「子宮蓄膿症」は、子宮の内部で菌が増殖し、膿がたまる病気です。雌の猫が、いつもより水をたくさん飲み、おしっこをたくさんし、陰部から膿が出たり、お腹が膨らんでいたりするようであれば、子宮蓄膿症の疑いがあります。膿が溜まりすぎて子宮が破裂すると、短時間で命の危険に晒されることもあるため、緊急性が高い病気です。いざというときに適切な対処ができるように、子宮蓄膿症について解説します。

犬と比べて猫はなりにくい

子宮蓄膿症は犬では一般的な病気ですが、猫では犬ほど多く見られません。これは、子宮蓄膿症の発症には「黄体ホルモン」というホルモンの分泌が関わっていて、犬と猫では発情や排卵が起きるタイミングが異なるためです。

猫は「交尾排卵動物」です。交尾排卵動物では、犬のように定期的に発情期が来て排卵するのではなく、交尾後に排卵し、黄体期が見られます。定期的に排卵する犬よりも、排卵回数が少ないため、黄体ホルモンが出る期間が短いのです。そのため、黄体ホルモンが関わる子宮蓄膿症の発症は犬よりも少ないです。

最近では、交尾後でなくても自然に排卵する猫がいると言われていて、その排卵後の黄体期に子宮蓄膿症が発症していると考えられています。

「子宮蓄膿症」の原因は?

黄体期になると、「黄体ホルモン」の影響によって、精子を受け入れやすくして妊娠に備えるべく、子宮内膜が分厚くなり、子宮の頚部が緩み、免疫機能が低下します。そのため、外部から菌が進入しやすくなります。この菌が子宮蓄膿症の原因となります。

子宮内が細菌に感染

細菌の侵入を受けた子宮は、防御反応として内膜に炎症を起こすため、子宮内膜炎になります。子宮蓄膿症は、この子宮内膜炎が長引き、子宮内に膿が溜まってしまった状態です。大腸菌、ブドウ球菌、サルモネラ菌などの細菌が子宮内で増殖し、子宮蓄膿症を引き起こします。

どんな症状になる?

子宮蓄膿症は、子宮頸管が開いているか閉じているかで、大きく「開放型」と「閉鎖型」に分けられます。子宮蓄膿症になった猫は、病状が悪化するまではっきりとした症状はないことが多いです。水をたくさん飲み、尿の量が増えたり、陰部に血がついていたりするのを発見して、異変に気がつくケースが多いと言えます。 病状が進行するにつれ、陰部を気にして舐める、子宮に膿が溜まりお腹が膨らむ、熱っぽく元気がなくなる、嘔吐や下痢をするといった症状が現れます。

開放型

「開放型」は子宮頸管が開いている状態です。開いている子宮頸管を通じて外陰部から大量に膿が漏れ出します。膿が身体の外に出ていけるため、子宮が破裂するリスクは高くはありません。陰部が臭う、汚れているなどの異変に気づきやすいため、早め病院に連れて行くことができるでしょう。

閉鎖型

「閉鎖型」は、子宮頸管が閉じている状態なので、膿が外に漏れず、どんどん子宮内に溜まってしまいます。そのため開放型より深刻で、気づきにくいです。膿が溜まってくることでお腹が膨らみ、触ると痛がるなどの症状が現れます。膿が身体の外に出ていかないため、溜まった大量の膿で子宮が破れ、腹腔内に膿が漏れると、ショック症状や急性腎不全、多臓器不全、腹膜炎、敗血症などを起こし、短時間で死に至ることが多いです。異変に気が付きにくく、早く進行し重症化しやすい状態のため、危険性が高いです。

子宮蓄膿症にかかりやすい猫はいる?

猫の場合、子宮蓄膿症は、犬に比べて若くして発症することもあり、1歳程度の若い年齢でなることもあります。そのため、避妊手術をしていない全ての雌猫は子宮蓄膿症になる可能性があると思っておいたほうがよいかもしれません。5歳以上の比較的高齢の猫ではさらにリスクが高くなります。アニコム損保の調査によると、年齢別の罹患率は、8歳が一番高くなっています。
※かかりやすい年齢の詳細についてはこちら↓
子宮蓄膿症<猫>|みんなのどうぶつ病気大百科

治療法は?治療費は?

治療は、手術で卵巣と子宮を摘出する外科的治療が一般的です。

外科的治療

卵巣と、膿の溜まった子宮を摘出する外科手術を行います。子宮蓄膿症は、症状の進行がとても早く、早めに手術をすることで助かる確率が高くなります。状態によっては、入院で点滴治療を行い、状態が安定してから手術を行う場合もあります。細菌感染を起こしている状態で麻酔・手術を行うので、一般的な避妊手術よりリスクは高くなります。術後も数日の入院が必要になるでしょう。

内科的治療

高齢であったり、他の疾患があったりして麻酔がかけられない場合は、薬剤を注射して子宮の収縮作用を高め、膿を排泄させたり、抗菌薬の投与などの内科的治療を行う場合もあります。しかし、内科的治療は治癒率が100%ではなく、再発の可能性もあるので、根治のためにはできるだけ手術を選択したほうがよいでしょう。

治療費は?

アニコム損保の調査では、子宮蓄膿症の年間平均診療日数は1回程度で、年間平均診療費は3,240円程度でした。これらは初回の状態把握のための血液検査や腹部超音波検査などが該当すると考えられます。手術や入院費は、猫の状態によりさまざまで、高額になる場合もあります。

手術後に注意することは?

子宮蓄膿症で行われる卵巣・子宮摘出術は一般的に行われる避妊手術と同じ方法ですが、危険性は高くなります。細菌がいる状態での手術になるので、手術中、術後も細菌感染が全身に広がっていないか、状態が悪化していないか注意する必要があります。手術後退院し、完全に回復すれば、完治する疾患です。

予防方法はある?

予防方法は、避妊手術をすることです。ホルモンが関連する病気のため、避妊手術以外には有効な予防法はありません。

避妊手術をすること

避妊手術をすると性ホルモンの分泌や発情をしなくなるため、子宮蓄膿症を予防できます。定期的に出産をすると子宮蓄膿症になる確率は低くなりますが、出産させる予定がなければ、1歳になる前に避妊手術をするのがよいでしょう。
避妊手術を行うことで、子宮蓄膿症だけでなく、乳腺腫瘍も予防できます。

まとめ

子宮蓄膿症は早期発見、早期治療によって完治が可能です。避妊をしていない雌猫で、水をたくさん飲む、元気がなく、食欲がない、お腹が膨らんでいる、陰部を気にするなどの様子が見られたら、例え若い猫であっても早めに動物病院に相談しましょう。

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監修獣医師

平野 翔子

平野 翔子

2012年に東京農工大学を卒業後、24時間体制の病院に勤務し、予防診療から救急疾患まで様々な患者の診療に従事。その傍ら、皮膚科分野で専門病院での研修や学会発表を行い、日本獣医皮膚科学会認定医を取得。皮膚科は長く治療することも多く、どうぶつたちの一生に関わり、幸せにするための様々な提案や相談ができる獣医療を目指す。パワフル大型犬とまんまる顔の猫が大好き。