床に寝そべり布で遊ぶ猫

猫が毛玉を苦しそうに吐き出す。そういった場面をお家で見たことがある飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか。ある報告(※)によると、特に症状のない健康な猫を対象として聞き取り調査をした結果、猫が年に2回以上毛玉を吐く割合は短毛種で25%程度、長毛種で半数程度という報告があります。健康な猫でも、1~2週間に1回くらいは毛玉を吐くことがあるようですが、いつもより頻繁に吐く、吐く時に苦しそうなど見ていて心配になる様子もあるかと思います。今回は、そうした毛玉の原因について、また毛玉を吐くときの対処法や日常ケアでの予防法などをご紹介します。

※カナダの猫専門医のDr.マギー(Margie Scherk,DVM,Dip ABVP)のセミナー資料より

猫が毛玉を吐く理由は?

猫は1日の中で眠っている時間の次に毛づくろい(グルーミング)に時間を費やすと言われるほど、毛づくろいを熱心に行う動物です。猫の舌にはザラザラした突起が付いており、この突起は体毛をブラシのように上手にとかしたり、口の中の唾液を体毛に送り届ける役割をしています。毛づくろいの目的は、体表の汚れを落として清潔にする以外に、自分の臭いを消す(獲物にばれないよう)、体温調節(唾液を付けて体温低下)、リラックス効果やコミュニケーションツールとして猫の本能的な行動に必要不可欠な行為です。この毛づくろいが、猫が毛玉を吐く理由と大きく関係しています。

猫の毛玉の正体っていったい何?

毛づくろいの過程において出てきた抜け毛や汚れは、猫が飲み込むことになりますが、飲み込んだ抜け毛は体内で消化できないため、通常便で排泄されます。しかしながら、抜け毛の量が多く胃や食道に溜まってしまうと毛玉となり、猫は吐いて毛玉を出そうとします。この胃液とともに、口から吐き出された猫自身の体毛の塊が毛玉の正体です。

猫が毛玉を吐いた!その理由は?

猫が毛づくろいをして便から排泄できずに消化管にたまった毛玉は、口から吐き出されます。つまり、短時間に飲み込んだ毛の量が多いほど毛玉は発生しやすく、吐く回数は増えます。毛玉が発生しやすいのは、「換毛期」と呼ばれる毛の生え換わり時期(夏毛にかわる春先と冬毛にかわる秋)に抜け毛が増え、毛玉も増える傾向にあります。しかし、室内で生活する猫は気温の変化が少ないので、年間を通じて換毛が起こるともいわれています。

また、短毛種に比べ長毛種の猫のほうが毛量も多く毛玉を吐きやすい傾向にあります。

それ以外に、皮膚病があり皮膚を気にして舐める、身体のどこかに痛みがあり痛い箇所を過剰に舐める、またはストレスが原因で過剰に毛づくろいをするといった病気が隠れていることもあります。

【関連記事】
飼い主が知っておきたい猫の皮膚病の原因、症状、治療法、対策

猫が毛玉を吐いたらどうしたらいい?

猫が毛玉を吐く頻度が、1〜数ヶ月おき程度と多くなく、また吐いた後に食欲もあり、体調に影響がない場合は様子をみても問題ない範疇と考えます。しかし、頻繁に吐く場合や、咳き込んだり、吐こうとする仕草はあるが毛玉を吐き出せない場合は胃の中から出せないくらいの毛玉の大きさになっていることもあるため、動物病院に診てもらうのをおすすめします。同時に体調の変化や、いつもより過剰に毛づくろいをする、フケが過剰にみられる、毛が抜けて一部の皮膚がみえているなどの場合も動物病院の受診をおすすめします。

猫の毛玉を防ぐにはどうしたらいい?

