猫に与えるミルクとして牛乳を思い浮かべる人もいると思います。

しかし、猫にとって牛乳は、嘔吐や下痢など体調を壊すことのある食品です。

今回は、猫と牛乳の関係について詳しく解説していきます。

牛乳がもたらす猫への影響

牛乳というと、私たち人間にとってとても身近な飲み物であり、栄養豊富な食材でもあります。特に成長期には学校給食としても出されるものです。

すると一見、猫にとっても牛乳は良いものだと考えてしまいますが、実はそうではありません。同じ「乳」であっても動物によって、含まれる成分が違うので、体に与える影響にも違いがあります。

牛乳は猫や犬の乳と比べると、乳糖(ラクトース)の量が多く、子に必要なたんぱく質や脂肪は牛乳よりも犬猫の乳のほうが2倍以上多いなど、乳の性質が異なります。

そのため、牛乳を猫に飲ますことは、猫にとって身体の不調を招く原因となってしまいます。

【関連サイト】
「猫の食事(4)<注意が必要な食材>」|みんなのどうぶつ病気大百科

お腹をこわす猫がいる

猫に牛乳を与えると、下痢をしてしまうというのはよく聞く話です。

これは、乳糖不耐症といわれる状態で、牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素「ラクターゼ」の活性が低いために起こります。

肉食動物の猫は、たんぱく質と脂肪をエネルギー源としています。そのため炭水化物などの糖の消化、代謝が苦手で、摂取しても活用しきれずに尿として排出されてしまいます。

猫の母乳にも少量の乳糖が含まれているので、まったく消化できないというわけではありませんが、離乳した猫に牛乳を与えて下痢をしてしまうのは、体に適してないものだからといえるでしょう。

肥満になりやすい

牛乳には脂肪も含まれているので、哺乳期を過ぎた猫に頻繁に飲ませると肥満につながる可能性もあります。

心臓に負担がかかることも

牛乳にはたんぱく質、脂質の他に、カルシウムやナトリウム、マグネシウムなどの栄養素が含まれています。

それらは、バランス良く摂取することで体に良い働きをしますが、過剰摂取や栄養バランスが崩れることで病気を助長させてしまうこともあります。

カルシウムは「高カルシウム血症」の原因になる可能性がありますし、尿石症の猫はマグネシウムの摂取を抑える必要があるので、むやみに牛乳を与えることはやめましょう。

また、牛乳に含まれるナトリウムは、高血圧の猫は特に注意が必要です。

ナトリウムを多く取ると心臓に負担をかけるだけでなく、腎臓障害などさまざまな影響があります。

【関連リンク】
尿石症を防ぐフードや水分摂取や排泄環境の工夫など/犬・猫|みんなのどうぶつ病気大百科

腎不全<猫>|みんなのどうぶつ病気大百科

乳製品アレルギーの猫もいる

本来、猫が口にすることがないものを与えるときには、食物アレルギーも考慮する必要があります。

食物アレルギーの反応として見られるのは、嘔吐や下痢、皮膚のかゆみなどが挙げられます。

しかし、牛乳を与えて下痢をしてしまうというのは、食物アレルギーというよりも、前述したように乳糖不耐症が原因だと考えられます。

食物不耐症であれば、皮膚症状はあまり見られないので、皮膚症状があるかないかを一つ判断の材料にしてもいいでしょう。

また、ヨーグルトやチーズは牛乳と比べ乳糖が少ないので、猫に与えても乳糖不耐症の反応は起こりにくいです。嘔吐や下痢、皮膚のかゆみが現れた場合には乳製品のアレルギーの可能性が高いので、注意が必要です。

