
うさぎを飼っていると、ふとしたきっかけで「もう1頭お迎えしたい」「複数で飼いたい」と思うこともあるでしょう。うさぎを多頭飼いするには、まずどんなリスクがあるのか知り、対策を考えたうえで慎重に進める必要があります。
うさぎの多頭飼いのリスク
うさぎは野生では群れで生活しますが、家庭で多頭飼いをするとなると、うさぎならではの問題があります。
ケンカ
うさぎはおとなしいイメージがありますが、実はケンカをすることが少なくありません。順位づけのため、縄張り争いのため、また食事を取り合うこともあり、ケンカの理由は多岐にわたります。一般に男の子同士はケンカが多くて激しく、女の子同士はケンカになっても激しくなることは少なく、男の子と女の子ではあまりケンカにならないといいます。とはいえ、相性の問題もあるので一概にこの組み合わせがおすすめとはいえません。逆にうさぎの個性や相性によっては、最初から仲良くなれるケースもあるでしょう。ただそれは大変稀なケースで、初対面のうさぎ同士は、まずケンカになるといっても過言ではありません。
「飼っているうさぎにお友達を」「うさぎがさびしくないように」という理由で検討しているのであれば、あまりおすすめはできません。仲良くなるまでにストレスを受ける段階があること、相性によってはずっと離して飼うことになることを踏まえて、新しい子をお迎えする必要があります。
うさぎの仲間がいなくても、飼い主が一緒に過ごす時間がとれれば、うさぎは孤独になることはありません。うさぎ以外のペットでも、いつも一緒にいられれば仲間のような存在になれます。野生のうさぎは家族ごとの群れで過ごしますが、食事や周囲の探索は単独行動が基本です。1頭だけで過ごす時間があっても、大きなストレスにはならないのです。こうしたうさぎの習性もふまえて検討しましょう。
スプレー行動の増加
仲間が増えると、自分の縄張りを主張するスプレー行動が増えることがあります。それまであまりスプレー行動をしなかった子も、必要になれば始める可能性があります。おしっこだけでなく、うんちをまき散らすことも。うさぎがお互いに慣れてくれば落ち着きますが、数週間程度は掃除の手間が増えるかもしれません。
妊娠
うさぎは妊娠率が高く、しかも多産なので未去勢・未避妊の男の子と女の子を一緒にすると、どんどん増えてしまいます。実際に飼い主が繁殖をコントロールできず、数が増えすぎて飼育崩壊になったケースもあります。女の子は健康上の問題もあるので、繁殖の計画がなければ避妊手術を受けた方がいいといわれています。
子うさぎの場合、男の子の睾丸が降りてくる生後6ヶ月ごろまでは、性別の区別がつけにくいものです。そのため性別が間違っていることがあります。一方で早い子では生後3ヶ月で性成熟を迎えます。正確な性別が分かる前に妊娠させてしまうことも考えられます。予期せぬ妊娠には充分な注意が必要です。
後を追うように亡くなることも
仲間のうさぎが先だったあと、残されたうさぎも追うように亡くなるケースがあります。突然仲間を失ったうさぎは、ショックから食欲がなくなり、そのまま体調を崩しがちです。大切なうさぎを1頭失うだけでも辛いことですが、2頭を相次いで失う可能性もあるのです。残されたうさぎに丁寧なケアが必要となることは心に留めておいてください。
多頭飼いの前に確認すること

本格的に多頭飼いを検討したいときは、まず次のことを確認しましょう。
飼育スペースがあるか
ケージは1頭につきひとつ必要です。へやんぽの場所は共用でも良いですが、時間を分ける場合はそれぞれに充分な時間を取れるように調整することになります。詳しくは下で説明しますが、対面させるときのために、どちらのうさぎのテリトリーにもならない、普段うさぎが行かない場所も確保しておきます。
飼育予算があるか
