複数の猫と暮らしている方は、猫同士が喧嘩をする姿を見たことがあるのではないでしょうか。その激しさに頭を悩ませる飼い主さんも少なくないと思います。今回は、そんな猫の喧嘩の止め方や、じゃれあいとの見極め方などをご紹介します。
なぜ喧嘩をするの?
私たち人間も喧嘩をするとかなりの体力を消耗しますが、それは猫たちにとっても同じです。好きで喧嘩をする猫はいないので、喧嘩にまで発展するいざこざには、それなりの理由があります。
・縄張り争い
ひとつは縄張り争い、つまりテリトリーを守るための喧嘩です。くつろいでリラックスするためのプライベート領域と、狩りをするためのハンティング領域がありますが、猫にとってはどちらも犯されたくないテリトリーです。一般的には、雄猫の生活圏は雌猫の生活圏よりも広いとされているのに加えて、雄猫の方が縄張り意識が強いため、雄猫同士の縄張り争いが雌猫よりも多い傾向にあります。
・雌猫をめぐる争い
次に発情期の雌猫をめぐる喧嘩です。動物の繁殖時期は春というイメージを持つ方も多いと思いますが、日本の猫は2~4月と6~8月がピークで、年に2~3回の発情期があります。時期によって発情するのは雌猫だけですが、発情している雌猫の鳴き声やフェロモンに誘発された雄猫が、限られたチャンス狙って喧嘩をします。去勢をした猫には基本見られない喧嘩ですが、去勢時期が遅かったり、ストレスが溜まっていたりすると、似たような喧嘩を起こすことがあります。
ほかには、近くにいる猫と性格が合わないことが原因であるケースも考えられます。縄張り争いには発展しない猫同士であっても、相性が悪かったり気の強い猫が和を乱すと喧嘩になります。
外猫と飼い猫とでは喧嘩の理由が違う?
猫は自分で守れるエリアを決めて、マーキングをしながら自分の縄張りであることを主張します。特に外猫の場合は定期的に巡回し、「スプレー」と呼ばれる特殊なおしっこを撒く姿がよく見られます。普通のおしっこと異なる点は、しっぽを高く上げて後ろに向かってスプレーのように排出するところです。これは外猫によくみられる行為で、家猫が行う割合は低くなります。こういった理由から、縄張り意識がより強い外猫の方がテリトリーをめぐった喧嘩をすることが多いです。
また家猫は食料が確保されているため、ハンティング領域を侵されることへの警戒心は外猫に比べ低いです。その分、常に同じ空間を共有しなければならない多頭飼いの家では、プライバシーの空間が守られにくい環境になっています。これによって感じるストレスが原因で喧嘩をしてしまうこともあるようです。
猫の喧嘩には決まりがある?
猫の世界の喧嘩には規則があり、勝ち負けもこのルールに則って決められます。
まず、身体が大きいというだけで有利なのが猫の喧嘩です。身体が大きいほど喧嘩が強いとされているので、華奢な体格の猫は喧嘩をする前に勝ち目がないと判断し、身を引きます。
喧嘩ができる相手だと認識すると、にらみ合いながらの威嚇が始まります。背中を丸め毛を逆立てながら、大きく荒々しい声をあげます。聞こえ方はさまざまですが、「ギャーギャー」という声や「シャー」と牙を見せる表情で激しく鳴くのが特徴です。この段階でどちらかの猫が引くことも。猫の喧嘩は、序盤から油断できません。
ここで決着がつかないと、身体を使った取っ組み合いの喧嘩が始まります。猫パンチをしたり噛みついたり、場合によっては生命に関わるケガを負うこともあります。猫の喧嘩は命がけです。
ほとんどの場合はどちらか一方の猫が降参して、その場から逃げ去ります。ケガを負って動けない場合は、攻撃をやめます。明らかに降参したことがわかると、勝った猫はそれ以上追いかけることをしないのもルールです。一度決まった勝敗の結果は永久に有効なので、再び喧嘩をすることはありません。
多頭飼育で喧嘩をしやすいケースは?
