猫は高いところが得意なので、キッチンに登るのもお手のもの。また、寒くなってくると、猫は暖をとるために暖かいものに近寄っていきます。そのため、日常生活で猫がやけどを負ってしまう事故は少なくありません。やけどをしたときの対策と治療を覚えておくとよいでしょう。

猫がやけどをするのはどんなとき?

オーブンに向かってジャンプする猫
好奇心の強い若い猫は、ヤカンや鍋、ケトルなどに手を伸ばし、やけどをすることがあります。キッチンの上にも簡単に登ってしまうので、日頃から火を使っている時には、火元から離れないようにしましょう。アイロンに触れたり、熱湯のお風呂に落下したりすることもあるので、それらに近づかない環境づくりをする必要があります。また、炎や高温の熱だけでなく、電流や化学物質でもやけどは起こります。外に行く猫では夏場、高温になったアスファルトでやけどをすることもあります。

低温やけどに注意!

低温やけどは、湯たんぽやホットカーペットに長時間接触することで起こります。猫は、人よりも腹部の皮下に液体を多く持つので、低温でやけどを生じるリスクが高いです。ゆっくりと進行するので気が付きにくく、気がついた時には深くて重度のやけどを起こしていることもあります。44度の熱源で6時間、46度では1時間程度接触していると、低温やけどを起こす可能性があると言われています。ホットカーペットの設定温度は38度程度まで低めにする、湯たんぽは厚手のカバーをつける、コタツの中に猫がずっといないようにする、ストーブの周りをガードするなど、あらかじめそれぞれ対策を取っておきましょう。

やけどをしたら、どんな症状になる?

やけどは、現場を見ていない時に起こることも多いので、症状からやけどの可能性を疑うことも大切です。毛で覆われているため、発見が遅れることもあるので、愛猫の様子をよく観察しましょう。

やけどは程度に応じて分類されている

やけどは症状のレベルに応じて分類されています。

Ⅰ度:皮膚の表面のみが損傷を受けている軽度なやけど。赤みが見られる程度。
Ⅱ度:皮膚の表面と真皮の一部が損傷している。痛みをともない、水ぶくれができる。
Ⅲ度:皮膚の表面から皮下組織まで損傷している。知覚がなくなるので痛みは感じない。

表面のやけどでは、皮膚が赤くなったり、腫れたり、水疱ができたり、ふけが出ます。深いやけどだと、皮膚は白〜褐色もしくは黒くなり、皮膚がめくれます。猫が同じ場所を気にしてずっと舐めたり、特定の場所を触ると嫌がったり、脱毛したときは、そこにやけどをしている可能性があります。

とても深いやけどの場合は、神経が破壊されて痛みを感じなくなることもあります。やけどが広い範囲で起きると、脱水を起こしぐったりします。この場合は命が危険なため、すぐに病院に連れて行く必要があります。

治療方法は?

タオルに包まれた猫
やけどだとわかっている場合は、応急処置として冷水で濡らした布や氷のうを当てて冷やしながら病院へ向かいましょう。薬品がかかった場合は水で洗い流し、薬品名をメモして病院へ向かうと良いでしょう。一見、軽傷に見えるやけども数日で進行し、周りに広がって行くことがあるため、軽傷でも必ず病院にかかりましょう。

病院では、まず毛刈りを行い、やけどした部位を確認し、管理しやすくします。受傷から2時間以内であれば、冷水で30分間冷やします。壊死した組織は取り除き、水道水による洗浄とワセリンなどによる保湿をこまめに行います。やけどによって皮膚のバリアを損傷し、細菌感染を起こしている場合は、抗菌薬の外用を行います。重症であれば、入院した上で傷の管理が必要になります。広範囲のやけどで脱水を起こしている場合は輸液を行います。猫が舐めないようにエリザベスカラーの着用が必要になることもあるでしょう。

浅いやけどは痛みが強く、深いやけどは治るのに時間がかかります。深いやけどが体表面積の20%を超えた場合、、体表面積の50%以上の皮膚が欠損した場合、感染により敗血症を起こした場合は、亡くなる可能性がとても高いので、やけどの予防と初期の治療はとても大切です。

猫のやけど、診療費はどのくらいかかる?

アニコム損保のデータによると、通院一回あたりの平均治療費は3,859円です。やけどが深かったり、広範囲であったり、状態が悪い場合はさらに費用がかかるでしょう。

【関連リンク】
火傷(ヤケド) <猫>|みんなのどうぶつ病気大百科

まとめ

猫のやけどの原因は日常生活の中にあります。日頃から、やけどの原因に猫を近づけないように、キッチンの上に乗せない、火を使っているときは目を離さない、熱源から遠ざける、といったことを心がけ、万が一やけどをしてしまった時は、必ず動物病院で相談しましょう。

病気やケガをする前に…

病気やケガは、いつわが子の身にふりかかるかわかりません。万が一、病気になってしまったり、ケガをしてしまっても、納得のいく治療をしてあげるために、ペット保険への加入を検討してみるのもよいかもしれません。

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監修獣医師

平野 翔子

平野 翔子

2012年に東京農工大学を卒業後、24時間体制の病院に勤務し、予防診療から救急疾患まで様々な患者の診療に従事。その傍ら、皮膚科分野で専門病院での研修や学会発表を行い、日本獣医皮膚科学会認定医を取得。皮膚科は長く治療することも多く、どうぶつたちの一生に関わり、幸せにするための様々な提案や相談ができる獣医療を目指す。パワフル大型犬とまんまる顔の猫が大好き。