コクシジウム症という病気をご存じでしょうか? コクシジウム症は原虫とよばれる寄生虫が腸に寄生する感染症で、主に子猫で症状が出やすい疾患です。今回は猫がコクシジウム症に感染した場合、どういった症状が起こるのか、人にも感染するのかなど、気をつけたい点についてご紹介します。

猫の「コクシジウム症」とは

猫のコクシジウム症は、コクシジウム類シストイソスポーラ属のCystoisospora felisとCystoisospora rivoltaと呼ばれる原虫による感染症です。これらは種特異性があり、猫同士で感染するため、人や犬に感染することはありません。なお、厳密にはコクシジウム類の中には、猫から人に感染する人畜共通感染症を起こすトキソプラズマ属が含まれますが、コクシジウム症とは区別され「トキソプラズマ症」と呼ばれています。コクシジウム症は、子猫を集団飼育しているペットショップや繁殖施設での感染率が高いとされています。

どうやって感染するの?

コクシジウム症は、感染した猫の糞に含まれる「オーシスト」と呼ばれる卵型の原虫が体内に入ることで感染します。たとえば、感染していない猫がこのオーシストを含む糞を口にしてしまったり、オーシストに汚染された食器やトイレを舐めたりすると、感染してしまいます。
オーシストは肉眼では見えないくらい小さく、顕微鏡でなければ確認できません。さらに、オーシストは感染猫の身体から排泄されてから1〜2日で感染力を持つため、排泄した糞は速やかに処理する必要があります。

オーシストを猫以外の動物が摂取しても感染しませんが、身体の中に留まることがあり、猫がその動物を補食する(ネズミなど)ことで猫に感染するケースもあります。

猫の身体のどこに感染するの?

猫がコクシジウム症のオーシストを摂取した後は、原虫は主に猫の腸の細胞に進入し、細胞の中で分裂を繰り返し成長していきます。摂取してから約10日前後で新たなオーシストが糞の中に排泄されます。この間、猫の腸は細胞が破壊され、未熟な子猫では腸に大きな障害が加わることがあります。

どんな症状?成猫と幼猫とでは症状が違う?

一般的に猫のコクシジウム症は病原性が低く、成猫では感染しても症状が現れないことが多いです。しかし、子猫が感染すると、症状が強く出る場合があります。特に、離乳したばかりの腸内バランスが未発達な子猫では注意が必要です。下痢や嘔吐、粘液状の便、血便、発熱が主な症状です。こうした症状が現れるのは通常感染してから約7〜9日ですが、離乳直後の幼齢猫では3〜4日のことがあり、下痢もより重篤になる可能性があります。下痢の治りが悪いことで、食欲不振や脱水症状、嘔吐といったほかの症状が引き起こされることもあり、子猫にとっては致命的になる危険性があります。子猫の下痢は放っておかず、早めに動物病院を受診しましょう。

猫の「コクシジウム症」の治療法は?

猫がコクシジウム症に感染している場合、通常飲み薬で治療を行います。以前は、「サルファ剤」という種類の抗菌剤を1週間程度飲む治療法が一般的でしたが、「サルファ剤」は特定の発育段階におけるコクシジウムにしか効果を発揮せず、完全に排除されるまで長期間を要することがありました。最近では、「トルトラズリル」と呼ばれる抗コクシジウム薬が、単回または数回の投与で高い有効性が報告されています。ただしこの薬は、犬のコクシジウム症には認可がおりていますが、猫ではまだ効能外の薬のため、獣医師と相談して治療を行いましょう。

コクシジウムが駆虫されたかどうかは、猫の便検査を行うことで確認できます。1度の検査では完全に駆虫されたか確実ではないため、飲み薬での治療後、定期的に数回検査を行って確認していきます。このほか下痢や食欲不振・脱水などの症状があり体力を消耗している場合は、飲み薬に加えて水分や電解質補給などの補液、消化の良い栄養給餌、整腸剤などの投与が必要になることもあります。

猫の「コクシジウム症」の治療費は?

アニコム損保の調査によると、猫のコクシジウム症で動物病院を受診した猫の年間平均診療日数は2回程度で、通院1回あたりの診療費は2,870円程度でした。診療費には、主に糞便検査費用、飲み薬代が含まれますが、下痢などの症状の程度によっては、追加で補液などの治療費もかかることを考慮しておきましょう。

【関連サイト】
コクシジウム症 <猫>|みんなの病気大百科

猫の「コクシジウム症」の予防法はある?

コクシジウム症は子猫で注意が必要な疾患です。子猫を初めて家に迎える場合、すでにコクシジウム症に感染している可能性があるので、必ず動物病院で糞便検査を行ってもらいましょう。1回では検出されない場合がありますので、1週間〜10日ほど間隔をあけて最低2回は糞便検査を行うことをおすすめします。気になる症状がなくとも、実は感染していて、検査をすると寄生虫が見つかる場合もあります。早期に発見し治療を行うことで、発症を防ぐことができます。また、同居の猫がいる場合は、新しい猫に感染がないことを確認できるまで、なるべく接触させないよう心がけましょう。
感染が確認された場合、感染している猫の糞はすぐに処理することを徹底し、トイレなども清潔に保つようにしましょう。コクシジウム症のオーシストは、一般的な消毒薬では死滅しません。オーシストの消毒には熱湯に浸すのが有効とされます。60℃のお湯なら30分、80℃なら1分ほどで死滅するとされています。再感染や他の猫への感染を防ぐためにも、感染した猫が使用する食器や毛布など熱湯に浸せるものは、この方法で消毒を行いましょう。また、多頭飼育の場合は感染の蔓延を防ぐため、感染した猫は、糞中のオーシストがなくなるまでは隔離しておきましょう。

まとめ

コクシジウム症は、糞便検査で感染が確認でき、治療を行えば治せる疾患です。しかし子猫の場合、感染に気付かず治療を行わなければ、下痢などの症状が悪化し体力を消耗して、最悪の場合は命に関わる危険性があります。新たに子猫を招き入れた時は、便の状態が問題なくとも念のため糞便検査を行うようにしましょう。

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監修獣医師

溝口やよい

溝口やよい

日本獣医生命科学大学を卒業。2007年獣医師免許取得。埼玉県と東京都内の動物病院に勤務しながら大学で腫瘍の勉強をし、日本獣医がん学会腫瘍認定医2種取得。2016年より埼玉のワラビー動物病院に勤務。地域のホームドクターとして一次診療全般に従事。「ねこ医学会」に所属し、猫に優しく、より詳しい知識を育成する認定プログラム「CATvocate」を修了。毎年学会に参加し、猫が幸せに暮らせる勉強を続けている。2018年、長年連れ添った愛猫が闘病の末、天国へ旅立ち、現在猫ロス中。新たな出会いを待っている。