飼育にかかる費用は、うさぎの頭数が増えるごとに1頭分ずつ増えていきます。ペットシーツやトイレシートなどの消耗品はまとめ買いで少し費用を抑えられるかもしれません。ですがケージやその中にセットしておく給水器、ペレットの器、牧草入れ、トイレ、おもちゃはそれぞれに必要です。また、うさぎは食の好みが千差万別なので、ペレットや牧草の好みがうさぎによってわかれることも。この場合、それぞれに専用のペレットや牧草を用意することになります。健康診断などの医療費もそれぞれにかかります。頭数分の飼育費用を確保できるか、事前に確認しましょう。
避妊・去勢手術
避妊・去勢手術の推奨時期は、ともに生後6ヶ月~12ヶ月です。時期的な問題や体調面で手術が難しい場合は、同性にするか、手術を終えた子を迎えることになります。男の子同士の場合、未去勢ではケンカやスプレー行動が激しくなることを覚悟する必要があります。
今飼っているうさぎの健康
うさぎに病気があった場合、治療費やお世話の負担がかかります。新しい子を迎える前に、今飼っている子の健康診断を受けておくと安心です。
新しい子を迎えると、今飼っている子にストレスがかかるため、体調不良であった場合、状態が悪化する可能性もあると考えておきましょう。
お迎えするうさぎの健康
鼻水やくしゃみが出るパスツレラ感染症やノミ・ダニなど、うさぎ同士で移してしまう感染症や寄生虫があります。念のため対面の前に動物病院で健康診断を受け、必要があれば治療しておきましょう。
新しいうさぎの迎え方
新しいうさぎをお迎えしたら、しばらくケージの中だけで過ごしてもらいます。このときは環境に慣れてもらうことを優先し、お世話も最低限に。1週間ほど経って環境に慣れてきたら、先住のうさぎに会う段階に進みます。
最初のうさぎ同士の対面はもっとも気を使うシーンです。対面は先住のうさぎのテリトリーではない場所で行います。家の中で「中立」の場所を用意し、できればサークルで囲んで中で対面させます。慎重に様子を見て、激しいケンカになるようであればタオルで包んですぐに離してください。特に問題ないように見えても、急にケンカが始まることもあります。絶対に目を離さないようにしましょう。最初は少しの時間で切りあげて、充分慣れるまで少しずつ時間を伸ばしながら、中立の場所での対面を続けます。すぐ激しいケンカになってしまうようであれば、期間をあけてまた対面させることを繰り返します。お互いに慣れるまでに、数ヶ月かかる場合もあることを覚悟しておきましょう。
先住のうさぎのサポートも忘れずに。飼い主はつい新しい子に構ってしまいがちですが、意識して先住のうさぎを構うようにしてください。へやんぽやごはん、なでる順番などは、必ず先住のうさぎを優先します。元からいたうさぎを優先することで、うさぎたちに順位をしっかり示すことになります。またあまり新しいうさぎに注目し過ぎると、先住のうさぎはストレスから体調を崩してしまうことがあるので気をつけましょう。
新しいうさぎを迎えたあとは

うさぎの性格によっては、食事をめぐってケンカをすることがあります。一緒に過ごせるようになっても、食事はそれぞれのケージで別々にあげましょう。無事に一緒に過ごせるようになっても、些細なことでケンカが始まることも。2頭以上が一緒に過ごすときは気をつけて見守ってください。飼い主が留守にするときはそれぞれのケージで過ごしてもらいましょう。
まとめ
うさぎの多頭飼育は、単独で飼うよりもずっと気をつかうものです。それでももし仲良くなれば、単独では見られないうさぎ同士のコミュニケーションや寄り添う姿を見ることができるでしょう。結果的に別々で飼うことになっても、飼い主は個々のうさぎによるちがいを体験し、より深くうさぎを知ることができます。いずれにしても、うさぎ好き冥利に尽きるのが多頭飼育です。うさぎならではの問題には充分気をつけて検討してみてください。
