ゴロゴロいいながらくつろぐ猫を膝の上に抱っこしてのんびりするのは、猫好きさんにとって至福の時間ですよね。でも、抱っこが嫌いという猫も意外と多く、残念に思っている飼い主さんもいるのではないでしょうか。抱っこができることは、猫と飼い主さんのコミュニケーションを深める他に、お手入れがしやすくなったり、病気の早期発見につながるなど、さまざまなメリットがあります。今回は、上手な猫の抱っこの仕方やポイントをご紹介します。

そもそも、抱っこが好きな猫は少ない?

本能的に抱っこが苦手

もともと猫は、単独生活をする警戒心の強い動物。抱っこで体を拘束されることを本能的に好みません。猫が抱っこをさせてくれないからと言って猫に嫌われているというわけではありません。抱っこが苦手な猫でも、抱っこの気持ちよさを教えてあげると、できるようになることが多いですが、性格によってはどうしても難しい場合もあります。そのようなときには無理強いしないことも大切です。

抱っこが好きな猫とそうでない猫の違い

抱っこが好きな猫とそうでない猫の違いは、猫自身の性格や、育った環境によるところが大きいようです。甘えん坊で人懐っこい性格の猫やのんびり屋の猫は抱っこが好きなことが多く、活発で自由に動き回ることが好きな猫は抱っこがあまり好きではないことが多いようです。また、臆病な性格の猫や神経質な猫も、いざというときに自分で逃げられない抱っこの状況を好まない傾向があります。

また、小さいときから人間の手で育てられ、人間と一緒に暮らしてきた猫は抱っこが好きな子が多いですが、成長してから保護された猫は抱っこが苦手な子も多いです。

抱っこを好きな猫に育てるには

抱っこが苦手な猫でも、上手に教えてあげることで抱っこが好きになる可能性もあります。そのためには、飼い主さんとの信頼関係が大事です。嫌いな人や苦手な人に抱っこしてもらうのは、抱っこ好きな猫であっても嫌がることがあります。嫌がる猫を強引に抱き上げるなどはせず、猫の気持ちを大事にしながら信頼関係を築き、少しずつ抱っこの気持ちよさを教えてあげることが大事です。 また、猫が抱っこしてもらいたがっているタイミングを見極めて抱っこすることも大事です。飼い主さんに体や顔をこすりつけてくるときや、目の前でゴロンと横になってなでなでをおねだりしてくるときは、飼い主さんに甘えたいとき。このようなときは抱っこを受け入れてもらいやすいです。また、あたたかい場所を求める冬季も、飼い主さんに抱っこされるとあたたかくて気持ちよいと教えてあげるチャンスです

猫が抱っこを嫌がる理由

本能的に抱っこが苦手という以外にも、猫が抱っこを嫌がる理由がいくつかあります。

過去の経験から嫌がる

過去に抱っこをされているときに嫌な思いをしたことがある場合、例えば、抱っこされているときに痛い思いをした、大きな音がしてびっくりした、抑えられて逃げたいのに逃げられなかったなどの経験で抱っこ嫌いになってしまうことがあります。

抱っこされるタイミングや環境でない

猫が抱っこをされたいと思うのは、ゆったりのんびりしたいとき。何かに興味を持っているときや夢中になっているときや自由に動き回りたいときには、抱っこで束縛されることは好みません。毛づくろいに一生懸命になっているときに抱っこされることを好まない猫も多いようです。

飼い主さんの抱っこの仕方

猫が抱っこを嫌がるのは、抱き上げ方が不安定だったり、力が入りすぎていたりすることが理由かもしれません。無理に抱っこされるのが苦手な子もいます。 また、においに敏感な猫は、飼い主さんの香水や柔軟剤の香りが気になって抱っこを避けることもあるようです。

ケガや病気の痛みがある 

ケガや病気が原因で体に痛みや不快感があり、触られたり拘束されるのを嫌がることもあります。いつもは抱っこが大好きなのに急に嫌がるようになった場合などは要注意です。

猫が抱っこに慣れるための準備

リラックスできる環境を整える

猫が抱っこされたいと思うのは、ゆったりのんびりくつろいでいるときです。猫がリラックスできる環境を整えてあげましょう。静かで落ち着いた場所を快適な温度に保ち、飼い主さん自身もリラックスできているときに抱っこするようにしましょう。

まずはなでることに慣れさせる

人間との接触に慣れていない猫をいきなり抱っこするのは難しいです。まずは人間の手に触れられたり、なでられたりするのが気持ちよいことだと教えてあげましょう。猫がなでられて喜ぶポイントは、首の後ろから背中にかけて、肩、あごの下、頭など、自分で舐めることができない場所のことが多いです。猫がリラックスしているときになでて、喜ぶポイントを見つけてあげましょう。

