こちらを見つめる猫

猫の歯ぎしりを聞いたことはあるでしょうか?人では眠っている間にしていることがほとんどだと思いますが、猫の歯ぎしりはどうでしょう。今回は猫の歯ぎしりについて、歯ぎしりをするタイミングや病気との関連性などについてお話しします。

猫はどんな歯ぎしりをする?

人や犬の奥歯は一部臼状に平たくなっていて、食べ物をすりつぶせるような構造をしていますが、猫は元来肉食で、すべての歯が鋭くとがっています。また、互いの歯が重なり合わないようハサミ状に並んでいて、獲物の肉を噛み切りやすいようにできています。
歯ぎしりは通常奥歯同士が擦れ合ったり、当たったりすることで音が出ます。人では擦れ合うような「ギリギリ」や「カチカチ」というような音がするのが一般的ですが、猫の場合は食べ物がないのに、奥歯に何か挟まって嚙み砕こうとするように「シャリシャリ」や「ジャリジャリ」といった音を立てることが多いようです。初めて聞いた方は、「砂でも噛んでいるのかな?」と感じるかもしれません。

前足を嚙んでいる猫

歯ぎしりをするのはどんな時?

猫の歯ぎしりは、人のように寝ている間の無意識下に起こるのとは異なり、猫が起きている時、意識的に歯ぎしりをしている場合が多いようです。よく見られるタイミングとして、食事中や食後、グルーミングを行っている最中などの口や舌を動かしている時に見られます。口を動かす時、不快に感じる場合に歯ぎしりをすることが多いです。また、ストレスを受けたり嫌なことをされたタイミングで歯ぎしりをする猫もいます。

ちなみに、鳥や虫が飛んでいるのを窓越しで見たときに、猫が急に「にゃっにゃっ」としゃべるように鳴いたり、「カチカチカチ」と歯が当たる音を聞いたことがあるかもしれませんが、こちらは「クラッキング」と呼ばれる動作です。獲物を見つけた時の興奮や不安を表す行動といわれ、歯ぎしりとは異なります。

猫が歯ぎしりをしているときに考えられる病気は?

猫の歯ぎしりの原因は、癖や習慣などで起こるというよりは、何かしら口の中が不快に感じるような病的な理由が隠されている可能性があります。具体的にどういった病気が考えられるのか以下に紹介します。

口腔内の問題による歯ぎしり

・歯周病/歯炎
歯周病は猫にとても多い口腔内の病気です。猫は人や犬とは口腔内環境が異なり、虫歯にはなりませんが、3歳以上の猫の8割が歯周病に罹っていると言われています。食べかすなどが歯垢として歯に付着し、歯石が作られます。この歯石が歯肉に炎症を引き起こし、歯周病や歯肉炎になります。歯周病になると、歯肉や顎の骨の炎症により痛みや違和感を生じ、特に食事中は食べ物が炎症部位にあたり不快に感じて歯ぎしりをする頻度が増える可能性があります。

・口内炎
口内炎は歯周病よりもさらに広い範囲の口の粘膜に炎症が起こっている状態で、口の中を見ると粘膜が赤く腫れていたり、ひどい時は、潰瘍や出血が見られる場合もあります。歯周病よりも強い痛みを伴うことが多く、歯ぎしり以外にもヨダレや強い口臭、食事中に痛がるなどの症状も同時に現れます。

・口腔内の異物
突然歯ぎしりをし始めた、それと同時に口の中をやたら気にする場合は、口の中や奥歯に食べ物や髪の毛、もしくは誤飲してしまった異物が挟まっている可能性があります。猫は異物感を感じて歯ぎしりをする場合があるので、口の中をチェックしましょう。

・歯の動揺、生え変わり
上記のような歯の疾患によって歯がぐらついて抜けそうな状況や、生後半年前後の子猫では、生理的に歯の生え変わりのタイミングで違和感を覚えて歯ぎしりをすることがあります。

・歯並びのずれ(不正咬合)や顎のずれ
不正咬合があると、本来重ならないはずの上と下の歯が当たってしまい、歯ぎしりをする可能性があります。このケースの場合、日ごろから歯ぎしりをすることがあり、癖だと思っていたところが歯並びの問題であったということもあります。また、顎のずれは交通事故や高所からの落下事故などの顔の打撲で起こりやすく、このような事故を経験した猫は注意が必要です。

