可愛らしい柴犬

犬の吠え声は体の大きさに関係なく、遠くまで届きます。そのため、頻度が多いとご近所への迷惑となってしまいますし、気になってしまいますよね。

吠え癖を直すには、まずどうして犬が吠えるのかを理解して、理由に合わせて適切な対策をしていきましょう。

犬が吠える理由

ミニチュア・ダックスフンド

犬はもともと群れをなして行動する動物です。仲間との意思疎通や、敵に対して威嚇するために鳴いたり吠えたりといった行動をとります。

現在では、一緒に暮らしている人と犬は、種は違えど一つの群れであり家族です。犬は私たちと積極的にコミュニケーションをとるため、日々私たちの行動をよく観察し、状況に応じて「鳴く」「吠える」といった行動をとるのです。

吠えにもいろいろな種類がある

一言に「吠え」といっても、吠える原因や目的はさまざまです。

要求吠え

要求吠えする犬

犬が飼い主に対して、何かを要求するときの吠え行動。

要求吠えに人が反応することで、犬は「吠えたら望みが叶う」と思い、繰り返し吠えるようになります。

【要求の例】

  • お腹がすいた
  • 散歩に行きたい
  • おやつがほしい
  • ケージから出してほしい
  • 遊んでほしい

など。

要求吠えに無意識に反応したり、可哀想という気持ちでつい応えたりしていませんか? 意図せず愛犬の吠える行動を強化してしまっているかもしれません。

警戒吠え

威嚇・恐怖からくる警戒の吠え行動です。

警戒吠えの対象はいろいろあり、人、他の犬や動物、音、また見知らぬモノに対しても警戒吠えをすることがあります。

吠えた後に、警戒の対象がいなくなると、犬は「吠えたらいなくなった」と考え、「また来たら吠えて追い返そう」と吠えることが増えていきます。

【警戒する対象例】

  • インターホンのチャイム音
  • はじめて見る不審なモノ
  • 来客

など。

興奮吠え(嬉しいとき)

吠えるミニチュア・ダックスフンド

嬉しさで気持ちが高ぶっているときや、他の犬を遊びに誘うときにも吠えることがあります。

一見、特に問題はなさそうですが、興奮状態の犬は飼い主の声すら耳に届かないほど、冷静さを失っている場合があります。

急な引っ張りや飛び出しによる事故も起こり得るので、犬が落ち着くまでは待つなど注意が必要です。

【興奮しやすいタイミング】

  • 走っているとき
  • 遊んでいるとき
  • 他の犬を遊びに誘うとき
  • 大好きなおやつやおもちゃがあるとき
  • 排泄後すっきりしたとき

など。

続いて、ケース別吠え対策をご紹介します!

インターホンに吠えちゃう

来客や配達員が鳴らす「ピンポーン!」というインターホンの音に吠えてしまう、という犬はとても多いです。

主な理由は2つ。

  1. 知らない人がテリトリーに入ってきたから。(警戒・恐怖・威嚇)
  2. 好きな人が来たから。(興奮)

1、2の心境は相反するものですが、共通するのは「人が来た」ということに反応した、「学習」によるものです。

そのため、吠えのきっかけはインターホンに限らず、「車の止まる音」「エレベーターの音」など人間は気が付きにくい些細な音にも反応して吠えることがあります。

反対に、学習の進んでいない子犬には、インターホンの音を聞かせても、特に吠えるといった反応は示しません。

対策は?

1と2に共通する対策は、玄関やインターホンの音が鳴る場所から離れた場所にクレートを用意してあげること。事前に来客の時間がわかっているならば、その時間には予め「安心できるクレート」に犬をハウスさせ、大きめのバスタオルなどでクレートを覆い、少しでも刺激を軽減してあげましょう。

対策①

「インターホンの音=知らない人が来る=警戒するべき音」と学習してしまっているので、新しく「インターホンの音=おやつ=良いことがある音」というように学習の上書きをする必要があります。

1番簡単なのは、インターホンの音がなったらおやつをあげ、音の刺激に馴れさせる練習です。

一人ではなかなか難しいので、ご家族やご友人に協力してもらうといいでしょう。

実際の来客の際には、クレートにあらかじめ長く遊べるおもちゃやおやつなどを用意しておくと、対応している間も愛犬はおやつで気を紛らわすことができます。

対策②

飼い主さんの帰宅や来客が大好きな人だったなど、嬉しさのあまり興奮して吠えてしまうという犬もいます。

この場合は、犬が落ち着くまでは「アイコンタクトをしない」「触らない」「話しかけない」ということを徹底しましょう。

おやつをあげてしまうと、余計に興奮してしまったり、おやつ欲しさで吠えてしまったりします。

基本はクレートにハウスさせた状態で、犬が落ち着いたらクレートから出して撫でたり遊んであげたりしてください。

他の犬に吠えちゃう

散歩中など他の犬を見ると吠えてしまう理由はいくつか考えられます。

マーキングをしやすい男の子の場合は、自分の縄張りに知らない犬がいることで、吠えて威嚇し追い出そうとしていることがあります。

その他にも……

  • 遊びたいから
  • 嫌いな犬だから
  • 目があったから
  • 急に近づいてきたから

などの理由が考えられます。

特になんの前触れもなく吠えたと感じる場合には、「目があったから」ということも大いに考えられます。一見、目があっただけで吠えるなんて……と思うかもしれませんが、目と目があうというのは、動物界では、縄張り争いをするときやハンターから命を狙われているときなどです。そのため普通は争いを避けるために目を合わさず、挨拶をする時も、正面から向き合わないように、半円を描くように回り込んでお尻の匂いを嗅ぐなど、敵意がないことを相手に伝えます。

対策は?