猫を撫でている

猫の身体に付いた抜け毛やむだ毛を日頃から取り除くことで、猫が毛づくろいで飲み込む毛の量を減らすことができます。また、飲み込んだ毛が胃腸をスムーズに通過できるようなフードやグッズも効果的なので紹介していきます。

猫の毛玉を防ぐグッズ

飲み込んだ毛玉をスムーズに身体から出す毛玉除去剤として、猫が舐めて飲み込めるようなチューブタイプのサプリメントがあります。これは、ワセリンや流動パラフィンが主な成分で、飲み込んだ毛の流れを良くし、便を排泄しやすくしてくれます。投与量は少量で、比較的、猫も好んで舐めてくれる印象があり、無理なくできる予防策のひとつです。

また、猫草は、猫の胃を刺激し吐きやすくする食物繊維が主成分で、腸の運動を促し便の排泄を促進してくれる働きがあります。しかし、刺激が強く、消化不良を起こしてしまう場合があるため、注意しながら与える必要があります。

猫の毛玉を防ぐフード

日頃の食事にも、毛玉を防止することのできるフードが販売されています。これらの食事には「毛玉ケア」や「ヘアボールケア」と記載されていて、可溶性食物繊維源で粘り気のあるサイリウムや、不溶性食物繊維など複数の食物繊維が配合されています。そのため、毎日の毛づくろいで飲み込んだ毛が便と一緒に排泄されるのをサポートしてくれます。これらの食事により、便中に排泄された毛玉の量が2倍に増えたという報告もあります。これらの食事は、健康な猫が食べても問題のない栄養バランスで作られているため、毛玉が気になる猫は日頃のケアとして取り入れやすいフードです。ただし、元々食べている食事からの急な切り替えは消化不良の原因となるため、1週間位かけて少しずつ変更していくことをおすすめします。

今日から始められる毛玉ケア

日常ですぐに取り入れることができ、最も効果的な毛玉ケアは、日々のブラッシングです。

ブラッシングにより、猫が過剰に抜け毛を飲み込まないよう、効率良く取り除くことができます。またブラッシングは、飼い主さんと猫とのスキンシップにつながり、血行促進、リラックス効果ももたらします。これ以外に、猫の皮膚の調子を毎度チェックでき、身体の異常の早期発見にもつながります。

ブラッシングの頻度としては、短毛種であれば週2~3回程度、長毛種であれば毎日行うのが有効です。しかしながら、猫によっては、身体を触られることが苦手で、全身のブラッシングを嫌がる子も少なくなくブラッシングがストレスになってしまうことも。初めてブラッシングを行う場合は、猫が嫌がらない部位から少しずつ、短時間から始め、心地良いと感じる程度でとどめておきましょう。コツとしては、猫同士でスキンシップをとっている頭や首あたりからなでるようにブラッシングを始め、嫌がらず心地よさそうにしていたら、首から背中、お尻の方向にブラッシングをすすめていくと良いでしょう。お腹や脇側の毛は長毛種だと毛玉ができやすい場所ですが、猫が触られるのを嫌がる場所でもあるので少しずつ行っていきましょう。

毛玉ケアにおすすめのグッズ

毛玉ケアに必要なブラッシングを行う上で重要なのは、猫の毛質にあったブラシ選びにあります。また、猫が嫌がらないブラシであるかも大切です。

短毛の猫は毛が短く皮膚が近いので、なるべく皮膚を傷つけない先端のやわらかいラバーブラシがおすすめです。ラバーブラシは抜け毛や汚れを取り除いてくれる働きがあり、先端が心地よくマッサージ効果ももたらしてくれます。ブラッシング後は、ブラッシングで浮いてきた抜け毛が体毛表面に残るため、猫が毛をまた舐めて飲み込まないよう水で少し濡らしたタオルでそっと拭き取るか、クリーナーのコロコロで取り除いてあげるのも効果的です。

