うさぎはどんな姿勢でもかわいいですが、仰向けはあまり見かけない分、ひと際かわいく見えることがあります。ふわふわのお腹の毛も、仰向けならではの足裏が見えているところも、キョトンとした表情と相まってとてもかわいらしく見えるものです。ですが、仰向け姿勢はうさぎにとって大きな負担で、危険と言われることも。ここではその理由と、仰向けが必要なケースやその対処法を解説します。
仰向けはうさぎにとって不自然な姿勢
うさぎが普通の姿勢でいるとき、背中は緩くカーブしています。床などに仰向けに寝かせると、接地面に沿って背中はまっすぐになりますが、これはうさぎにとって背中が反っている不自然な姿勢です。内臓も不自然な位置にきて圧迫され、うさぎにとって不快で苦しい体勢となります。
家庭にいるうさぎはリラックスしてお腹を見せて寝ることがあり、仰向けに近い姿勢で寝ていることもありますが、野生下ではまずお腹を見せることはありません。野生のうさぎが仰向けになるのは、天敵に捉えられる時だけです。そのため、人に捕まってお腹を上に向けられるという状況は、うさぎにとって命の危険を感じるほど怖いものです。単に体の構造的に負荷がかかるだけでなく、心理的なストレスも大きいことを覚えておきましょう。
こうした理由から、大半のうさぎは仰向けにされることを嫌がります。うさぎは骨が軽くて折れやすく、激しく動いただけで骨折をすることがあります。仰向けを嫌がって暴れることで骨折する危険もあるのです。
仰向けで動かなくなるのは極度のストレスから
うさぎを仰向けに寝かせると、固まったように動かなくなることがあります。これはわざとではなく本能的に「死んだふり」をしている状態。野生で捕食者に捕まったとき、この状態になると天敵はうさぎが死んだと思いこみ、安心して地面に置くことがあります。うさぎはその一瞬の隙をついて逃げ出すことができます。眠っているようにも見えるため、この状態で「リラックスしている」と言われたこともありましたが、おとなしくなるのは体が“硬直”しているから。金縛りのように、意識はあるものの動くことができない状態になっています。この状態は長くは続かず、同じ姿勢を保っていても自然に元に戻ります。その直後は心拍数と呼吸数が上がり、体がストレスの兆候を示すことがわかっています。過去にはうさぎがおとなしくなる方法として紹介され、うさぎと仲良くなる手段と考えられていたこともありましたが、今では決してそうではないことが明らかになっています。
うさぎを仰向けで抱っこしてはいけない?
上記の理由から、遊びやコミュニケーション、写真撮影などの目的でむやみにうさぎを仰向けにするのはやめましょう。そうはいっても、健康チェックやケア、病気の治療のために仰向けに抱っこすることが必要となる場合もあります。足裏の状態のチェック、お尻が汚れていないかの確認、爪切りや歯の治療などがその例です。必要な場合は仰向けに抱っこしますが、なるべく短時間で終わらせるよう心掛けましょう。また急に仰向け抱っこをされてうさぎがパニックにならないよう、定期的な歯の状態チェックを行いつつ、仰向け抱っこにも慣れてもらいましょう。
仰向け抱っこ練習のポイント
練習を始める時期は焦らず、うさぎとの信頼関係ができて普通の抱っこに充分慣れてからスタートします。遊びではなく健康チェックもかねて行い、短時間で元の姿勢に戻してください。最後におやつを与えて、仰向け抱っこのあとにごほうびがあることを覚えてもらうのもいいでしょう。慣れてもらうのは飼い主に仰向けに抱っこされるという状況であって、仰向けの姿勢そのものではありません。仰向け姿勢に慣れることで硬直しなくなったり、苦しくなくなったりするわけではないのです。健康管理のための練習でも、長い時間仰向けにすることはやめましょう。
またうさぎの負担を軽くするために、完全に水平ではなく、少し頭を起こした姿勢を心がけましょう。次のような抱き方をすると無理なくできます。
・飼い主が膝を立てて床に座り、その膝の上に仰向けにする
・飼い主の胸にうさぎの頭を当てて、飼い主のお腹に背中を沿わせて仰向けに抱っこする
・赤ちゃんを抱っこするように腕の中で仰向けにする
いずれの抱き方でも「お尻をしっかり支えること」、「首を後ろへ反らさないこと」で、嫌いな姿勢であっても多少は落ち着きます。
まとめ
仰向けはうさぎにとって不自然な体勢で、大きなストレスがかかるもの。どんなにかわいくても、むやみに仰向けにするのは絶対にやめましょう。ただ健康チェックやケア、治療のために仰向け抱っこが必要なシーンもあります。仰向けにすることで危険なのは、嫌がって暴れて骨折をすることです。必要なときスムーズにできるように、無理のない範囲で練習はしておきましょう。