこともあります。
よく食べる同じ食材を使い続けてもいい?
1つの食材ばかりではアレルギーを発症してしまったり、栄養バランスが偏ってしまって、思わぬ病気を引き起こしてしまうこともあります。
旬の食材を使ったり、複数組み合わせたり、ローテーションするなど工夫しましょう。
食物アレルギーがある場合
食べ物によるアレルギーがある場合には、当然のことながら、アレルギー源となる食材は使わないようにします。
まずは、どの食材が身体に合わないのかを知る必要があるので、獣医師に相談をして病院でアレルギー検査をしてもらうといいでしょう。
まとめ

手作りごはんは、栄養管理が難しかったり時間がかかるといったデメリットもありますが、逆に考えると、手間暇かけて作ることでより愛情が湧いたり、愛を伝えることができたり、コミュニケーションにもつながります。
まずは、かかりつけの獣医師に相談したり、今の健康状態を把握するために健康診断を受けてみるのもよいでしょう。せっかく作るのであれば、愛猫の身体に合った食事を作るようにしたいものです。
病気になる前に…
病気はいつわが子の身にふりかかるかわかりません。万が一、病気になってしまっても、納得のいく治療をしてあげるために、ペット保険への加入を検討してみるのもよいかもしれません。
