子猫

猫は、便秘になりやすい動物ですが、便秘をそのままにしておくと「巨大結腸症」という大変な病気になるかもしれません。便秘を繰り返すうちに、腸に便がたくさん溜まり、腸が広がって動きが悪くなり、さらに便を溜め込む……と悪循環を起こします。巨大結腸症は、根治が難しく、長く付き合う必要がある病気です。放置すると命に関わることもあるので、原因の早期発見や予防が大切です。

巨大結腸症とは?死に至ることはある?

巨大結腸症とは、結腸が持続的に広がり、動きが悪くなることで、重度の便秘を示す状態のことです。結腸がずっと広がっていると、結腸の壁の神経や筋肉が退化します。

それにより結腸の機能が低下し、どんどん便を溜めこみます。長時間腸に留まった便は水分が吸収され、大きく硬くなり、さらに排便が困難になります。最終的には、お腹の中が便だらけになってしまいます。便の中の菌の代謝物を吸収することで脱水や食欲不振が生じ、死に至ることがある病気です。

どんな症状?

トイレと猫
最も代表的な症状は「便が出ない」ことです。排便姿勢をとって力むけれど便が出ない「しぶり」や何度もトイレに行く仕草が見られます。便が重度に溜め込まれると、食欲や元気がなくなったり、脱水や衰弱を起こしたり、力みすぎることで腹圧が上がり嘔吐することもあります。

猫の巨大結腸症の原因は?

最も多い原因は便秘です。便秘が続いて、徐々に進行して発症するケースが多いです。他にも結腸の神経に異常があって、腸が動かなくなって発症することがあります。

便秘が原因であることが多い

前述したとおり、便秘が原因となりやすい病気です。便秘は、繊維質が少ない食事によって起こることがあります。また、腫瘍や骨盤骨折で骨盤が狭くなったり、腰の神経の異常で、腸の運動性が低下したり、環境の変化やストレス、異物の採取、内臓疾患などで便秘は起こります。

このようにして、起きた便秘がずっと続くことで、結腸が広がりっぱなしになり、その結果、結腸の神経細胞が傷つき、巨大結腸症になります。

結腸の神経に異常がある

結腸の神経が異常を起こすと、腸が動かなくなり、便を出せなくなることで巨大結腸症になります。通常、便秘を起こす原因を探しても見つからなかった時に、結腸の神経の異常を疑います。

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猫の巨大結腸症の治療法は?

診察される猫
内臓疾患や骨盤の狭窄など便秘を引き起こす原因がはっきりした場合は、原因疾患の治療を行います。そして、巨大結腸症の治療には溜まっている便を外に出し、便秘を改善していく内科的な治療と広がった結腸を小さくする外科的な治療法があります。

内科的治療

結腸に溜まっている便を取り除きます。肛門から温水やグリセリンを注入して、便を柔らかくして、排泄しやすいようにします。手袋をつけ、指で肛門から便をかき出したり、浣腸剤を使って便を出したりします。
猫が嫌がるときには鎮静処置が必要になることがあります。脱水を起こしているときは点滴をし、状態を整えます。再発を防ぐために、食事を繊維質の多い療法食に切り替えます。便を柔らかくする「ラクツロース」などの便軟化剤を内服することもあります。

外科的治療

内科的治療を行なっても、再発する場合は、外科的治療を検討します。開腹し、拡張した結腸の一部を切除して縫い詰める手術です。手術により、とてもいい結果が得られることもありますが、腹膜炎や腸管狭窄(ちょうかんきょうさく)などの合併症が起こることもあるため、外科的治療を選択するかどうかは、再発の頻度や猫の状態を考慮する必要があります。

巨大結腸症の治療費は?

アニコム損保のデータによると、通院一回あたりの平均治療費は4,320 円です。初回の診察では、全身状態を把握し、便秘の原因を突き止めるために、血液検査やレントゲン検査を行うので、初期費用は2~3万円程度かかります。その後の内科的治療の通院では3,000円程度かかるでしょう。
通院頻度は便秘の重症度によって変わりますが、完治は難しいので、長期の定期的な通院が必要です。

猫の巨大結腸症の予防法はある?

ごはんを食べる2頭の猫
便秘になったら早めに解消させて、長引かせないことが大切です。動物病院に相談し、便秘の原因を突き止め、食事や環境を見直しましょう。トイレがストレスにならないように、猫のトイレは静かな場所に充分な広さをとって置き、掃除をきちんとして清潔に保つようにしましょう。多頭飼育の場合は、頭数+1つ、トイレを用意するのが良いでしょう。
交通事故や落下による骨盤骨折などの事故を避けるために、安全な環境を整えましょう。

便秘にならない食事を心がける

日ごろから便秘にならないように、バランスのよい食事で肥満にならないようにしましょう。骨片やカルシウム剤、異物は便の中に塊を作り、便秘になることがあるので、食べないように気をつけましょう。動物病院で相談し、繊維質が多いフードにするのも良いでしょう。

まとめ

いったん巨大結腸になってしまうと、拡張した結腸は元に戻らないことが多く、長期のコントロールが必要になります。便秘が見られた時には、早めに解消してあげることで、巨大結腸にならないようにすることが大切です。

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監修獣医師

平野 翔子

平野 翔子

2012年に東京農工大学を卒業後、24時間体制の病院に勤務し、予防診療から救急疾患まで様々な患者の診療に従事。その傍ら、皮膚科分野で専門病院での研修や学会発表を行い、日本獣医皮膚科学会認定医を取得。皮膚科は長く治療することも多く、どうぶつたちの一生に関わり、幸せにするための様々な提案や相談ができる獣医療を目指す。パワフル大型犬とまんまる顔の猫が大好き。