食物アレルギーが心配される場合には、乳製品以外の食物アレルギーも持っている可能性があります。獣医さんと相談して検査してもらうと安心です。

猫もOK!猫向け専用ミルクと正しい与え方

猫にミルクを与える場合には、市販されている猫向け専用のミルクを与えるようにしましょう。

猫に与えられるミルクも、パックのタイプや粉末となっているもの、プラスで栄養成分が添加されているものなど種類があります。

猫の年齢や、用途に合わせて適切なミルクを用意してあげましょう。

ペット用の牛乳

ペット用として市販されている牛乳は、問題となる乳糖がゼロであることが多く、成猫や老猫にも安心して与えることができます。

とはいえ、与えすぎには注意しなければいけません。初めて与えるときには少量からはじめ、おしっこやうんちの状態、体調などを見ながら商品に記載されている給餌量を目安に、少しずつ増やすようにしましょう。

ミルクの温度も大切

パックで売られている牛乳は常温で売られていることがほとんどなので、最初に与えるときはそのままの温度でも問題ありません。しかし、一度開封したペット用の牛乳は、冷蔵庫での保管となるため、2回目以降与える場合には温度に注意が必要です。

冷蔵庫から出してすぐの牛乳は猫にとって冷たすぎるので、電子レンジで人肌に温めるか、熱すぎないお湯で割って与えるようにしましょう。

中には、パウダータイプのミルクもありますが、同じように水またはお湯で溶いたものを人肌程度の温度にすることで、猫も飲みやすくなります。

ヤギミルク

ペット用に乳糖を調整された牛乳の他にも、ヤギミルクを変わりに与えることも可能です。

ヤギミルクはもともと牛乳と比べると乳糖が少ないので、消化の苦手な猫にも飲ませることができます。

猫に牛乳を与える効果

猫に牛乳を直接与えることは、猫にとって負担となりますが、ペット用の牛乳やヤギミルクは上手に使えば良い効果をもたらしてくれます。

牛乳しか飲まない猫への水分補給

猫はもともと、狩った獲物をすぐに食べることで、獲物に含まれる水分を摂取していたので、あまり意識して水を飲むという習性がありません。

しかし、ドライフードを普段食べている猫は、食事から水分を摂取することができないので飲水をするのですが、それでも水を飲む量が少なく、尿石症になる猫も少なくありません。

水を飲む回数や量が少ない猫には、ペット用のミルクを食事のときに一緒に与えたり、おやつとして飲ませることで、しっかりと水分補給ができるようになります。

また、夏場は熱中症対策としても活用できます。

食欲がないときの栄養補給

環境の変化によって食欲がないときや、老猫などの栄養補給としてもペット用ミルクは活用できます。

その場合には、乳糖が低いというだけでなく脂質やたんぱく質など栄養価の高いものを選ぶとより良いでしょう。

しかし、原因がわからず、ただ食欲がないからと代わりにペット用ミルクを与えるのはやめましょう。

食欲がないというのは、身体の不調によるものなので安易にミルクを与えると、反って症状を悪化させてしまう恐れもあります。まずは、動物病院に連絡をしてペット用のミルクを与えてもいいか相談してみましょう。

猫のおやつ代わりに

ペット用のミルクは、匂いも味も好まれやすいので、おやつとして与えることも可能です!

水分摂取の少ない猫には、おやつとしてこまめに飲ませてあげるのもおすすめです。

まとめ

猫と牛乳の関係は、思っていたものと違うものだったのではないでしょうか。

私たちにとってミルクといえば牛乳で、小さい頃から飲んで育っているので、「牛乳を飲ませておけばOK」と考えてしまいがちですが、動物として種が違えば身体の性質も異なるということです。

猫にミルクを与えるときは、猫用のものやペット用、ヤギミルクなどを用意してあげましょう。

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監修獣医師

長根あかり

長根あかり

大学で動物行動学やアニマルセラピーを学ぶ。保護犬を家族に迎えたこと、野良猫の保護をした経験から、「保護犬・猫について」や「正しい飼い方」の情報発信の必要性を感じ、大学卒業後はペットメディアで勤務。その後はフリーライターとして執筆活動しながら保護シェルターで働き現状を知る。現在は、動物ライターとしての執筆活動のほか、ドッグトレーナーとして飼い主さんとワンちゃんの暮らしが良くなるように、アドバイスやトレーニングを行っている。