りんごと2頭の子猫の画像

「1日1個リンゴを食べると医者いらず」とも言われ、健康によいとされるりんご。もしかして、猫の健康にもよいのかな…とも思いますが、猫は肉食のため、本来りんごは食べません。差し出しても、あまり興味を示さないことが多いのですが、今回は、自分が食べるときに猫が欲しそうにしているので少しお裾分けしてみようかなというときや、猫が食べてしまった!というときに知っておいていただきたいことをご紹介します。

りんごに含まれる成分

りんごには、ビタミンCなどのビタミン類や、ペクチンなどの食物繊維、ポリフェノールなどのファイトケミカル、主要ミネラルのひとつであるカリウムなど多くの栄養素が豊富に含まれていて、人では便秘の解消や、抗酸化作用による病気の予防に効果が期待できると言われています。猫にとっても、これらの栄養素は害になる成分ではありませんが、人と猫とでは消化機能や各栄養素の必要量や代謝が異なるため、同じ効果が期待できるというわけではありません。

カリウムについて

カリウムは、ナトリウムとともに細胞内外の水分量のバランス調整などのほか、神経刺激の伝達や心機能の維持などにも関わっている重要なミネラルです。
身体の中のカリウムが不足する低カリウム血症になると、麻痺や痙攣などを引き起こすことがあります。一方で、急性の高カリウム血症では、嘔吐、四肢のしびれや麻痺、不整脈などの症状を引き起こすことがあります。また、カリウムは尿量を増加させるため腎臓に負担をかけるおそれがあるので、日常的に摂りすぎないようにも気を付ける必要があります。

猫のカリウムの1日必要量は0.6%DM以上(乾物100g中0.6g以上、AAFCO(米国飼料検査官協会)基準)で、おおむね0.6%から1.0%が好ましいとされています。

りんごに含まれるカリウムの量は、100gあたり0.12g(120㎎)で、猫の1日の必要量を大幅に上回るものではありませんので、健康な猫に適量を食べさせる分には問題ないでしょう。ただし、療法食を食べているなどの食事制限がある場合や、腎臓や心臓の機能が低下している猫には、与えない方がよいでしょう。

なお、腎不全や糖尿病、腸炎などでは体の中のカリウムが出ていってしまい、カリウムを補充することが必要な場合があります。ただし、そういった場合には、りんごで補充するのではなく、獣医師に相談し専用の療法食や点滴などで補うようにしましょう。

猫にりんごを与えるときの注意点

猫は肉食動物です。人がりんごを食べていてもとくに欲しがることはなく、差し出しても興味を示さないという子がほとんどですが、猫に少しりんごをあげてみたい、という場合には、あげる量や部位、形状などに気を付けるようにしましょう。

りんごの与え方

猫は食べ物を食べるときに、歯で細かく噛み砕いたりすりつぶしたりすることができません。そのため、りんごはそのまま飲み込んでも問題ない程度に、薄く小さくカットしてあげてください。できればウェットフードのように舐めて食べられるように、すり下ろしてあげると、消化もしやすく食べやすいでしょう。

また、りんごの皮は消化しにくいため、むいてからあげるようにしましょう。種や芯は消化できないだけでなく、のどや腸に詰まらせてしまう恐れもあるので取り除いて。1回にあげる量は、決まった制限があるわけではありませんが、総量で小さじ1杯から1杯半程度に抑えましょう。

りんごの種に注意!

りんごをあげるときには、とくに、種を食べてしまうことがないように注意しましょう。種の大きさから考えると可能性は低いのですが、消化管に詰まってしまうという危険性があります。猫がグルーミングで飲み込んだ毛などが消化管の中に溜まった状態だと、消化されづらい種が毛と絡まって詰まる危険性が高くなります。

りんごの種には微量ながら「アミグダリン」という物質が含まれていて、これは消化管の中でシアン化水素(青酸配糖体)という毒性物質になることが知られています。そのため、アミグダリンを大量に摂取すると、最悪の場合、死に至ることも。しかし、りんごの種に含まれるアミグダリンは非常にわずかな量なので、特別な体質でない限りは、誤ってりんごの種を少量食べた程度では、毒素の影響が出ることは考えにくいでしょう。