まずは、飼い主さんを意識して歩くことを目標に練習しましょう。

飼い主さんを意識して歩けるようになると、他の犬に会っても飼い主さんの指示にきちんと応えることができます。

はじめのうちは、犬とすれ違うときはおやつを使って意識をこちらに向け、他の犬が通り過ぎるのを待つようにします。可能であれば、「おすわり」や「まて」の指示を出してみましょう。

もしも、縄張りの意識から吠えている場合には、自由にマーキングはさせないようにコントロールしたり、散歩コースを変えたりすることも有効的です。

ケージに入れると吠えちゃう

ケージをお仕置き部屋として使っていませんか? 

トイレの失敗やいたずらなどで無理やりケージに入れたり、苦手な場所に無理やり入れられれば、余計に嫌いになったり恐怖心を抱いたりして、別の問題行動に発展してしまうこともあります。

そうでない場合、たとえばお留守番や寝る時に、ケージに入れると吠えてしまうのは「分離不安」の傾向が強いのかもしれません。

分離不安とは、名前の通り「飼い主さんが見えなくなる」「離れ離れになる」ことで不安になり、吠えたりしてしまうことです。度合いによってはパニックになり、飼い主さんが帰ってくるまで吠え続けたり、ケージや部屋の破壊、自傷行動をすることもあるので、きちんと向き合ってあげる必要があります。

対策は?

まずは、ケージを安心できる場所にしてあげることが大切です。

家に迎えたばかりの子犬であれば、夜いきなり一人でケージで寝かすのではなく、ケージのそばで一緒に寝てあげたり、寝室にケージを用意してお互いの気配を感じられるようにしてあげるところからはじめましょう。

飼い主さんが家にいる時も、ずっとフリーにするのではなく、あえてケージで過ごす時間も作りましょう。

そうすることで、飼い主さんが別の部屋に行くなど、見えなくなる状況にも慣らすことができるので、お留守番の練習にもなります。

ケージに入ることが当たり前となると、「ハウス」で自ら入ることができるようになります。そして、寝るときやお留守番時でも愛犬にとって安心できる場所となり、吠えることも少なくなっていきます。

吠えをやめさせるしつけのポイント

吠えるキャバリア

一度覚えてしまった「吠え」をやめさせるということは、簡単なことではありません。

家族全員で協力をしないといけませんので、しつけをはじめる前にはきちんとルールを決めておくようにしましょう。

【ポイント】

  • 要求吠えには絶対に反応しないこと。
  • 警戒や恐怖の場合は、その刺激からできる限り愛犬を遠ざける。
  • 人によって対応が違うことがないように、ルールを統一することが大切です。

要求吠えのしつけは最初が肝心になります。

今まで要求吠えに応えていた分、急に無視をされると犬は「あれ?」と思い、今までよりも多く吠えてみたり別の行動を試してみたりします。これを「消去バースト」と呼びます。

たとえば、これまで要求吠えが3回程度だった場合、無視をすると消去バーストが起こり、一時的に吠える回数が4回以上に増えます。

しかし、このバースト中に反応してしまうと、犬は「あ!5回吠えれば今まで通りおやつがもらえるのか!」と考え、以降は5回吠えることが当たり前になってしまいます。

再び要求吠えのしつけをしようとした時に起こる消去バーストは、6回以上の吠えになるので、どんどん難しくなります。

そのため、一度やると決めたら改善されるまではやり通す気持ちがないと、状況を悪化させてしまいます。

吠える理由を知って、正しく対応を

ポメラニアン

吠えること自体は犬にとって当たり前のことで、決してダメなことではありません。もし吠え癖がついてしまった場合には、吠える理由を知って、正しく対応できるとよいでしょう。

犬が吠える理由は一つとは限りません。まずは、犬がどうして吠えているかを正しく見極め、できるだけ吠えないように環境を変えてあげることが重要です。判断がつかない場合は、トレーナーに相談することをおすすめします。

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監修獣医師

犬百科編集部

犬百科編集部

獣医師を含む犬の飼い主歴10年以上の編集者が集い、犬の凄さや可愛らしさについて情報交換している。編集部員の面々は、犬との暮らしがより健やかに、よりハッピーになるよう正確な情報をお届けするため、自己研磨の毎日である。