猫と暮らしていると、できるだけ居心地のいい空間を提供してあげたくなるのが飼い主の心理ではないでしょうか。愛猫のために、苦手な音は避けて、好きな音を使ってより距離を近づけたいと思う方もいることでしょう。今回は猫と音の関係にフォーカスして、猫が寄ってくる音などをご紹介します。
猫の聴力の話

猫も人間と同じように五感を持っていますが、中でも聴覚は特に優れています。音への感度が高い理由はいくつかありますが、大きく2つ考えられます。ひとつは、小さくて動きが素早いネズミなどの動物の動きを、耳で察知するためです。動体視力にも優れていますが、隠れていたり遠くにいたりする獲物の存在は、音を聴いてすでにわかっていることが多いです。
もうひとつは外敵から身を守るためです。野良猫に気付かれないように静かに近づいたつもりでも、気付かれなかった人はいないのではないでしょうか。稀どんなに小さな足音でも自分に近づいてくる存在には敏感に反応するの
猫の耳はどれだけいいのか
具体的にどれほど耳がいいのかは、音の高さによって変わってきます。低い音を聴いたときの聴力は、人とあまり大きな違いはありません。耳がいいことで有名な犬も同様で、低い音にはそれほど敏感ではないようです。
一方で高い音の場合は、私たち人間の4倍もの高音を聴く能力があるとされています。犬と比較しても可聴域は猫のほうが優れていて、敏感に発達したことが伺えます。また、立ち耳と垂れ耳の犬同士を比べると、一般的には立ち耳の犬のほうがより音に敏感です。垂れ耳の犬のように大きな耳を持つ猫がいないことを考えると、猫の聴覚は種類や身体の特徴に左右されにくいと考えられます。
猫と暮らしているとたまに、猫が何もないところを見ているシーンに遭遇するかもしれません。私たちには見えない幽霊を見ていると思われることも多いこの行動ですが、ほとんどの場合、高音や小さな音に反応しているだけなのでご安心を!
猫の耳は180度動かせる
猫の耳の形は、細かく分けると立ち耳の「プリック(Prick)」や上だけ少し垂れた「ルースフォールド(Loosely Folded)」、完全に垂れている「フォールド(Folded)」やアメリカンカールに代表される後ろに巻いた「カール(Curled)」などがあります。それでも犬と比べるとバリエーションが少なく、一部の種類を除いてほとんどが立ち耳です。
立ち耳の場合、耳は少し内側にカーブした形状になっていて、さまざまな方角からの音を集めるのに優れた形になっています。小さい音は小さいまま鼓膜に届いているわけではなく、パラボラアンテナのように一点に集めて聴き取る効率を上げています。高い聴力には鼓膜や耳管といった器官のほかに、耳の形や動きにも大きなカギがあることがわかります。
この、外から見える耳のことを耳介(じかい)と呼び、人間では耳たぶを含む全体にあたります。180度動かせるのはこの部分で、日常的に聴きたい方向に向かって自在に回転させています。
しかし猫の耳には感情を表現する機能もあるため、音とは関係なく動くこともしばしばあります。たとえば耳を横にぺたんと寝かせているときはリラックスしていることが多く、逆に後ろ向きに立てているときはイライラしていることが多いなど、豊かな表現力で耳をうまく使います。
猫の好きな音は?

猫のおもちゃには音が鳴るものも多いですが、中にはなかなか遊んでくれないものもあり、何が違うのか気になる飼い主さんも少なくないのではないでしょうか。もちろん大きさや形などビジュアル的な要因もありますが、実は好きな音がしないからあんまり興味をそそられないという可能性もあります。そんなときは、猫に好かれる音を使ったおもちゃを用意してみるのもひとつの方法です。
鈴の音
あまり大きな音がするものは苦手ですが、小さく軽い鈴が奏でる高い音は好きなようです。しかし、いくら好きとはいえ、首輪につけられるのが得意な猫は多くはありません。ずっと近くで音が鳴り続けることにストレスを感じてしまいます。猫と鈴の組み合わせは定番ですが、猫が鈴をつけているメリットは飼い主が居場所を特定しやすいことくらいです。
クローゼットやトイレ、洗濯機への閉じ込め事故の防止や、脱走時に見つけやすいといったメリットもあるといわれていますが、これらには鈴をつけることなく猫にストレスがかからない方法で対策を講じることが可能です。猫がいることを常に意識して、安全な居住環境を整えていればあまり必要がないものなので、おしゃれや可愛いからという理由だけでつけている方がいたらぜひ一度、必要性の有無を考えてみてください。
ビニールのシャカシャカ音
ビニールの素材を擦って音を立てると、近づいてくる場合があります。小動物が動くときに出す音と似ているためではないかと考えられています。人間の赤ちゃんもビニールのカシャカシャした音を聞かせるとリラックスすることがあるといいますが、猫をも魅了するとは意外な共通点です。
男性よりも女性の声が好き?
自分より大きい動物が低い声で近づいてくると猫は威嚇されていると感じ、警戒してしまいます。つまり、性別に起因するものというより、低くて大きい声を出す人は往々にしてあまり好かれない傾向にあるようです。女性の声色に母性などを感じているわけではないので、男性のみなさんは落ち込まないでください。猫も人間が発する言葉のイントネーションなどから気持ちを読み取っているため、やさしく声をかけてあげるように心がけましょう。
苦手な音、嫌いな音はある?

好きな音があれば、もちろん苦手な音もあります。一緒に生活をしていると、いつも決まったタイミングで遠い部屋に逃げる猫の姿を見たことがある飼い主さんもいるのではないでしょうか。
大きな音は苦手?
大きな音が総じて苦手です。日常で聞こえてくる大きな音は意外とたくさんありますが、代表的なものだと掃除機やドライヤー、ミキサーなどがあります。怖がる猫がいる家庭では、できるだけモーター音が響かない家電を選んだり、掃除道具をアナログなものにしたりすることも検討してみるといいかもしれません。
猫を呼び寄せたいときに使える音
起こらないことが理想ではありますが、万が一猫が脱走してしまった場合など呼び寄せたいときに使える音も確認しておきましょう。
飼い主の声
一番効果があるのは飼い主の声です。普段から優しい声をかけてあげて信頼しあっている関係性なら、万が一のときにも安心できる飼い主の声で戻ってきてくれることでしょう。大きな声が苦手という猫も多いですが、猫が心地いいと感じる声で話しかけてあげると気持ちも伝わりやすくなるはずです。
好きなおやつの袋を開ける音
食べることが好きな猫には効果的な音の使い方です。おやつの袋を開けたりケースをカラカラと鳴らすだけで近寄ってくる猫なら、すぐに戻ってきてくれるでしょう。
まとめ
猫にとって耳から得られる情報は、私たちが想像するよりはるかに多いことがわかりました。耳のまわりの筋肉も人間よりもずっと発達しています。猫の生態や好みを知ることで今まで不思議だった猫の行動の意味を理解し、猫との関係を深めることに役立てていただけたら幸いです。
病気になる前に…
病気はいつわが子の身にふりかかるかわかりません。万が一、病気になってしまっても、納得のいく治療をしてあげるために、ペット保険への加入を検討してみるのもよいかもしれません。
