猫という動物は、今ではとても身近すぎて、ルーツなどを考える機会は少ないかもしれません。今回は、猫の祖先や歴史についてご紹介します。
イエネコのルーツはリビアヤマネコ
ネコ科の動物にはさまざまな種類がいますが、みなさんが「猫」と聞いて一般的にイメージする動物は、一番よく目にする小型の猫だと思います。その愛らしさでたくさんの人を虜にしている猫は、動物分類学において「イエネコ」と呼ばれています。哺乳類・食肉目・ネコ亜目・ネコ科・ネコ属に分類される、これはリビアヤマネコが家畜化されたものです。学名でFelis silvestris catus(フェリス・シルヴェストリス・カトゥス)と表記されます。
リビアヤマネコとは
すべての生き物は進化を経て現在の姿形になっていて、イエネコも例外ではありません。イエネコの先祖はリビアヤマネコとされていて、このリビアヤマネコを知ることで、身近にいる猫についてもより深く理解することができます。
リビアヤマネコは英語で「African Wildcat」と呼ばれるため、日本語で別名アフリカヤマネコと言われることもあります。生息地が砂漠やサバンナといった暑く乾燥した地域であることからも、イエネコが水や寒さが苦手な理由がわかります。
リビアヤマネコの大きさは、体長50~60cmで、しっぽの長さ20~40cm、体重は5㎏程度。イエネコにもいろいろな大きさの猫がいますが、多くのイエネコと同じくらいの体格です。色は、砂漠で同化しそうな色合いで、柄なども相対的に見るとキジトラ猫に似ています。
人懐っこいリビアヤマネコ
リビアヤマネコとイエネコの共通点は、性格にも見られます。英語ではワイルド・キャットと呼ばれているものの、その性格はネコ科の動物の中ではとても人懐っこいのが特徴です。はじめから人間と仲良く暮らす野生生物はいませんが、リビアヤマネコは比較的警戒心が薄い性格で、子猫の頃から人間に育てられると、家族のような絆を築くことができます。ただし、ペットとして流通する種類の猫ではないので、イエネコ同様に飼えるかどうかという問いへの答えは、「ノー」です。
また、リビアヤマネコは、海外の一部の動物園では展示しているところもあるようですが、日本ではお目にかかることができない猫でもあります。
猫が日本に来たのはいつ?
砂漠地帯に生息するリビアヤマネコがルーツだとすると、エジプトからヨーロッパ、アジアへと広がり、その後中国から日本へやってきたと考えるのが自然ではあります。「中国から仏教が伝えられた際に、船の中で大切な経文をネズミの害から守るために猫を船に乗せた」という記述が確認されている(※)ことからも、6世紀頃にやってきたと考えられていました。
しかし2011年、長崎県壱岐市にある弥生時代のカラカミ遺跡から、イエネコの化石とされるものが発見されました。弥生時代となると時代は紀元前1世紀までさかのぼるため、仏教が伝えられるよりもはるか昔から、すでにイエネコがいたことになります。ところが、この遺跡以外からはイエネコの化石が確認されていないので、あまり繁殖しなかったことが伺えます。
(※)江戸時代の偽作者・田宮仲信が記した『具雑俎(ぐざっそ)』に記述があると言われている。
猫好きで知られる平安時代の宇多天皇
平安時代には、貴族の間で猫を飼うことが密かに流行っていたようです。特に887年に天皇に即位した宇多天皇は、無類の猫好きで知られています。それは、宇多天皇が書いた日記『寛平御記』(かんぺいぎょき)に綴られた溺愛ぶりから伺い知ることができます。宇多天皇は、父親から譲り受けた黒猫を可愛がっていて、その黒猫の毛の黒さを「非常に深い黒味がある」と、特別な黒だと書いています。また、目がキラキラしている、ネズミを捕る術が他の猫より優れているなど、本当に好きでよく観察していたことがわかります。
猫は江戸時代から大人気
現在の日本における猫人気は海外と比較してもかなり高く、経済にも影響を与えるほどです。ただ、過去を振り返るとこの人気は今に始まったことではないようです。とくに江戸時代後期には、歌舞伎や浮世絵などのモチーフとして使われ、「猫ブーム」旋風が巻き起こっていたといいます。
ネズミを捕るために重宝された猫
日本でも猫はネズミ捕りとして活躍してきた歴史がありますが、海外でもこれは同じです。ここまで世界中で熱心に可愛がられ人間の近くで生活するようになったのは、愛らしい見た目や性格のほかにも、ネズミによる被害を防ぐために使役されていたことが理由のひとつに挙げられます。
伝染病を媒介したり穀物を荒らすネズミを捕まえることは、感染拡大を予防することにつながったり、大切な食料を守るといった人間の命を守ることに直結する作業になります。さらに人間に危害を加えないとなれば、どの国でも重宝されてきたのは半ば必然にも感じます。
猫がネズミを捕まえるのはなぜ?
イエネコがネズミを追いかけるのは、先祖のリビアヤマネコが小鳥やネズミなどの小動物を獲物にしていたためです。その頃の名残で現在もイエネコは、小さくてすばしっこく動くものを見ると、捕まえる習性を持っています。
一緒に暮らしている猫が、ヤモリやセミ、カナブンなどをくわえているのを見かけることがあるかもしれません。そんな姿を見たら、びっくりしてしまいますが、猫の習性なので、決して叱らないであげてくださいね。
まとめ
普段何気なく接している猫ですが、さまざまな歴史やルーツがあると思うと、その存在によりありがたみが増すような気がします。改めて猫の魅力に気づかされた方もいるのではないでしょうか?猫の習性なども考えながら、猫との豊かな生活を過ごしていきたいものですね。
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