黒毛や濃い色の被毛の猫で目立ちやすい猫のフケ。一度フケが出ているのが気になりだすと、これが生理的なフケなのか、病気なのか心配になるかもしれません。今回はフケが出る原因と注意したい疾患、フケが出ている時のケアの方法をお伝えします。
「フケ」とは
皮膚には古い皮膚から新しい皮膚に入れ替わる「ターンオーバー」と呼ばれる代謝サイクルがあります。この代謝サイクルにおいて、皮膚表面の角質が剥がれ落ちたものがフケです。フケが出ること自体は皮膚の生理的な現象で問題のない場合が多いです。
また、猫はこまめに全身の毛をグルーミングしてフケも舐めて処理しているため、フケが目立つことはあまり多くはありません。
異常なフケと正常なフケの見分け方
異常なフケと判断される目安としては、明らかに床に落ちる程フケの量が多い場合や、フケがカサブタ状になっている、脱毛や皮膚に赤みなどの皮膚炎も認められるなどの場合です。普段は乾いたフケが、急にしっとりとしたフケに変わることにも注意が必要です。
フケが出る原因

皮膚は体全体を覆って、温度や湿度、紫外線、細菌や刺激物などから動物の体を守っている臓器です。外からの刺激が強いと皮膚は反応して代謝が活発になり、フケが多く出る場合があります。また、通常の皮膚の代謝サイクルが何かしらによって妨げられた場合もフケが溜まる可能性があります。
フケが出やすくなる状況と原因は以下のとおりです。
皮膚の乾燥
乾燥する季節や、室内でのエアコンなどの使用により、猫でも皮膚が乾燥しフケが増える場合があります。季節の変わり目や、暖房器具を使用する寒い時期にフケが増えるといった症状がある場合は乾燥が原因かもしれません。また、高齢の猫になると皮膚の代謝が落ち、皮膚表面の油分や水分も少なくなり乾燥しがちになります。
間違ったお手入れ
猫は通常グルーミングを行うことで、皮膚を清潔に保ち、フケなども舐め取っています。基本的には、お風呂に頻繁に入れて体を洗う必要はありません。必要以上に体を洗ったり、硬めのブラシでブラッシングをしすぎると、皮膚に刺激が加わり、かえってフケが多く出てしまうことがあります。
グルーミング不足
猫が高齢になると、認知症や関節疾患などで体の隅々までグルーミングを行うことが少なくなり、フケが増える場合があります。また、肥満傾向の猫の場合、背中を舐めにくくなり、背中だけフケが多かったり、油っぽくなって毛並みが悪くなることがあります。
過度の緊張
猫が過剰に緊張や興奮をすると、フケが出やすく毛がいつもより抜けやすくなる傾向にあります。これは緊張により毛穴の立毛筋と言われる筋肉が収縮し、抜け毛や皮膚表面の古い角質が剥がれフケが増えるのが理由と考えらえています。一時的な反応なので、興奮が落ち着けばフケも出なくなります。
毛玉
長毛の猫で毛玉ができている部分では、皮膚の入れ替わり時に出たフケが毛玉の下に溜まってしまうことがあります。放っておくと皮膚炎に進行することがあるので、毛玉を見つけたら早めに取り除いてあげましょう。
フケが出たときに考えられる病気

