うさぎは飼い主に甘噛みをすることがあります。軽く噛んでいるのでケガはしないものの、痛いこともあり、なぜこんな行動をするのか気になりますね。うさぎが甘噛みをする理由や対処法について解説します。

うさぎの甘噛みって?

まず、うさぎの甘噛みはどんなものか確認しておきましょう。
うさぎが本気で人に噛みつくと、皮膚が破れて出血します。うさぎの前歯は鋭く、噛む力も強いため、ケガは避けられません。甘噛みの場合は強い力を入れていないので出血することはないでしょう。それでも、噛まれたことには変わらないので歯型がつくことも、痛むこともあります。
飼い主ははじめて甘噛みをされてびっくりすることも、何度も繰り返されてイラだつこともあるでしょう。うさぎは基本的におとなしく、人やほかのどうぶつを傷つけようとすることはありません。甘噛みをする理由はさまざまですが、いずれにしても飼い主に敵意を持っているわけでも、傷つけようとしているわけでもないのです。うさぎが気持ちを表現する手段は限られているため、甘噛みで主張しようとすることもあります。甘噛みに悩むときは、その理由を考え、繰り返したりエスカレートしたりすることがないように冷静に対処しましょう。

うさぎが甘噛みをする理由は?

うさぎが甘噛みをする理由は色々なことが考えられます。そのときの状況によって判断することになります。

理由1:嫌なことがあったから

日ごろは甘噛みをしないうさぎが不意に噛みつくのは、うさぎにとって嫌なことがあったためと考えられます。飼い主に懐いていても、抱っこが嫌いな子は多いです。抱き上げられる、捕まっているという状況は、野生のうさぎには危険な状況だからです。抱っこをされてやめてほしいとき、飼い主だから本気で噛むのはやめておこう、と少し遠慮した結果、甘噛みになることがあります。ケージに手を入れたら甘噛みされた場合も同様です。おやつをなかなか渡さないでいたら、怒って甘噛みをすることもあります。こういった場合、飼い主だから甘噛みで済んでいるので、うさぎがよく知らない人から同じことをされると本気で噛まれてしまうかもしれません。

理由2:発情行動のひとつ

飼い主の足にまとわりつき、マウンティングをした際に甘噛みをすることもあります。これは発情行動のひとつです。うさぎは交尾のとき、相手の首の後ろを噛んでおさえます。これは相手が思わぬ方向に動かないようにするためで、うさぎは首の毛皮を甘噛みされても痛くはありません。飼い主の足にマウンティングするときも同様に、動かないようにしたいという気持ちや、発情による興奮から甘噛みをします。ただ興奮しているだけなので、飼い主が痛がっているとは夢にも思っていないでしょう。うさぎは男の子も女の子もマウントをするので、飼い主にマウントして甘噛みすることも性別を問わず起こります。

理由3:周囲のものを調べるため

うさぎは周囲のものを調べるとき、臭いを嗅ぐほかに、噛んでみてそれがどんなものなのか、食べられるものなのか確かめることがあります。ものをかじるのはうさぎにはよくある自然な行動です。遊びのためにすることもあります。たいていは「もの」に対してすることですが、それが人でも何でもとりあえず口にして確かめたいという子もいるようです。このタイプは飼い主の感触を知りたい、遊びたいといった気持ちで噛んでしまいます。

理由4:飼い主に甘えている

うさぎは仲間同士で毛づくろいをする際、お互いの体をなめたり、毛の表面を甘噛みしたりします。飼い主がうさぎをなでると、お返しの気持ちで手をなめてくれることがあります。ここまではいいのですが、中には丁寧に飼い主の手を甘噛みする子も。「もっとなでてほしい」という甘えの気持ちが入っていることもあります。

甘噛みをやめてほしいときはどうする?

上の理由で説明したように、うさぎはこちらが痛いとは思っていないかもしれません。まず甘噛みは痛いこと、よくない行動であることを伝える必要があります。うさぎの目をよく見て、名前を呼ぶときとは異なる低いトーンで「痛い」「ダメ」「やめて」と伝えます。大きな声で「痛い!」というだけでも、よくない行動だと伝えることになります。怒っていることを伝えなくてはいけませんが、うさぎに痛い思いをさせたり、怯えさせるほど過度に叱ったりすることは逆効果になるので絶対にやめましょう。
噛まれたときに抱っこから落としたり、ふり払ったりなどでケガをさせないようにも注意してください。うさぎの骨はデリケートなので、軽い衝撃でも骨折してしまうことがあります。

発情の場合は、伝えるだけではおさまらないかもしれません。厚手の靴下やスリッパなどを履いて足を守り、発情がおさまるまで気長に待つというのも対処のひとつです。
飼い主の悩みが深くすぐにでもやめてほしい場合は、動物病院で相談して去勢手術も検討してください。噛み癖が習慣化している場合もあるので、去勢手術だけでは甘噛みがゼロになるとは言い切れませんが、発情時のストレスから解放されるので、多少は落ち着くと期待されます。
女の子の場合は、病気の予防のために生後半年~1歳の間に避妊手術をした方がいいといわれています。

甘噛みに応じてうさぎの主張を通していると「甘噛みをすれば飼い主が思い通りに動いてくれる!」と学習させることになります。こうなると甘噛みを繰り返したり、甘噛みで動いてくれないと本気で噛んだりと、行動をエスカレートされることにつながります。甘噛みされても、すぐにうさぎの要求に応じない方がいいでしょう。
もちろん理由1「嫌なことがあったから」の場合、飼い主側の行動を見直すことも大切です。うさぎが嫌がることをしなければ、甘噛みもなくなるでしょう。ケージに手を入れると甘噛みされる場合は、うさぎがケージの外で遊んでいるときに掃除をすませることで解決できます。それでも抱っこの練習や爪切りなど、うさぎが嫌でも必要なこともあります。甘噛みされたらすぐに抱っこをやめるのではなく、うさぎの顔を軽く覆うなどして少し間を置いてから離すようにしましょう。うさぎをなでていて甘噛みをされたら、なでることを一旦やめます。なでてほしくて甘噛みをする様子があれば、そのときは応じず、ほかの方法でアピールしたときにすぐなでるようにすると、少しずつではありますが行動を変えていくことができます。

まとめ

うさぎにとって甘噛みは本能的な行動であるだけでなく、コミュニケーション手段のひとつでもあります。甘噛みの理由や背景を考えることで、一緒に暮らすうさぎの個性や嫌なこと、主張がわかってくるでしょう。うさぎへの理解を深めるチャンスと捉えて、前向きに向き合ってくださいね。

ライター

佐藤華奈子

佐藤華奈子

大学の動物系学科を卒業後、教育情報誌、ライフスタイル誌の編集プロダクション勤務を経て、2009年よりフリーランスの動物ライターに。「動物を飼うことは動物と暮らすこと」をテーマに活動中。おもにペット、動物園、牧場の動物関連の雑誌、書籍などで執筆。2011年よりうさぎ(ネザーランドドワーフ)と暮らしているうさぎ愛好家。