うさぎが急に元気がなくなり、精巣の片方、もしくは両方が腫れているような症状がでている場合、精巣炎を起こしている可能性があります。

精巣炎は、重症になると全身状態が悪くなることがあるため、早期発見や予防が重要な病気です。

今回は、うさぎの精巣炎についてお話ししたいと思います。

うさぎの精巣炎ってどんな病気?

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精巣(睾丸)に細菌が感染することで起こる病気です。

精巣は陰嚢(いんのう)という袋の中に入っている卵状の臓器で、左右1対存在します。精巣は、精子を産生する他、ホルモンを分泌する内分泌器官です。

体の別の場所で感染した細菌が血流によって精巣に運ばれるか、精巣自体が傷つくことによって精巣に細菌が感染、増殖します。 そうすると炎症を起こし、腫れや痛みが認められるようになります。これが精巣炎です。

うさぎの精巣炎の原因は?関連する病気はある?

パスツレラ菌の感染が原因となることが多く、その他には黄色ブドウ球菌などが認められます。

パスツレラ菌は、うさぎでくしゃみや鼻水などを起こすうさぎのスナッフルの原因菌で、特に症状がない健康なうさぎでも鼻腔や副鼻腔内に菌を持っています。その菌が血流を通って精巣に移動し、感染、増殖することで精巣炎を引き起こすことがあります。

また、ケガや咬まれたことによる傷が原因で発症することもあります。

うさぎの精巣炎はどんな症状が出る?

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精巣が腫れ、左右で大きさが違うようになります。場合によっては、陰嚢も腫れることがあります。

痛みや発熱を伴い、それによって食欲や元気が低下します。

うさぎの精巣炎と鑑別する病気は?

精巣が腫れる病気として気を付けるべきものに、精巣の癌、すなわち精巣腫瘍があります。

精巣腫瘍も、精巣炎と同様に精巣が腫れ、左右で精巣の大きさに差があるなどの症状が出ますが、痛みや発熱、食欲や元気の低下は認められないこともあります。 細菌感染の治療として、抗菌薬の投与を行います。

食欲の低下がある場合には、強制給餌などで食事の補助をする必要があります。

また、去勢手術が選択肢にあげられることもあります。摘出した精巣は病理検査に出して、精巣炎なのか精巣腫瘍など他の病気なのかが確定されます。

うさぎの精巣炎の予防法は?去勢と精巣炎の関係は?

去勢手術を行うことで、精巣炎や精巣腫瘍などの病気を予防することができますが、去勢手術自体がうさぎにとって負担になる場合もあるので、かかりつけの動物病院で相談するようにしましょう。

精巣の病気は、5歳を超えてから発症することが多いため、定期的な健康診断をおすすめします。

また、精巣を傷つけたり汚したりしないように、安全で清潔な環境を整えてあげることも大切です。精巣が腫れてきてしまうと、自分自身の爪(後ろ足)でさらに精巣を傷つけてしまう場合もあります。男の子のうさぎは、他の男の子のうさぎの睾丸を意識的に攻撃することがあるため、多頭飼育の場合にはケージを別にし、散歩中にも会わせないよう工夫して、喧嘩させないようにしましょう。

まとめ

うさぎの精巣炎は比較的まれな病気ですが、発症すると痛みや発熱を伴って全身状態が悪くなることがあるため注意が必要です。早めに適切な治療を受けられるように、日ごろから精巣の大きさをチェックするようにしましょう。

去勢手術によって予防できる病気のため、心配であれば病院で手術の相談をすることをおすすめします。

監修獣医師

石川美衣

石川美衣

日本獣医生命科学大学卒業。2008年、獣医師免許取得。卒業後は横浜市の動物病院で診察に従事、また東京農工大学で皮膚科研修医をしていました。2016年に日本獣医皮膚科認定医取得。現在は川崎市の動物病院で一次診療に従事。小さいころからずっと犬と生活しており、実家には今もポメラニアンがいて、帰省のたびにお腹の毛をモフモフするのが楽しみ。診察で出会う犬猫やウサギなどの可愛さに日々癒されています。そろそろ我が家にも新しい子を迎えたいと思案中。