
日本には山や畑のそばで見かける身近な野生のうさぎもいれば、ごく一部の地域でしか見られない希少なうさぎもいます。同じ野生のうさぎであっても、種類によって見た目も生態もさまざま。ここでは日本で会える可能性がある野生のうさぎの種類とその生態を紹介します。
日本にいる野生のうさぎ

日本の野生のうさぎには、本州・四国・九州にいるニホンウサギ、北海道にのみ生息するエゾユキウサギとエゾナキウサギ、奄美大島にのみ生息するアマミノクロウサギがいます。ペットのうさぎの祖先のアナウサギは本来、日本には生息していませんが、飼われていたうさぎが野生化してアナウサギとして住みついている場所もあります。
ニホンノウサギ
本州と四国、九州に広く生息するノウサギの仲間。体長は50㎝ほど。日本の固有種で、世界に生息するノウサギと比べると小柄で足やしっぽ、耳は短めです。ニホンノウサギはさらに「トウホクノウサギ」、「キュウシュウノウサギ」、「サドノウサギ」、「オキノウサギ」の4種に分けられることもあります。本州の雪が多い地域にトウホクノウサギ、雪が少ない地域と九州にキュウシュウノウサギが生息しています。この2種と区別できる特徴があるサドノウサギが新潟県の佐渡島に、オキノウサギが島根県の隠岐島に生息しています。このうちサドノウサギは環境省のレッドリストで準絶滅危惧種となっています。
ニホンノウサギは山や森林だけでなく、自然が豊かな海岸や農耕地、牧草地の周辺にも住んでいます。同じうさぎの仲間でも、アナウサギのように土の中に巣穴を掘ることはありません。草むらに簡単な巣を作って休み、山野をかけまわって生活しています。体の色は薄茶色ですが、トウホクノウサギやサドノウサギは冬には耳先の黒い部分を残して白い毛に生え変わります。この白い毛は雪の中で保護色になっています。
エゾユキウサギ
ユーラシア北部やサハリンに生息するユキウサギの1種で、北海道の平野から亜高山帯まで幅広く生息するうさぎの呼称です。体長約55cm。雪の上でも走りやすい大きな足が特徴です。ニホンノウサギと比べて体は少し大きめですが、耳としっぽは短めです。一部の二ホンノウサギと同様に夏は薄茶色、冬は白の毛に生え変わります。
エゾナキウサギ
北海道の中でも限られた山地にしか生息しない希少なうさぎ。一見ネズミのような見た目で、ユーラシア大陸北東部の高地に生息するキタナキウサギの1種です。大陸と日本が陸続きだった氷河期時代に渡って来たと考えられています。また、環境省のレッドリストで準絶滅危惧種に指定されています。
全長15〜20㎝の小さなうさぎで、山麓の岩場に住み、危険が迫ると「ナキウサギ」の名のとおり、大きな鳴き声で仲間に知らせます。秋になると越冬準備として草を貯めておく「貯食」を行うことでも知られています。その方法もユニークで、栄養価が高く乾きやすい草を選び、雨があたらない岩の下などに隠して干し草のような状態にして保管します。
アマミノクロウサギ
鹿児島県の奄美大島と徳之島にのみ生息する固有種です。体長は約40~50㎝。全身が黒い毛で覆われ、耳は短く「生きた化石」といわれるほど原始的なうさぎの姿形をしています。メキシコのメキシコウサギ、南アフリカのアカウサギと並んで世界で現存するもっとも古いタイプのうさぎです。
学術的にも重要な種で、その特殊性は古くから知られ、大正時代に動物で初めて国の天然記念物に指定されました。自然環境の破壊や外来種のマングース、ネコによる補食で数が激減。現在は保護事業により個体数が回復傾向にありますが、交通事故による死亡が多いことが問題視されています。環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類に指定されています。
アナウサギより簡単な巣穴を掘って生活し、危険が迫ると大きく「ピィー」と鳴いて仲間に知らせます。また独特の子育て方法でも知られています。お母さんうさぎは巣穴とは別の場所に穴を掘り、赤ちゃんを産んだら出入り口を空気穴だけ残して土で埋めてしまいます。そして2日おきに穴を訪れて埋めた場所を掘り、授乳をするとまた土で固めて立ち去ることを繰り返します。赤ちゃんをハブから守るための行動といわれています。
野生のうさぎの足あと

警戒心が強い動物なので、野生のうさぎと遭遇することは滅多にありません。ですが、登山やスキーなどで自然が多く残る場所を訪れた際、野生のうさぎの足あとを見つけられることも。ノウサギやユキウサギは走るとき、前足を左右交互についたあと、後足を両方地につけてジャンプをして進みます。その足あとは、前足をついた丸いあとが前後に2つ並び、その後ろに左右対称の後足のあとが残ります。足あとがはっきり残ってしまったとき、天敵に足あとをたどられることがないように、一度後ろに下がってから、横の草むらなどに飛び込むことがあります。これを「止め足」といい、止め足を行ったあとは急に足あとが途切れたように見えます。
このような足あとを見つけたら、静かに辺りを見渡してみてください。野生のうさぎを見つけられるかもしれません。もし見つけても、餌付けや触れることはせず、そっと観察するだけにしましょう。

まとめ
種類は多くありませんが、日本にもいくつか固有のうさぎがいます。中には自然環境の変化などで数を減らしているうさぎも。野生のうさぎや生息している環境を守るために、飼っているペットの放棄をしない、野生動物には触らない、餌を与えないなど、私たちがルールをきちんと守る必要があります。ときには厳しい自然に生きる野生のうさぎにも目を向けて、身近な自然環境のことや一人ひとりが環境のためにできることを考えてみるのもいいですね。