膝の上でくつろぐことを習慣に

普段から飼い主さんの膝の上で遊んであげたり、ごほうびのおやつをあげるなど、膝の上でくつろぐことに慣れさせておくと抱っこがスムーズになります。

猫を正しく抱っこする方法・ポイント

声をかけなでながらリラックスさせる

急に猫に触ったり持ち上げたりするとびっくりしてしまうこともあります。まず猫のそばに腰をおろし、「抱っこしようね」など優しく声をかけ、なでてみて反応を確認しましょう。リラックスしていれば抱っこのチャンス。声をかけたときに飼い主から離れていったり、触ったときに緊張や怒りのサインが見られたりするときは、抱っこにステップアップするのは控えましょう。

両脇に片手を入れて上半身を持ち上げる

猫の隣に腰を下ろしたまま、両脇に片手を入れて、ゆっくり上半身を持ち上げます。後足がぶらぶらすると不安になるので、後足がついている状態にしておきます。

片方の手でお尻を支える

片手で猫の上半身を支えながらもう片方の手でお尻を支えて持ち上げます。高く持ち上げると不安になったり、高い位置から飛びおりようとしてケガをする恐れもあります。はじめは腰を下ろしたまま低い位置で抱っこするようにしましょう。

体を密着させて安定させる

飼い主さんの胴体と腕で猫の体全体を包み込むように抱っこし、体を密着させて安定させます。支えが不安定だと猫が不安になり抱っこを嫌がるので、しっかり安定させましょう。

こんな抱っこはNG!

いきなり持ち上げる

抱っこ好きな猫でも、不意に持ち上げられるとびっくりしてしまいます。

嫌がる猫を無理に抱っこする

気分や体調によって触られたくない時や抱っこされたくない時もあります。嫌がっているのに無理に抱っこをすると、飼い主さんとの関係が悪くなるだけでなく、抱っこや触られることがトラウマになって、それ以降させてくれなくなってしまうことがあります。

逃げようとしたり、唸ったり、耳を伏せてびくびくするなどの行動は、嫌がっているサインです。タイミングを改めるか、なでる・手からおやつを与えるなどのスキンシップに馴らすところからはじめてください。

猫が嫌がる持ち上げ方で抱っこする

猫を抱っこするときに、足を引っ張る、首根っこをつかむ、お腹を圧迫するなどのような持ち上げ方をすると、猫は痛みや不快感を覚え、抱っこは痛いもの、つらいものと感じて抱っこ嫌いになってしまうことがあります。

不安定な抱っこ

猫の後足がぶらぶらして不安定な抱っこや、きちんと支えられずにずり落ちそうな抱っこは嫌がる猫が多いです。

仰向けで抱っこする

お腹は猫の急所。多くの猫はお腹を上にさらした状態で抱っこされることを嫌がります。ただし、安心できる場所で、飼い主さんとの信頼関係ができていると、あおむけでも気にせず抱っこされる猫も多いです。

抱っこが苦手な猫への接し方

抱っこが苦手な猫には、まずは人に触られるのは気持ちがよいということを教えてあげましょう。猫が近づいてきたタイミングで優しく声をかけながら、猫が喜ぶポイントを探してなでてあげます。なでた後に大好きなおやつなどをご褒美であげてもよいでしょう。このとき、猫が嫌がったらすぐにやめることが大事です。飼い主さんになでられるのは気持ちの良いこと、うれしいこととわかると、自分から近づいてくることが増え、抱っこを受け入れてくれる可能性が高くなります。

なでられるようになったら、今度は座って飼い主さんの膝の上で猫が自由に動けるようにして、なでたり、ご褒美をあげたりしてみましょう。飼い主さんの膝の上が好きになって、自分から乗ってくるようになれば抱っこがしやすくなります。 飼い主さんが努力をしても、どうしても抱っこが苦手な猫も中にはいます。そのような猫には無理強いせず、おやつをあげたり、一緒に猫じゃらしで遊んであげたりするなど、別の方法でコミュニケーションを深めるようにしましょう。猫のペースに合わせながら付き合っていくと、少しずつ飼い主さんに抱っこされてもよいかなという気持ちになってくれるかもしれません。

まとめ

抱っこは猫にとっても飼い主さんにとっても気持ちのよいもの。上手な抱っこで愛猫に抱っこの気持ちよさを知ってもらい、至福の時間を共有できたらよいですね。

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監修獣医師

岸田絵里子

岸田絵里子

2000年北海道大学獣医学部卒。卒業後、札幌と千葉の動物病院で小動物臨床に携わり、2011年よりアニコムの電話健康相談業務、「どうぶつ病気大百科」の原稿執筆を担当してきました。電話相談でたくさんの飼い主さんとお話させていただく中で、病気を予防すること、治すこと、だけではなく、「病気と上手につきあっていくこと」の大切さを実感しました。病気を抱えるペットをケアする飼い主さんの心の支えになれる獣医師を目指して日々勉強中です。