眼の充血が気になりはじめた、涙や目やにが多くなってきた、しきりに目をこするなどの症状が見られたら、結膜炎かも。今回は、猫の結膜炎について、原因や対処法について紹介します。
結膜炎ってどんな病気?
結膜とは、瞼の内側、瞬膜、白目の部分を覆う粘膜のこと です。そこにさまざまな原因によって炎症が起きることを結膜炎と言います。結膜に充血や浮腫が生じるので、外見で異常がわかる病気です。
アニコムの家庭どうぶつ白書2018によると、眼の疾患の内訳では、結膜炎が約50%を占めています。
【関連リンク】
アニコムの家庭どうぶつ白書2018 p48
猫が結膜炎になる原因は?
結膜炎は、さまざまな原因によって引き起こされます。代表的なものをいくつか見ていきましょう。
ウイルス感染
鼻水やくしゃみなど猫の上部呼吸器になんらかの症状を生じさせるウイルスとして、ヘルペスウイルス、カシリウイルス、レオウイルスなどがあります。これらのウイルスに感染することで、結膜炎が生じます。なかでも猫ヘルペスウイルス(FHV-1)による感染は、より重度な結膜炎を引き起こすとともに、結膜炎以外の症状(元気消失や発熱、体重減少、くしゃみや鼻水といった呼吸器症状など)を併発することもあります。
異物が目に入る
人と同じで塵(ちり)や埃(ほこり)、被毛などの異物が目に入って目を刺激することで結膜炎が生じます。また瞼などに腫瘤(しゅりゅう=できもののこと)ができることも、結膜炎の原因となります。
その他
その他、クラミジア(クラミドフィラ/Chlamydophila felis)やマイコプラズマ、サルモネラなど、さまざまな微生物や細菌などの病原体の感染が原因となる場合もあります。アレルギー疾患や、猫ではまれですが「乾性角結膜炎」(いわゆるドライアイ)を持つことも原因になり得ます。
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猫の結膜炎ってどんな症状?
では、どのような症状が見られたら、結膜炎が疑われるのでしょうか。代表的な症状は以下の3つです。
結膜の充血
結膜の充血が起こると、白目の部分や上下の瞼の内側の血管が浮き出て赤くなります。白目の部分の充血は、眼のふちの赤みが強く、黒目に近づくにつれて薄れていくという特徴があります。
涙や目やにが出る
涙の量が増える、目やにが出るなどの症状も結膜炎では起こります。ひどい場合には、目やにが上下の瞼にこびりつき、眼が開かないようになってしまいます。細菌感染を伴う場合は、黄緑色の目やにが出ることがあります。
目の周りがむくむ
結膜炎の代表的な症状の1つに「結膜浮腫」があります。結膜に水分が溜ることでむくみが生じ、瞼の内側(通常は瞼をめくらないと見えない部分)がブヨブヨのゼリーのように見えてきます。浮腫がひどくなると、目が全体的に腫れているように見えたり、眼が開けにくくなったりします。
猫が結膜炎になったときの対処法は?
眼の異常に気が付いたら、早めに病院に連れていきましょう。ひどくなる前に治療を開始することが重要です。また、眼にかゆみがある場合は、こすることで眼の表面に傷ができてしまい、状態をさらに悪化させてしまいます。
眼の異常に気が付いたとき、エリザベスカラーがあれば付けてあげて、前足などでこすらない状況を作ってあげるとよいでしょう。手元にエリザベスカラーがない場合は、眼をこすりそうになったら、できるだけ止めさせるようにします。いずれにしても、異常に気付いたら、早めに動物病院へ連れて行きましょう。
治療法は?
結膜炎の治療では、結膜炎の原因に応じた方法を選択します。
必要に応じて数種類の目薬を使います。抗炎症剤や抗生物質が入った目薬、ウイルス感染が疑われる場合にはウイルスを抑える目薬(インターフェロン)を使用することもあります。治療には目薬だけでなく、「眼軟膏」といって抗生物質が入った軟膏タイプのお薬を使うこともあります。また、ヘルペスウイルス感染のように結膜炎以外の症状も併発している場合には、それぞれの症状に応じた治療(例えば栄養状態を改善する、脱水いている場合は点滴を行うなど)もあわせて行います。
また、目やになどで目の周りが汚れている場合には、適度に目の周りを拭いてあげることで清潔に保つことが必要です。ただし、こすったりむりやり目やにをはがしたりすると、逆に目を傷つけてしまうこともあります。正しい方法は獣医師に確認しましょう。
治療費は?
眼の状態によって、眼に傷がないか調べたり、目やにの検査を行うことがあります。また、原因によって処方される目薬の種類が異なり、いくつか必要になる場合もあります。数種類の目薬を処方されれば、その分、費用もかかります。検査や目薬に必要な費用はかかりつけの動物病院や治療期間によって異なりますが、アニコムの調べでは猫の結膜炎の治療費平均は3,340円程度となっています。
【関連リンク】
結膜炎 <猫>|みんなのどうぶつ病気大百科
猫の結膜炎は人間や他の猫にうつる?
人間にはうつらない場合が多いが、猫同士は要注意
原因がウイルス感染の場合では、基本的に人にうつることはありません。一方、猫同士ではすぐに感染してしまうので、ウイルスが原因と疑われる場合には、一時的に隔離するなどの対処が必要になります。病院で診てもらい、獣医さんの指示に従いましょう。
また、結膜炎の原因がクラミジア感染によるものの場合、人にうつる可能性が、少なからずあります。猫に目薬を差した後や眼を拭いてあげた後には、必ず手を洗うなど注意が必要です。
猫の結膜炎は自然治癒する?
軽度の結膜炎であれば、自然治癒することもあるでしょう。しかし、眼の様子がいつもと違うけど少し様子を見てみよう、と放っておくと、気が付いたら悪化してしまった…といったことになりかねません。異変に気が付いた際はすぐに病院で診てもらい、早めに治療を始めましょう。
猫の結膜炎にホウ酸水がよいってほんと?
眼の異常が出てきた際に、ホウ酸水などの洗浄液で眼を洗い、結膜炎の原因となる異物を除去しようと考える方もいるかもしれません。しかし、その洗浄行為が逆に眼を傷つけてしまう場合もあります。まずは、動物病院を受診して、眼の状態を診てもらうようにしてください。
まとめ
ちょっとした眼の充血、と侮れない結膜炎。目やにが増えたりかゆみがひどくなったり結膜炎が重症化すれば、生活の質も下がってしまいます。結膜炎は、さまざまな原因で起こるので、市販薬や洗浄液などで様子をみるのではなく、早めに病院を受診してください。
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