うさぎが出てくる有名なお話といえば「うさぎと亀」。誰もが一度は聞いたことがある寓話です。 『うさぎと亀』が伝えたい教訓とは一体どんなことなのでしょうか?

お話の中ではうさぎが負けてしまいますが、もし本当に勝負をしたら、どちらが勝つのでしょうか。そんな仮説をもとに、うさぎと亀の生態についてお伝えします。また、実際にうさぎと亀を一緒に飼うことができるについても説明します。

『うさぎと亀』が伝えたい教訓とは?

ご存じの通り、うさぎと亀は山の頂上を目指して競争をしますが、途中でうさぎが居眠りをしたことで、亀が先にゴールし勝利をおさめるというお話です。

この寓話から学ぶことができる教訓は次のようなことが考えられます。

自信過剰で物事に取り組んではいけないということ

うさぎは、明らかに自分よりも走るのが遅い亀との競争を前に、「きっと自分は勝つだろう。」と自信過剰になってしまった結果、途中で居眠りをし、競争に負けてしまいます。

「どれだけ自分の能力に自信があっても、油断せずに物事に取り組むことが重要」ということが教訓となっています。

コツコツと真面目に努力すること

亀は、自分よりも足が速いうさぎとの競争であってもコツコツと真面目に努力をして勝利を手にいれました。「相手が誰であろうと、真面目に努力しながら取り組むことで、いつか大きな成果を得られる」ということが教訓となっています。

競争相手ではなく、ゴールを見ること

うさぎは競争相手である亀ばかりを見て、最終的に競争に負けてしまいます。亀が競争に勝てたのは、相手であるうさぎではなくゴールを見ていたから。

「目先のものだけを見るのではなく、自分がなにを目指しているのかを考えることが重要」という教訓です。

『うさぎと亀』には、他にもさまざまな教訓があるといわれています。改めて物語を読み返してみると、新たな教訓が見つかるかもしれませんね。

そもそも、うさぎは長距離を走れない動物!?

「うさぎと亀」のお話では、うさぎと亀が山の頂上を目指し、走って競争をします。うさぎは亀よりずっと速く走って大差ができたので、油断して途中で休憩し眠ってしまいます。うさぎが目を覚ますと、休まず走り続けた亀がゴールの手前にいて、もう取り返しがつかず、うさぎは負けてしまいました。ここから得られる教訓は、能力があっても油断をすると物事を逃してしまうこと。また、能力が低くても努力を続ければ強い相手に勝てる、などです。

お話の中では、うさぎは高慢な気持ちから途中で寝たことになっていますが、そもそもうさぎは長距離を走ることができません。なぜなら、うさぎは汗をかくことができず、走っていると体温がすぐに上昇してしまうからです。走っているときに大きな耳を風にあてて放熱する仕組みはありますが、それでも長距離には耐えられません。ペットのうさぎも楽しい気持ちからダッシュで走り回ることがありますが、それも長くは続かず、走ったあとは横になって休んでいます。寓話の中でも、現実でも、うさぎが途中で休むのは仕方がないことといえます。

寓話のモデルはどんな種類?

うさぎにも亀にもいろいろな種類があります。お話のモデルとなったのはどんなうさぎと亀なのでしょうか。「うさぎと亀」の英語のタイトルは「The Hare and the Tortoise」。直訳すると「野うさぎとリクガメ」です。山の頂上まで競争するのですから、野生のうさぎとリクガメであることは想像に難くありません。

「うさぎと亀」はイソップ寓話のお話です。イソップ寓話は紀元前6世紀ごろ、古代ギリシャでイソップによってまとめられました。舞台がギリシャであることから、リクガメはヘルマンリクガメかマルギナータリクガメ(フチゾリリクガメ)がモデルではないかといわれています。どちらも日本でも飼育されている種類です。野生のうさぎも、カイウサギの祖先であるアナウサギのほかにノウサギ、アカウサギなどいくつか種類があります。現代の分布で考えると、ギリシャに生息しているのはノウサギ属のヤブノウサギです。アナウサギはスペインやポルトガル、モロッコやアルジェリア北部の原産で、ギリシャは生息地に含まれていません。

本当に競争したらどちらが勝つ?