同じ屋根の下で猫を複数飼育するということは、自然には起きにくい環境が作り出されやすくなることでもあります。外猫なら喧嘩で縄張りから追い出されているはずの猫も、ひとつの家という限られた場所では他に行く所がなく、一緒に暮らし続けなければなりません。相性が悪くても共同生活を強いられると苦痛を感じるのは、猫も人間も同じです。そのため、一頭のみの場合や外猫では避けられるはずの喧嘩が勃発しやすくなります。
去勢の有無
去勢をすると、縄張り意識が弱くなる、攻撃性の緩和、性的欲求のストレスから解放されたりと、さまざまなメリットがあります。この3つは喧嘩の大きな原因なので、去勢をすることで自ずと喧嘩が減ることになります。さらに喧嘩をしないことで感染症リスクを下げられるといった病気予防の視点でもメリットがあるため、多頭飼いの場合は去勢をするのがおすすめです。また、喧嘩とは直接的な関係はありませんが、前立腺や精巣の病気の確率を下げることも期待できます。
去勢は一般的に生後6~9ヶ月ほどで手術をすることが多いようですが、それよりも早いケースや遅いケースもあります。具体的な時期については、獣医さんの指示のもと決めましょう。あまりに遅いと性格が変わりにくい場合もあるので、早めに相談に行くのをおすすめします。
年齢の差は関係ある?
あまり年の差が大きいと、体力が異なるため一緒に遊べなかったり、仲良くなるまでに時間がかかったりします。4〜5歳程度の年の差までが理想です。また先住猫は、生後6ヶ月程度の子猫なら受け入れやすいことも多いようです。違うタイミングで猫を迎える場合は、年齢も考慮するとその後のトラブルを少なくできるかもしれません。
喧嘩は止めたほうがいいの?
普段大きな問題なく生活している猫同士が喧嘩をしている場合は、止める必要はありません。喧嘩が絆を深くすることもあり、仲裁してしまうことで関係がこじれてしまうこともあるためです。また一度勝敗が決まれば再び喧嘩する可能性が低くなるので、飼い主さんはケガをしないように見届けるようにしましょう。
ただし、猫の歯や爪は鋭いため、特に未去勢の雄猫同士の喧嘩の場合は止めたほうがいいケースもあります。
本気の喧嘩かじゃれあいかを見極める
側から見ると喧嘩に見えても、実は猫たちはただじゃれあっているだけの場合はよくあります。遊び方が激しい猫たちをみていると心配になりますが、じゃれあっている猫を止めてしまうとせっかく遊んでいた猫たちの気分を害してしまいます。
喧嘩の場合は、唸り声をあげる、逆毛を立てるなどの威嚇行為が見られるのがじゃれあいとの相違点です。じゃれあいで噛みつくこともありますが、喧嘩の場合は首などを狙うので、行動をよく観察して見極めるようにしましょう。
エスカレートしそうだったら、おやつで気を引く
ケガを負ったり身の危険にさらされる前にどちらかがストップすることが多いですが、それでもじゃれあいがエスカレートしてケガをしてしまうことがあります。あまりに激しくなりそうであれば、ストレスの溜まらない方法でじゃれあいを止めましょう。おやつで気を引くなど猫が喜ぶことで中断させるのがおすすめです。
どうしても相性が合わない場合は部屋を別々にする
どんなに工夫をしても相性が悪い猫はいます。その場合は大事に至る前に、それぞれの部屋を決めたりしきりを作ったりして、猫同士が接触できないように生活スペースを分けましょう。
まとめ
猫の多頭飼いは賑やかで楽しいですが、自分のプライバシーを大切にする猫の特性上、喧嘩になってしまうことも多いです。しかし、事前に飼い主が知識を身につけておけば、未然に防げる喧嘩もあります。多頭飼育で問題を抱えている方やこれから新たに猫を迎えることを検討している方は、この機会に猫の喧嘩について、少し考えてみるのもよいでしょう。
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