今では毛色も目の色もさまざまなうさぎが見られますが、一方でうさぎといえば「白い体に赤い目」というイメージも根強く残っています。その元になったのが日本白色種という品種です。一体どんなうさぎなのか、特徴や性格を紹介します。

日本白色種はどんなうさぎ?

日本白色種(にほんはくしょくしゅ)は日本に元々存在していたうさぎではありません。品種名に「日本」とつくのは日本で作られたうさぎの品種だからです。英語では「ジャパニーズホワイト」、「ジャパニーズホワイトラビット」などと呼ばれます。アメリカのうさぎ協会(ARBA)の公認品種ではなく、世界的に見ると日本を中心としたアジアの一部で限定的に飼育されているうさぎです。

日本白色種の特徴は?

全身が雪のように真っ白で赤い目をしています。毛は短毛です。うさぎの中では大型で体重は3~6㎏ほどになります。さらに大きくなるように改良された秋田改良種では10㎏近くになることも。お顔は逆三角形で、丸くてぬいぐるみのような海外の品種とは印象が異なり、「昔ながらの」「渋い」などと表現されます。お耳はうさぎらしい大きな立ち耳で薄く、根元から先に向けて広がっています。

日本白色種の歴史は?

日本に初めてカイウサギの仲間が入ってきたのは、1500年代という記録があります。その後、江戸時代である1700年代後半の絵に白い体に赤い目のうさぎが見られるようになりました。明治時代になると、海外からさまざまな品種のカイウサギが導入されるように。このとき、すでに日本にいたうさぎと導入された品種を交配して日本白色種の基礎となるうさぎが生まれました。明治末期には3系統があり、総称して「白色在来種」と呼ばれていました。

大正時代に入ると産業用に大型のうさぎが求められるようになり、ニュージーランドホワイト(日本白色種に似た白い毛に赤い目の大型のうさぎ)や白色のフレミッシュジャイアント(最大のうさぎ)などをかけあわせ、白色改良種と呼ばれるうさぎが誕生します。このうさぎは大正から昭和にかけて、軍事目的の毛皮を輸出するため、また食肉のために全国で広く飼育されていました。「日本白色種」と呼ばれるようになったのは、1950年代に命名されてからです。

第二次世界大戦後もしばらくは産業用に広く飼育されていましたが、やがて衰退して飼育数は激減していきます。その後は情操教育のために全国の小学校で導入されました。ペットとしても飼育されていましたが、近代日本の住宅事情から小型のうさぎが好まれるようになり、やがて海外の品種とのミックスうさぎ(パンダうさぎ)がブームに。さらにアメリカン・ラビットとしてアメリカから小型のネザーランドドワーフやホーランドロップなどが導入され、ペット飼育はそちらが主流になりました。

日本白色種は幻のうさぎ?

昔は全国でごく普通に飼われていた日本白色種ですが、現在ではペットとしては珍しく、ペットショップで出会える可能性はほとんどありません。学校などの施設で飼育されていた子の里親になるなどの方法で出会うことができます。

日本白色種の性格は?

性格は優しく大人しいうさぎです。飼い主やほかのペットにも懐いてくれますが、うさぎは総じて繊細で怖がりです。特に慣れない場所や人、初めて見るもの、大きな音は警戒し、ストレスから体調不良につながることもあります。飼い始めはゆっくりと環境に慣れてもらい、大きな音を出す、いきなり触るといったうさぎを驚かせる行動は慎みましょう。

日本白色種の寿命は?

ペットのうさぎの寿命は、以前は約7~8年といわれていました。それが近年伸びている傾向にあり、10歳を超える子も珍しくありません。日本白色種も家族としてお迎えして大切に飼えば、長年にわたって寄り添ってくれる可能性があります。

日本白色種との暮らし方

年配の方の中には、過去の飼育方法を覚えている方がいるかもしれません。また調べれば昔ながらの飼い方もわかりますが、これらは家畜としての飼育を前提としていることが多いものです。昔と今ではうさぎの飼育の常識も変わっているので、最新の飼育情報をもとに、ほかのうさぎと同じように飼育します。とはいえ、小型のうさぎと同じケージや飼育用品では間に合わないこともあるので、犬用も取り入れるなど、適宜工夫して暮らしていくことになります。

日本白色種の食事はなにをあげればいい?

