うさぎに、肉球はありません!

うさぎの足の裏には肉球がなく、毛で覆われているだけです。多くのどうぶつに肉球がある中で、とても珍しいパターンです。ここではなぜうさぎに肉球がないのか、もしうさぎの足裏に肉球のようなものを見つけたらどうすればいいのか説明します。

そもそも肉球とはどんなもの?

犬の肉球の画像

「ぷにぷに」していてつい触りたくなるどうぶつたちの肉球。ただかわいいだけでなく、大切な役割があります。

その主な役割は足を保護すること。肉球には毛はなく、厚い皮膚の下にコラーゲンと脂肪組織があります。そのため柔らかくクッション性があり、足裏を荒い地面から保護し、足場が悪いところでも足の負担を軽減します。また、滑り止めとしても機能します。こうして足を守ることで、走る速度を上げることにもつながっています。

そのほか汗をかく、温度や触覚を感知する感覚器になるなどさまざまな役割があり、どうぶつの種によって主な機能が異なります。例えば犬は早く走ることに特化していますが、猫は肉球によって足音を消し獲物に気づかれずに近づけるよう、音を消すことに特化しています。また、ねずみの肉球には小さな溝があり、それが滑り止めや吸盤として働いて垂直な壁も軽々とかけ上がることができます。

うさぎに肉球がない理由

草原にいるうさぎ

さまざまな機能がある肉球がどうしてうさぎにはないのでしょうか。それはやはり、うさぎにとって必要なかったからといえます。

野生のうさぎが住んでいるのは草原。岩場や急斜面など足場の悪い場所を走る機会はほとんどありません。草食動物であるうさぎは、足音を消して獲物に近づく必要もありません。またうさぎは骨を軽くして後足を発達させることで早く走れるように進化しました。肉球がなくても早く走れるだけでなく、肉球がないことで敵からすばやく逃げるための敏捷性を発達させた可能性もあるといわれています。

肉球がなくても、うさぎの足がほかのどうぶつより劣っているわけではありません。うさぎはその生息環境と必要な動き方に適応して進化したのです。野生のうさぎは危険が迫ったとき、足ダンをして巣穴にいる仲間に知らせます。もし肉球があったら、音が吸収されて危険を伝えることができなかったでしょう。

うさぎの足裏は被毛が守っている

抱っこされるうさぎ

うさぎは肉球がない代わりに厚い被毛で足裏を保護しています。後足の足裏を見ると、ブラシのように硬くて長めの毛が密集しているのがよくわかります。滑るような場所では爪を使って地面を捉えて走ります。

肉球だと思ったら、ソアホックの可能性大!

足裏を被毛で守っていても、加齢や肥満、飼育環境などでその毛が薄くなることがあります。すると足裏の皮膚に直接負担がかかり、ソアホックと呼ばれる皮膚炎を起こしやすくなります。

ソアホックは「飛節びらん」「足底潰瘍」とも呼ばれ、うさぎではよく見られる病気です。軽度の段階では足裏の脱毛した部分が赤く腫れたり、白いタコができたりします。その部分が細菌などに感染して悪化すると潰瘍や膿瘍ができることも。重症になるとうさぎは痛みのためにあまり動かなくなり、食欲も落ちてしまいます。重症化させないために早い段階で気づいて治療を始める必要があります。

このソアホックの前段階として、毛が薄くなった部分の皮膚がピンク色になることがあります。足裏全体に起こるのではなく、一部にできて丸い形になるため、肉球のように見えることもあります。もし足裏に肉球のようなものを見つけたら、飼育環境を見直すなどして悪化させないように気をつける必要があります。適切な予防と治療のために早めに動物病院を受診することも大切です。

足裏の毛が薄くなりやすい品種もあります。例えばレッキスやミニレッキス、ホーランドロップは遺伝的に足裏の毛が短いので、ほかの品種よりソアホックのリスクが高くなっています。またフレミッシュジャイアントのような大型の品種も体重によって足に負荷がかかるため、足裏の毛が薄くなりやすい状態です。これらの品種は特に注意が必要ですが、品種に関わらず高齢になってから毛が薄くなって発症することもあり、どんなうさぎでも気をつけて見てあげなくてはいけません。

まとめ

どうぶつの足裏には肉球があるのが一般的なので、イラストなどでうさぎの足裏に肉球が描かれていることもあります。そのためうさぎを飼っていても混同してしまいがちですが、うさぎに肉球はありません。もし足裏に肉球のようなものを見つけたら、ソアホックの可能性があるので悪化させないよう早めに対処してあげましょう。

ライター

佐藤華奈子

佐藤華奈子

大学の動物系学科を卒業後、教育情報誌、ライフスタイル誌の編集プロダクション勤務を経て、2009年よりフリーランスの動物ライターに。「動物を飼うことは動物と暮らすこと」をテーマに活動中。おもにペット、動物園、牧場の動物関連の雑誌、書籍などで執筆。2011年よりうさぎ(ネザーランドドワーフ)と暮らしているうさぎ愛好家。