猫の耳垢にはどんな種類がある?正常な耳垢とは?
耳は、大きく外耳・中耳・内耳の3つの区間に分けられます。
耳介(耳のパタパタ)から鼓膜までの部分を外耳といい、耳の穴から鼓膜までつながる構造を外耳道といいます。
この外耳道の表面には、細かな耳毛や脂腺が多数存在します。この毛や、代謝された外耳道表面の皮膚片、そして腺からの分泌物が混じりあったものが耳垢です。
外耳道の表面の皮膚は、鼓膜から耳の穴、つまり外耳道の出口に向かって代謝され新しい皮膚となります。このため、新陳代謝が行われるにつれて、耳垢は自然と出口に運び出される仕組みになっています。これを、耳の自浄作用といいます。
したがって、病気がなく正常でも耳垢は存在し、耳穴まで出てきます。べたつきが強くなく、臭いが乏しい汚れ、そして軽く拭けば、数日間は汚れが認められないような耳垢は、生理的なものと考えられます。
では、どんな耳垢だと、気を付けるべきなのでしょうか?
病気が考えられる耳垢とは?

気を付けるべき耳垢の特徴としては、
① 臭いが強い
② 量が多い
③ 色が通常と異なる
という点が挙げられます。
外耳炎
外耳炎は、外耳道、つまり耳穴から鼓膜までの構造の炎症を指します。原因は多岐にわたりますが、猫では耳ダニの感染、猫種による耳の構造異常(耳道が狭い)、腫溜やポリープなどのできもの等が、原因として多い割合を占めます。
耳ダニはミミヒゼンダニというダニが原因になります。耳ダニは外耳道内に棲み付き、剥がれた皮膚などを食べて生活します。このダニの排泄物や死骸が混じるため、真っ黒な耳垢が出ることが特徴です。また刺激もあるため耳垢量はとても多くなり、痒みを伴います。感染の多くは母猫からなので、子猫など若い猫に多い病気ですが、愛猫が家の外に出る場合は、成猫でも野良猫からもらってくる可能性があります。
耳の構造異常がある場合は、自浄作用が働きにくくなり、耳垢が自然に外に出づらくなります。このため、耳道内の湿度や温度などの環境が悪化し、細菌感染やマラセチアという真菌の増殖が起こりやすくなります。細菌感染があると、耳垢は黄色~緑色のいわゆる膿が混ざったものとなり、臭いも強くなります。炎症が強い場合は痛みもあり、眠れなかったり、しきりと頭を振る、頭が傾く、という症状が出ることもあります。マラセチアの感染があると、耳垢は濃茶~黒色になるのが特徴です。量も多く、臭いも強くなります。こちらもひどくなると炎症を伴い、痛みがでます。
腫瘤やポリープなどのできものがある場合も、耳垢が外に出ようとするのを、物理的に妨げられるため、耳道内の環境が悪くなり、細菌感染やマラセチアの感染を伴うようになります。また、腫瘤自体からの出血なども起こるため、耳垢に血が混ざることもあります。
このほかにも、外耳炎はアレルギーや自己免疫疾患など、耳だけでなく全身性の病気のいち症状として現れることもあります。これらの原因では、直接は耳垢自体の変化は少ないですが、痒くて掻く刺激によって耳道が慢性的に腫れて狭くなり、自浄作用が妨げられるようになります。これにより、耳垢の量が多くなったり、感染が引き起こされることもあります。
中耳炎
中耳は、鼓膜より奥、頭寄りの構造で、鼓室という空気で満たされた小部屋を指します。鼓室の中には、耳小骨という3つに分かれた骨がつながって入っていて、鼓膜からの音の伝達や、中耳よりさらに奥の気圧や平衡感覚をつかさどる内耳へ、振動を伝える役割を担っています。
中耳は顔につながる一部の神経が露出、あるいは近接しているため、炎症を起こすとそれらの神経の障害が起こります。このため、縮瞳(しゅくどう)や瞬膜の突出、斜頸などの神経症状が出ることもあります。中耳炎は、鼓膜より中の炎症です。本来、中耳は耳の外とは鼓膜で隔てられているため、炎症が起きたり、そこから耳垢が出ることはありません。しかし、外耳炎がひどく、鼓膜も炎症を起こして穴が開いてしまい、そこから細菌が中耳に侵入して炎症を起こすことがあります。また猫においては、何らかの原因で無菌性の粘液が貯留し、炎症が起こることもあります。
耳垢が溜まりやすい猫はどんな猫?
猫は、犬ほど外耳炎の発症は多くありません。統計的にはヒマラヤンやペルシャでの発症が多いとされています。また、スコティッシュ・フォールドやアメリカン・カールなど、耳の形が特徴的な猫は、耳垢が溜まりやすいため、外耳炎の発症は多いです。
耳垢が溜まりすぎないようにするには?

耳垢が溜まりすぎないようにするには、定期的に耳のお手入れをしてあげることです。
しかし、耳はとてもデリケートな器官です。そのため、お手入れはやりすぎてもやらなさすぎても、よくありません。
1週間に1度くらい、耳が汚れていないか気にしてみましょう。
その際、特に汚れがついていなく、愛猫も特段気にしていなければ、耳を拭いたりする必要はありません。触られることで愛猫がかえって気にしてしまう場合もあります。
黄土色~茶色の汚れが、耳介や耳の穴周辺についている場合は、ぬるま湯で湿らせたガーゼやコットンで拭きましょう。
定期的に耳掃除をしてあげているのに維持できない
上述のような、週1回拭く、というお手入れでは耳が汚れすぎて維持できない、という状態は、耳になんらかの異常があると考えられます。この場合は、かかりつけの動物病院に相談するようにしましょう。
また、昨今は耳用の外用薬が、インターネットで簡単に買えるようになっています。しかし、飼い主さんの自己判断で薬を使うのはお勧めできません。安易に油性の外用薬を入れ続けると、それだけで汚れを引き寄せる原因となります。また、あやまった薬を使うと、逆に耳の状態の悪化を招くこともあります。まずは、かかりつけの動物病院に相談するようにしてください。
やってはいけない耳掃除の方法
耳介のしわの溝に汚れが入ってしまってよく取れない場合は、耳洗浄液や水で湿らせた綿棒で、やさしく拭き取りましょう。その際、耳が赤くなるほどこすったりするのはやめましょう。また、見えない範囲は触らない、深追いしないようにしましょう。
基本的に、耳には自浄作用があるため、汚れは外に外に出てこようとします。お手入れとしては、出てきた汚れを拭くだけで十分なはずです。奥まで綿棒などを入れると、汚れをかえって奥に押し込んでしまったり、鼓膜を傷つけてしまう可能性があります。
まとめ
耳には自浄作用という、汚れを自然に外に押し出す力があります。そのため、正常でも耳垢は出ます。
ただし、量が異常に多かったり、臭いが強い、また濃い茶色や黒い耳垢、あるいは緑色の耳垢が出る場合は、耳に異常がある可能性があります。
耳垢が溜まらないようにするには、定期的にお手入れすることが大事です。週に1回程度、耳洗浄液や水で湿らせたコットンで拭くようにしましょう。自宅でお手入れしていても、耳垢が多いと感じる場合は、かかりつけの動物病院に相談するようにしましょう。