うさぎの食事は牧草(チモシー)とペレットが基本。主食となる牧草は常にケージにたっぷり入っている状態にして無制限に与えてください。ペレットは成長段階と体重に応じて内容や量を変更します。野菜や果物などは「おやつ・嗜好品」になります。与えとしても、ごく少量に留めてください。

以前はうさぎの食事として与えられていたおからや食パン、そのほかの人間の食べ物はうさぎに適した食事ではありません。健康上のトラブルにつながるので与えないでください。食事内容の急変も胃腸によくないので、食べ慣れていない野菜を急にたくさん与えることもNGです。

日本白色種にしつけはできる?

トイレを覚えてくれるほか、名前を呼ぶと寄ってくるようにしつけることができます。一方で、何でもかじる、後足で大きな音を出す、マーキングをするといった行動は、うさぎの本能的な行動なのでしつけでやめさせることはできません。かじってほしくないものや汚されたくないものは保護する、うさぎの不満を解消するなどして対応を。

また、うさぎは一般的に抱っこを嫌がります。健康管理に必要なこともあるので、無理のない範囲で日頃から練習しておきましょう。大人になってから始めると、抵抗する際の力が強いので飼い主がケガをする可能性も。子どものうちから練習を始めてなるべく早く慣れてもらいましょう。

日本白色種に必要な飼育環境や適温は?

以前は屋外で飼育するのが一般的でしたが、現在は温度管理ができる室内飼育が普通です。おもにうさぎの家となるラビットケージの中で過ごし、1日に1度はケージから出して室内を散歩できるようにします。うさぎの飼育に最適な温度は18~24度、湿度は40~60%といわれています。真夏でもエアコンを使って室温が28度を越えないようにしましょう。

飼育スペースの都合でどうしても屋外飼育になる場合でも、うさぎ小屋を用意して温度管理ができるように工夫してください。現代の夏は危険な暑さになるので、夏場だけ冷房が使える室内に移動させるなど、飼い始める前から暑さ対策を考えておきましょう。

日本白色種はどんな病気に気を付けたらいい?

家畜として作られた品種なので、肥満にならないよう、日頃からペレットやおやつを与え過ぎないように注意しましょう。また次のようなうさぎが一般にかかりやすい病気に気を付けてください。

胃腸うっ滞

うさぎに多い胃腸トラブルです。不適切な食事やストレスが原因となり、胃腸の動きが低下することで起こります。症状は食欲不振、うんちが少なくなる(小さくなる)、お腹が張る、腹痛で体を丸めて震える・歯ぎしりをするなど。急激に症状が悪化して命に関わることもあります。人間と同じ感覚で単なる胃腸の不調と考えず、食欲がなくなったら早めに動物病院を受診してください。

ソアホック

うさぎの足裏に起こる皮膚炎です。基本的に後足で見られます。うさぎの足裏には肉球はなく、厚い毛で覆われています。この毛が加齢や足に負担がかかることで薄くなると、皮膚に炎症が起こり、悪化すると潰瘍になります。うさぎは痛みで足を引きずったり、歩かなくなったりしてしまいます。ケージの床は金網を避けてプラスチック製のものを選ぶ、すのこやマットを敷くなどして、足に負担がかからない環境を心掛けましょう。

まとめ

うさぎは一緒に生活する家族として癒してくれるだけでなく、さまざまな形で人間に貢献してくれています。日本白色種はそれを再認識させてくれる品種と言えるでしょう。時代の変化とともに一般に見かけることは少なくなりましたが、今でも「白い体に赤い目」のうさぎのイメージとして人々の記憶に焼き付いています。懐かしさがある反面、今やペットのうさぎの中では珍しい品種です。もしお迎えしたら、このユニークなうさぎとの生活を存分に楽しんでくださいね。

ライター

佐藤華奈子

佐藤華奈子

大学の動物系学科を卒業後、教育情報誌、ライフスタイル誌の編集プロダクション勤務を経て、2009年よりフリーランスの動物ライターに。「動物を飼うことは動物と暮らすこと」をテーマに活動中。おもにペット、動物園、牧場の動物関連の雑誌、書籍などで執筆。2011年よりうさぎ(ネザーランドドワーフ)と暮らしているうさぎ愛好家。