1.腸内フローラとは?

(1)ウンチはサラダ

ウンチの科学

(2)腸内フローラは競合的排他によって免疫に寄与している

①腸内フローラは、消化管内で大量に増殖し、ほかの病原細菌が、生着して増殖する領域を、物理的に占有することで競合排他し、宿主の免疫維持に資している。

②抗生物質・ストレス等で腸内フローラバランスが崩れると特定病原性細菌である「歯周病関連菌」や、その他の病原細菌の消化管内感染を許容してしまう。

③腸内フローラを多様に保つためには、多様な食事を与える必要がある。少しずつ、様子を見ながら、食のバリエーションを増やすことが重要。

④消化管内免疫は、ほかの免疫気機構同様に、自己と非自己を常に見極め、身体全体の恒常性を保ち、健康を維持している。
常に、一定程度、新たな侵入者を見分けるような事態が日々あることで、免疫気機構が動的に機能し続けられると考えている。

(3)腸内フローラの多様性を高めると健康を維持できる

■条件:
・2018年12月以降にどうぶつ健活を実施した生体のうち
 契約始期日が2021年3月以降~2023年12月の生体。
  ※誤飲骨折を罹患した生体は除く。
  ※期間保険料が0円の契約(契約取り消し等)は除く。
  ※多様性:腸内細菌叢の多様性の指標である
   「Shannon Index」をもとに算出。

2.腸内フローラと歯周病の関係

(1)口腔から唾液を通じて消化管へ

口腔内で繁殖した歯周病関連金を含む口腔内最近は、唾液とともに飲み込まれて消化管を通過していく。

・口腔内
万病の元とはオレ達のこと、溢れんばかりの悪のパワー!
にもかかわらず、歯周ポケットという小さなお家!だからオレ達も口から溢れちゃう!

・胃
胃酸の強酸環境で、多くの菌は殺菌されていく。
しかし歯周病関連菌の一部は、バイオフィルムバリア~!で、強酸にも耐え得る。

・十二指腸
トリプシン、エラスターゼ、アミラーゼ、リパーゼ等といった消化酵素の働きで殺菌が進む。

・大腸
徐々に歯周病関連菌にとって過ごしやすい環境になる。
歯周病関連菌は、バイオフィルムを形成し、環境適応!

(2)腸内王国を制する歯周病関連菌

大腸に到達した歯周病関連菌は、元々の腸内フローラを乱しながら腸内を制覇していく。

①大腸に到着

②歯周病関連菌が暴れまわる

③だんだん飽きてくる。ふと見ると、うんちの外に美味しそうな腸壁が…

④ムチン質に穴をあける

⑤血管に辿り着く

⑥どんどん増殖していく

(3)ついには血液に乗り、全身を制する覇者になる

腸管壁から血管に侵入し、超高速メリーゴーランドすなわち猛スピードの血流に乗って全身を巡る。

①大腸の環境にも飽きてくる

②血管に穴をあけて侵入する (血流は超高速メリーゴーランド)

人間の血液は約30秒で身体中を一周!
(寝ている間ですら1分程度)
小型犬だと、何と10秒で一周!!

③あっという間に 全身に!

(4)血液中の細菌の状況 ~仕事は丁寧、証拠は残さない

(5)腸内の多様性が低い方が、腸内から歯周病関連菌が検出される

■条件:
・どうぶつ健活を2018年12月~2024年2月に実施した生体のうち、
 1年目が2021年3月~2022年12月保険始期の契約で、
 2年連続で腸活を実施し、2年目の始期日が2022年12月保険始期までの契約
 (2年分の腸活実施日がいずれも歯周病関連菌の検出期間中に該当する契約)
 ※しにあ契約を除く
■歯周病関連菌:
・アニコム損保の保険金請求データとどうぶつ健活の
 データを用いてアニコムグループで選定した歯周病罹患と
 関係があると考えられる細菌20種。
※腸内フローラから歯周病関連菌が検出された群は
 腸内で歯周病関連菌が増殖していることから
 消化管内感染症罹患と表現している。
※多様性:腸内細菌叢の多様性の指標である
 「Shannon Index」をもとに算出。

3.腸内フローラを多様にし、腸内免疫を維持する方法

(1)腸内免疫の低下を予防し免疫を維持するために

人間を含む全ての生命は、季節や天気などに合わせて異なる食材を摂り入れることで免疫を維持し、日々変化する環境に対応している。
一方で犬・猫は、毎日同じ食事を与えられている場合も。こうした食刺激の不足は、免疫の低下を招き、ひいては各疾患の罹患率を高めてしまうと考えている。

※アニコムグループの調査結果により、腸内細菌の多様性とさまざまな疾患の有病率には、年齢を問わず密接な関連があることが明らかになっています。また、免疫とは低下すると病気にかかるリスクが増す確率的な現象であると認識しています。腸内細菌の多様性を示すことは、免疫の一部を数値化・可視化するものと考えているため、以降は腸内細菌の多様性を「腸内免疫」として表現しています。

(2)食刺激と免疫

戦車(栄養)と燃料(カロリー)があっても…
日々訓練していない(多様な食刺激がない)と、体内に侵入してくる敵と戦えない

(3)フードの種類と腸内フローラの多様性

腸内細菌は食べ物に由来するため、フードの種類を増やすと腸内細菌のチームワーク力が強化されると考えている。

(4)歯周病関連菌対策も腸内免疫が大切

口腔ケアの習慣により、ある程度の歯周病関連菌はコントロールできると考えています。しかし、これらの細菌を完全に除去することは極めて困難であるとも認識しています。人間は、1日に1~2リットルとかなりの唾液を飲み込んでおり、犬や猫も同様であると考えられます。そのため、腸内に流れ込んだ歯周病関連菌が繁殖し、さまざまな疾患の原因となる可能性があります。

これを予防するためには、腸内免疫を維持し、
歯周病関連菌の消化管内での感染を防ぐことが重要です。

監修獣医師

犬百科編集部

犬百科編集部

獣医師を含む犬の飼い主歴10年以上の編集者が集い、犬の凄さや可愛らしさについて情報交換している。編集部員の面々は、犬との暮らしがより健やかに、よりハッピーになるよう正確な情報をお届けするため、自己研磨の毎日である。