長毛種の猫は、奥まで櫛が入る長めのスリッカーブラシか、コームがおすすめです。始めに、軽くブラシで表面の抜け毛や汚れを取り除いてから、コームで奥の絡まった柔らかい毛をときほぐす様にといていきます。毛が絡まっていたり、毛玉ができている場合は無理に引っ張らず、少しずつ周りからほぐしていきます。また、毛質の柔らかい猫では、金属性のスリッカーブラシを使うと、毛を傷めてしまう場合もあるので、先端が丸いブラシや獣毛ブラシもおすすめです。

【関連記事】
猫にシャンプーは必要!?|必要な場合の仕方やコツをご紹介

毛玉ケアをしないと発症しうる病気

飲み込んだ毛が多く、うまく便から排泄されない、または吐き出されない場合、ときに胃の中で塊となり、大きな毛玉(毛球)を形成してしまう場合があります。この状態を「毛球症」といいます。

毛球症の危険性

毛球症は毛玉が吐き出せないほど胃の中で大きくなり、停滞するため、吐き出そうとする仕草はあるが吐き出せない、または食べたものも吐くというような症状がみられます。この状態が続くと食欲もなくなり体重も減ってしまう場合があります。また、胃の中の毛球が胃から先の腸に流れて、腸閉塞を起こす危険性もあります。腸閉塞が起こると吐きが止まらない、便が出ずぐったりするなどの症状がみられ、緊急的な対応が必要となります。

毛球症になりやすい猫としては、やはり毛玉ができやすい長毛種や、皮膚疾患やストレスで毛づくろいの多い猫、慢性的な腸の疾患があり腸の運動障害がある猫などで起こる危険性が高くなります。

毛球症になったらどうする?

吐き気が止まらない、食欲もないなどの症状がある場合は、まずは動物病院で毛球症かどうかの診断を受けましょう。毛球がさほど大きくない場合は、毛球除去剤を使って、毛球が便と一緒に排泄されるのを促す方法があります。しかし、大きな塊の場合、または腸に詰まって腸閉塞を起こしているような場合は、内視鏡で取り出すか、手術で取り除く必要があります。

毛球が腸から一旦除去されれば、症状は落ち着きますが、その後は再発防止のため日ごろの毛玉ケアが重要になります。

【関連リンク】
毛球症 <猫>|みんなのどうぶつ大百科

まとめ

猫の毛づくろいは、猫にとって日常不可欠な行動ですが、特に長毛種の猫にとっては毛玉予防として、飼い主さんの日ごろのケアが必要となります。その猫に合った、日常からできる無理のない毛玉のお手入れ方法から少しずつ取り入れていってみてください。

【関連記事】
飼い主が知っておきたい猫の皮膚病の原因、症状、治療法、対策
猫にシャンプーは必要!?|必要な場合の仕方やコツをご紹介

【関連リンク】
毛球症 <猫>|みんなのどうぶつ大百科

猫ちゃんの保険ならアニコム損保におまかせ

どうぶつの病気に関するデータを公開

みんなのどうぶつ病気大百科
アニコム損保が保有する世界最大規模の診療データをもとに、品種別・年齢別・性別のかかりやすい病気や、診療費の目安、平均通院回数などの統計データを調べることができるサイトです。犬・猫だけでなく、鳥・うさぎ・フェレットのデータも公開しています(※)。

(※)鳥・うさぎ・フェレットは年齢別・性別のみ検索可能

監修獣医師

溝口やよい

溝口やよい

日本獣医生命科学大学を卒業。2007年獣医師免許取得。埼玉県と東京都内の動物病院に勤務しながら大学で腫瘍の勉強をし、日本獣医がん学会腫瘍認定医2種取得。2016年より埼玉のワラビー動物病院に勤務。地域のホームドクターとして一次診療全般に従事。「ねこ医学会」に所属し、猫に優しく、より詳しい知識を育成する認定プログラム「CATvocate」を修了。毎年学会に参加し、猫が幸せに暮らせる勉強を続けている。2018年、長年連れ添った愛猫が闘病の末、天国へ旅立ち、現在猫ロス中。新たな出会いを待っている。