・口腔内の腫瘍
高齢になって歯ぎしりをするようになり、同時に急に口を気にするようになったり、口臭が気になるようになった場合は、口の中に腫瘍ができていることが原因の可能性があります。注意して口の中をチェックしてあげましょう。異常が見られたら、すぐに動物病院へ行って診てもらうことをおすすめします。

口腔内以外の問題による歯ぎしり

・慢性腎臓病
猫の慢性腎臓病では、尿中に排泄する必要がある尿毒素が血液中に溜まることで、口や胃が荒れてしまいやすくなります。また慢性腎臓病で起こりやすい脱水症状は、気持ち悪さや不快感を助長させます。これらが要因となって、特に進行した慢性腎臓病では、食事中などに歯ぎしりをすることがあります。

・食道炎や胃腸疾患
食道炎や胃腸疾患で食道や胃が荒れていたり、腸の動きが悪く吐き気や気持ち悪さが強い場合、食事を目の前にした時など、食欲不振と吐き気からくる不快感から口からヨダレを出しながら、同時に歯ぎしりをする場合があります。

・神経疾患
脳の異常で起こる猫のてんかん発作は、顔のケイレンが見られることが多く、口や顎をくちゃくちゃと咀嚼させるような動作が見られることがあります。同時に歯ぎしりが見られることがありますが、この場合、脳の発作と関連して起きているので、発作が落ち着くと歯ぎしりも治まる場合が多いです。

・ストレスや不安などの心理的問題
猫は、何か嫌なことや不満なことがある、もしくは気持ちを落ち着かせたい、気分転換をしたいといった心理的な理由で、歯ぎしりをする場合もあります。寝ている時に、不意に撫でられたり、嫌いな猫や人が来た時や見知らぬ場所に移動した時など、猫がストレスや不安を感じる時に歯ぎしりが起こるかどうか観察してみるとよいかもしれません。また、逆に飼い主に甘えてすり寄る時に、歯ぎしりをする猫もいるようですが、それは気持ちを落ち着かせるための行動かもしれません。

歯ぎしりは放っておいてもいい?

もし猫が歯ぎしりをしているのであれば、前述したようにさまざまな原因が考えられ、その中に治療した方が良い病気が隠れていることもあります。猫が何度か歯ぎしりをしていたら、放っておかずに、歯ぎしりの原因をできる限り追及するようにしましょう。

歯ぎしりをしていたら、どうしたらいい?

歯ぎしりの原因が何かを探るためには、猫の口の中を確認し、炎症や異物がないか、口を痛がらないか、口臭はないかなどをチェックしましょう。また、歯ぎしり以外の症状が見られていないか、最近の猫の体調に変化はないか振り返る必要があります。食欲はしっかりあるか、吐き気はないか、飲水量や尿量が増えていないか、意識の変化や発作のような仕草はなかったかなど、ちょっとした変化も病気のサインかもしれないので、よく観察するようにしましょう。また、どのような時に歯ぎしりをしているかを記録し、歯ぎしりをしている時の動画を撮って、動物病院で確認してもらうのもよい方法のひとつです。飼い主から見て体調に問題がないように見えたとしても、念のため口の中や猫の体調を動物病院で詳しく診てもらうとよいでしょう。歯ぎしりという猫の行動サインから、初期の病気を早期に発見し、治療を行うことができます。

不機嫌そうな顔の猫

まとめ

歯ぎしりにはいろいろな理由があることがお分かりいただけたでしょうか。甘えたり癖などでの歯ぎしりは安心して見ていられますが、病気が隠れているとなると、猫にとっては苦痛の歯ぎしりかも知れません。特に高齢になってから猫が歯ぎしりを始めた場合は注意が必要です。不安を取り除くためにも、一度動物病院を受診して異常がないかチェックしてもらいましょう。

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監修獣医師

溝口やよい

溝口やよい

日本獣医生命科学大学を卒業。2007年獣医師免許取得。埼玉県と東京都内の動物病院に勤務しながら大学で腫瘍の勉強をし、日本獣医がん学会腫瘍認定医2種取得。2016年より埼玉のワラビー動物病院に勤務。地域のホームドクターとして一次診療全般に従事。「ねこ医学会」に所属し、猫に優しく、より詳しい知識を育成する認定プログラム「CATvocate」を修了。毎年学会に参加し、猫が幸せに暮らせる勉強を続けている。2018年、長年連れ添った愛猫が闘病の末、天国へ旅立ち、現在猫ロス中。新たな出会いを待っている。