フケが過剰に出ている場合は病気を患っている可能性があります。以下にフケが出やすい疾患をあげるので、疑わしい場合は早めに動物病院を受診することをおすすめします。
寄生虫による皮膚炎
猫の皮膚に寄生する寄生虫はノミ、マダニ、シラミ、疥癬などが一般的です。寄生虫の感染により、猫が皮膚を頻繁に掻くことでフケが多く見られるようになります。疥癬による感染では、より強い痒みとカサブタ状のフケが顔に多く見られるのが特徴です。屋外に出さないことや駆虫薬で多くの場合は予防できますが、免疫力の低下した高齢猫や病気を患っている猫は感染に注意が必要です。
カビ(真菌)による皮膚炎
カビの感染による皮膚糸状菌症は、主に顔や手足に円形の脱毛と、周囲にフケを生じます。寄生虫ほどの痒みはありませんが、フケ以外に毛が部分的に抜けるのが特徴です。皮膚糸状菌症も免疫力の低下した子猫や高齢猫に感染しやすい疾患です。
アレルギーによる皮膚炎
食物や環境中のハウスダストなどのアレルゲンに対するアレルギー反応によって、皮膚に痒みが生じ、猫が皮膚を掻いたり舐め壊すことによって皮膚に赤みやフケが生じます。現在のところ、猫では根本的なアレルゲンの特定が難しい場合もありますが、過剰な体の反応を抑える治療や食事療法で改善する可能性があります。
脂漏症やアゴ、尻尾の局所的な皮脂の過剰分泌による皮膚炎
皮脂腺が活発になり油が過剰に出てしまう脂漏症があります。皮膚が油っぽくなることに伴い、ベトベトしたフケも同時に見られます。全身的な脂漏症は稀ですが、ペルシャやヒマラヤン、エキゾチック・ショートヘアーなどで遺伝性の脂漏症が認められることがあります。 また、アゴ下や尻尾が部分的に油っぽくなり、皮膚炎を起こすことがあります。皮脂腺の分泌が活発になることが要因ですが、これにはホルモンが関連していると言われていて、去勢手術を行っていない男の子で頻繁に見られます。
内臓疾患や栄養不良
皮膚を健康に保つためには十分なタンパク質や脂肪酸、ビタミンなどの栄養が必要です。猫が腎臓や肝臓疾患、腸疾患などの内臓疾患で十分な栄養が摂取できない場合や、偏った食事をしていると、皮膚の代謝サイクルに乱れが生じて乾燥やフケ、毛並みが悪いといった見た目の変化が如実に表れるようになります。皮膚は目に見えない内臓のバロメータでもあります。体調にも変化が見られる場合には、動物病院を受診して他の病気が隠れてないか診てもらいましょう。
フケが出ているときの対処法

フケがいつもより増えたかもしれないという場合は先に述べたような原因がないか、猫の様子をチェックしてみましょう。家でできるケアを試しても改善されない場合は、動物病院で他の原因がないか診てもらう必要があります。
シャンプー
猫はシャンプーで体を洗う必要はあまりありませんが、フケが目立つ場合は部分的若しくは全身的に行ってもよいでしょう。猫の皮膚は人の皮膚より薄く、また人の皮膚は弱酸性ですが猫の皮膚は弱アルカリ性で異なる皮膚構造をしています。そのため、猫専用のシャンプーを使用します。また、毎日行う必要はなく、皮膚の状態に問題がなければ月1回程度の頻度で様子を見ます。それでも、フケがひどく、痒みなどがある場合は動物病院で診てもらいましょう。
猫はシャンプーやドライヤーなどに慣れていないので、初めて行う場合はパニックに陥ってしまうこともあります。シャンプーをする時は、強引に行わず、十分配慮して行いましょう。
適度なブラッシング
グルーミングを十分にできていない猫や長毛の猫は、毛玉やフケができやすいので、ブラッシングを行ってあげることが重要です。しかし、硬いものや先の尖ったブラシは過度に刺激を与えてしまい逆効果となります。毛の長さに合った先の丸いブラシやラバーブラシでやさしくブラッシングをして、余分な抜け毛を取り除いてあげましょう。
生活環境への配慮
季節によって室内が乾燥したり、猫がエアコンやストーブの近くで寝ている場合、適度な湿度を保ち皮膚を乾燥させないようにしてあげましょう。また、生活環境で継続してストレスを抱えている場合もフケが増える原因となるので、猫がリラックスしているか日々チェックしてあげましょう。
適切なフードの選択
良質な食事は猫の皮膚や被毛を健康に保つためにとても重要です。もし猫の体質上フケが出やすいと感じる場合は、吸収性の高いタンパク質や栄養バランスのとれたフードを選ぶとよいかもしれません。どのフードを選べばよいか悩む場合は、動物病院で相談し皮膚ケアに特化したフードの提案などアドバイスを受けるとよいでしょう。他の病気などで決まった食事しか摂れない場合は、皮膚の健康維持に必要な必須脂肪酸やビタミン、ミネラルなどをサプリメントで補うのもよいでしょう。
動物病院を訪れるべきタイミング
フケが普段より増え、かゆみや皮膚の赤みが見られる場合、何かしらの病気が隠れている可能性があります。かゆみが続くと、皮膚を傷つけてしまい、細菌感染により皮膚炎が悪化する恐れがあるため、早めの対処が望ましいでしょう。
また、元気がなくなったり、体重が減ってきている場合も、動物病院で獣医師に相談すると安心です。
まとめ
フケと言ってもさまざまな要因が考えられます。愛猫の体調の変化と併せて、いつもと変わった様子はないか日々ケアをしながら観察してあげましょう。