猫がりんごの種を食べてしまったら

前述のとおり、猫がりんごの種を食べてしまったとしても、少しであれば、消化管に詰まらせてしまったり、アミグダリンから発生した毒素によって体調を崩してしまうといった心配はないと考えられます。

そのため、間違って種を食べてしまった場合でも、その量やその他に食べてしまったものの有無、身体の状態など総合的に判断して、とくに変わった様子が見られなければ、吐かせる処置などの緊急対応は行わずに様子をみることが一般的です。

ただし、少し時間がたってから、種などが消化管の途中で詰まってしまうこともありますので、数日の間は便に出ていないか確認するようにしましょう。また、食欲が減退したり、嘔吐があったり、元気がない場合には、早めに動物病院を受診するようにしましょう。
そして、体調を崩してしまった時に、いつ、何を、どのくらい食べたかがはっきりわかるように、念のためメモを残しておくようにしましょう。

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猫にりんごを与えすぎるとどうなる?

猫がりんごを食べる適量については個体差がありますが、猫は肉食動物であるため、りんごを食べたことで消化不良を起こし、嘔吐をしたり下痢をする可能性があります。りんごを食べた翌日の食欲や便の状態、継続して食べた場合の食欲や排便、排尿の様子などで気になる変化があった場合には、無理をせずにりんごをあげるのはやめたほうがよいでしょう。

猫にりんごを与えたほうがいい?

猫とりんごのイメージ画像

結論から言うと、あげる必要はありません。便秘の解消などを期待する場合にも、一般的には、可消化繊維分の多いドライフードや、水分量の多いフードを足したり、フードを変更したりするなど、りんご以外の方法を検討する方が調整しやすいです。

また、人や犬では抗酸化成分として知られ、キャットフードなどにも含まれていることがあるポリフェノールについても、猫が直接りんごを摂取した場合にどの程度の効果が期待できるのかはわかっていません。

無理に与えなくてもよい

前述の通り、猫にりんごをあげる必要性はありません。一般的なフードには、生活に十分な栄養素が含まれているからです。りんごは、玉ねぎやチョコレートのように、猫に絶対に与えてはいけない食べ物ではありませんが、りんごをあげたことで、消化不良を起こしたり、療法食を摂取している場合にはバランスを乱してしまったり、体質によってはアレルギーなどを起こしてしまう懸念もあります。

なお、りんごは、人では厚生労働省が表示を奨励しているアレルギー物質となりうる食材に該当します(特定原材料7品目は表示義務、それに準ずる20品目は表示推奨で、りんごは後者に該当します)。りんごは、猫でアレルギーを起こしやすいと言われている物質ではありませんが、あげるときは注意しましょう。

まとめ

繰り返しになりますが、猫は肉食動物で、食物繊維をうまく消化できません。
食べ物の好みも幼いうちに決まることが多いため、成猫になってからの手作り食の導入や療法食への切替えには苦労することも多く、いつもの食餌に飽きるということはそう多くはないでしょう。そのため、その子の体に合ったフードを続けている限りは、とくに野菜や果物などを積極的にあげる必要はありません。

なかには、クリームやスナック菓子、乾燥麺など脂肪分の多い食品に執着する子もいますし、稀に果物を好む子もいますが、基本のフード以外の食材をあげる場合には、猫にあげてよい食材かを確認した上で、適量にとどめるようにすることが望ましいでしょう。

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監修獣医師

三宅史

三宅史

酪農学園大学卒。札幌市内の動物病院でホームドクターとして勤務する傍ら、母校に眼科研究生として通い、眼科専門診療を学ぶ。東京都内の大学病院での勤務を経て、2023年にアニコム損害保険株式会社入社。 子どもの頃からどうぶつが大好きで、いぬやねこ、セキセイインコやかめと暮らした日々が宝物。写真は、実家で共に育った先代猫。「犬派?猫派?」と聞かれると、両方好き過ぎて、決められずに困ってしまう。