うさぎと亀が走っている画像

では、もし野生のうさぎとリクガメが競争したらどちらが勝つのでしょうか?もちろん、うさぎと亀の速度は種類や個体によっても異なりますが、わかっている範囲で考えてみましょう。

ノウサギの最高速度は時速70~80㎞くらいといわれています。うさぎがこの速度で走れるのはほんの一瞬です。1分でも辛いかもしれませんが、頑張ってスタートから1分間、時速70㎞で走ったとします。そして亀と大差をあけて昼寝をします。うさぎが眠るのは夜と昼間で、朝と夕方に活発に動きます。日中に競争したとしたら、うさぎはとても眠いでしょう。物語の中では、うさぎは長い間ぐっすりと眠ってしまったようですが、うさぎの生態を考えると、長い時間眠っていたとは考えにくいのです。なぜならうさぎの1回の睡眠時間は数分~数10分程度。野生では天敵に狙われる立場ですから、たとえ疲れていたとしても長く眠り続けることはありません。飼育下のうさぎも、日中は15分くらい寝て、起きたら毛づくろいをしたり牧草を食べたりして、また15分くらい眠る、というパターンで寝起きを繰返す子が多く見られます。

物語で出てくるうさぎが、25分間寝たと仮定しましょう。うさぎはスタートから1分走り、4分くらい横になって息を整え、それから25分眠ったとします。加速や減速を省いて算数のように考えると、30分後にスタート地点からおよそ1.17㎞の地点にいることになります。

亀の方はどうでしょうか。リクガメの平均速度ははっきりとはわかりませんが、ギネス認定されているリクガメの最高速度は時速965m。どのくらい走り続けられるのかも不明ですが、コツコツ走り続けたというお話ですから、この速度で30分走り続けたとしましょう。それでも走った距離は482.5m。これではうさぎが圧勝してしまいます。

仮に、うさぎが最高速度の半分以下の時速30㎞で走ったとすると、30分後にいるのは500mの地点。差はかなり縮まりましたが、それでも亀が負けています。次にうさぎが最高速度の3分の1を下回る時速20㎞で走ったとすると、30分後にいるのは約333mの地点。ここで目を覚ましたとき、亀が482.5mの地点にいてゴール手前だったとすると、うさぎは遅れを取り戻すことができず、負けてしまうでしょう。

うさぎは普通に走っていれば、亀に勝てたのにも関わらず、亀が先にゴールするという物語の結末を迎えた「うさぎと亀」。

うさぎは、自分の能力を過信し、本気で走っていなかったのかもしれません。

(※あくまでも仮説です。)

うさぎと亀は一緒に飼える?

『うさぎと亀』の物語上では、一緒に競争をするよきライバル的な存在のうさぎと亀ですが、 実は一緒に飼うこともできます。犬や猫、フェレットなど狩りをする動物の存在は、相性によってはうさぎにストレスを与えてしまう場合もありますが、リクガメはその心配はありません。うさぎと亀を一緒に飼うときに注意すべきポイントをご紹介します。

うさぎと亀の写真

・うさぎの暮らすケージと亀が暮らす水槽の場所は離すこと

うさぎも亀も、基本的にどちらもケージまたは水槽の中で飼育します。

うさぎの活動は薄明薄暮性といって、朝方や夕方~夜にかけて活発に活動します。昼間は外敵から身を守るため、ケージの中で静かに寝て過ごすことが多いです。

一方リクガメは、紫外線で甲羅の成長を促す必要があるため、昼間に活発に活動する場合がほとんどです。活動的なリクガメは、甲羅を水槽にぶつけながら歩き回ることも多いので、昼間に静かに過ごしたいうさぎのケージからは、離した位置に置いてあげましょう。

・お散歩が大事

どちらも、定期的に室内を散歩させるスタイルが一般的であり、お散歩はうさぎにとっても、亀にとっても非常に大事です。

頻度については、うさぎは毎日なのに対して、リクガメは週に数回で大丈夫です。

同じタイミングでお散歩をさせた場合ですが、お互い草食動物同士なので、どちらかが興味を示し近寄っても危害を加える可能性は低いでしょう。うさぎは爪で攻撃することはほとんどありませんが、爪がリクガメの顔や柔らかい部分などに引っかかってしまうと、傷つけてしまうことがあるかもしれません。一方で、リクガメの顎も強く、人が噛まれると血がにじむこともあるほどの力があるため、うさぎをうっかり噛んでしまうことも可能性としてはあります。

何かトラブルがあった場合、すぐお互いを離すなどの対処ができるよう、目を離さないようにしましょう。散歩の時間や部屋を別にすれば、問題なく一緒に暮らしていけます。

(※基本的には別のケージで飼いましょう。相性がいい場合には少しずつ距離を近くしていくといいでしょう。)

うさぎと亀、飼育の共通点

うさぎと亀にはいくつか共通点もあります。

・どちらも草食動物

亀は種類によって食性が異なりますが、ペットとして人気のリクガメは草食が基本。小松菜やキャベツ、モロヘイヤ、チンゲンサイ、水菜などの野菜や野草を主食としています。大型のケヅメリクガメはチモシーを食べることも。ちなみにうさぎにもリクガメにも人気があるのはバナナ。甘いので喜んで食べるようです。ただバナナは糖分が多く含まれているので、うさぎにも亀にも与え過ぎは禁物です。

・爪切りが必要

うさぎも亀も飼育下では爪が自然に擦り減る機会が少なく、どうしても伸びていきます。爪の伸び過ぎは歩行障害など、さまざまなトラブルを起こします。また爪を伸びたままにしていると、爪の中の血管まで伸びてしまいます。ここまで伸び過ぎてしまうと、適切な長さにカットするときにどうしても出血させて痛い思いをさせてしまうことに。うさぎも亀も定期的な爪切りが必要です。自宅でのカットが難しい場合は、動物病院で切ってもらうことができます。

・名前を覚える

うさぎだけでなく、亀も自分の名前を覚えることがあります。毎日同じ人が食事を与えて、その際に根気強く名前を呼んでいると覚えてくれるそうです。ただ名前は覚えても、双方ともにマイペースな生き物。呼ばれていることがわかっていても、ほかに気になることがある、気分がのらないときには寄ってこないことも、共通しています。

実際にうさぎと亀を飼うアニコム社員にインタビュー!

―うさぎさんと亀さんの種類を教えてください!

ネザーランドドワーフの女の子と、イエローギリシャリクガメの男の子を一緒に飼っています。

―初めて2人が出会ったときはどんな様子でしたか?

最初はケージ越しに対面し様子を見ましたが、警戒しつつも怯えたり、パニックになったりすることもなかったので、少しずつ同じ空間で散歩させてみることにしました。

―ケンカなどはしなかったですか?

うさぎと亀の写真
▲うさぎのむぎちゃんと、亀のトアちゃん

幸いなことに、ふたりともとてもマイペースなので、ケンカをしたことや、ケガをしたこともありません。

―うさぎと亀を一緒に飼う上で気を付けることはありますか?

ふたりの生活リズムが異なるので、『音』に気を付けています。

日中のリクガメは甲羅を水槽にガンガンぶつけるので、かなり大きい音がします。その音でうさぎがストレスを感じないように気を付けています。

また、一緒に遊ばせるときは、目を離さずに見守っているようにしています。

―一緒に遊んだりはしますか?

期待していた一緒に遊ぶ姿は今のところ確認できませんが、ごはんを並べて置くと並んで食べてくれたりするので、その光景が愛らしく、とっても癒されます。

うさぎと亀の写真

まとめ

うさぎと亀は、寓話の教訓のために最適な競争相手でした。でも実際のうさぎと亀の生態から考えると「目標へのアプローチはそれぞれ異なる」と捉えることもできます。うさぎのようにダッシュして休みながらでも、亀のようにゆっくり走り続けても、ゴールはできるのです。それぞれの個性にあったやり方が大切、と考えるのもいいかもしれません。

うさぎと亀は一緒に飼育することもできます。ただ、どちらもマイペースなので、本当に競走をさせるのは難しいでしょう。

うさぎと亀の写真

うさぎと亀と一緒に暮らす場合には、どちらのペースにも合わせた飼い方をしてあげることをおすすめします。

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ライター

佐藤華奈子

佐藤華奈子

大学の動物系学科を卒業後、教育情報誌、ライフスタイル誌の編集プロダクション勤務を経て、2009年よりフリーランスの動物ライターに。「動物を飼うことは動物と暮らすこと」をテーマに活動中。おもにペット、動物園、牧場の動物関連の雑誌、書籍などで執筆。2011年よりうさぎ(ネザーランドドワーフ)と暮らしているうさぎ愛好家。