猫もしゃっくりをすると知っていましたか?猫が人のように「ヒック!ヒック!」とする姿を想像して、そのかわいらしさにニヤついてしまう方もいるかもしれませんね。しかし、猫のしゃっくりは人のようにヒックと発音することはありません。一定間隔で静かにお腹がピクっと動きます。気づかないこともあるでしょうし、たまたま気づいたら、これは痙攣か?などと心配になるかもしれません。今回は、猫の生理現象であるしゃっくりについて原因や対処法について解説をしていきます。

猫もしゃっくりをするの?どんなときにする?

猫のしゃっくりは静かなので、今まで見たことがないという飼い主さんもいらっしゃるでしょう。猫は、どんな時にしゃっくりをするのでしょうか。

しゃっくりが出るときの状態

しゃっくりは、医学用語では吃逆(きつぎゃく)と呼ばれます。しゃっくりが出るメカニズムは猫も人間と同じです。しゃっくりは、胸部と腹部を仕切っている横隔膜が痙攣することで起こると言われていますが詳しいことはわかっていません。猫のしゃっくりは、音は出ずに、お腹がピクピクと波打ちます。

しゃっくりを引き起こすもの

人でしゃっくりが出やすいのは、食べ物や飲み物を急いでたくさん食べたときや、熱いものや辛いものを食べたとき、お酒をたくさん飲んだり、たばこを吸ったりする時です。これらによって、横隔膜などの呼吸に関連する筋肉をコントロールしている神経が刺激されるとしゃっくりが出ると考えられています。

猫でも勢いよく食事を食べたり、大量に食べた時、子猫がミルクを飲んだ時、毛玉の喉への刺激、激しく運動した時、不安やストレスがあるときにしゃっくりが出ます。

猫がしゃっくりをするのが習慣になっていたらどうする?

猫がたびたびしゃっくりをする場合は、まずは本当にしゃっくりなのか動画を撮影して獣医師に相談するとよいでしょう。お腹がピクピクと波打つときには、くしゃみや咳、嘔吐の前兆、ゲップなどの可能性もあります。くしゃみや咳は猫では喘息などで起こりやすい症状でもあるのでしっかりと診断をつける必要があります。しゃっくりで間違いなかった場合は、下記のような予防法を試すとよいでしょう。

猫がしゃっくりをしたときに考えられる病気は?

しゃっくりは生理現象で引き起きることが多いですが、稀に病気によって起こることがあります。しゃっくりが頻繁に見られるときには、何か病気が隠れているサインかもしれません。しゃっくりを起こす病気は、横隔膜に刺激を与えたり、横隔膜などの呼吸に関連する筋肉をコントロールしている神経や脳に異常がある時です。

消化器の病気でお腹が張っていたり、呼吸の病気や心臓病で胸部に異常があるときは、横隔膜に刺激を与えしゃっくりが出るかもしれません。脳や脊髄の病気が横隔膜などの呼吸に関連する筋肉をコントロールしている神経に影響を与えている可能性もあります。老齢猫で頻繁にしゃっくりをする場合は、動物病院を受診し、詳しく健康診断を行うとよいでしょう。

猫のしゃっくりは止めたほうがいい?

人はしゃっくりをしたら、しばらく待ってみたり、驚かす、水を飲む、息を止めるなどの民間療法を試してみるのではないでしょうか?では、猫がしゃっくりをしたらどうしたらよいのでしょう。

しゃっくりをしたらどうしたらいい?

猫のしゃっくりも、ほとんどの場合が自然に治るので、様子を見るのがよいでしょう。生理現象のしゃっくりならば、猫もそれほどストレスを感じてはいないので、そっとしておきましょう。水を飲むように強要したり、驚かすことは猫にストレスを与える可能性があるため避けましょう。

何時間もしゃっくりが続く場合や、頻繁にしゃっくりを起こす場合、元気がなくぐったりしている・呼吸が荒いなどの異常が見られる場合は、病気が隠れている可能性があるため、しゃっくりの様子を動画に撮影し、病院にかかりましょう。

猫のしゃっくりの予防法はある?

猫のしゃっくりを予防するには、しゃっくりの原因を考えて、対処してあげるのがよいでしょう。

勢いよく食事を食べる場合

しゃっくりは、勢いよく食事を食べることが原因のことが多いでしょう。ダラダラ食べの猫もいますが、一気に丸呑みしてしまう猫もいます。猫の歯は肉を引き裂くことが得意で、食べ物すりつぶすことはできないので、飲み込んでしまいます。特に多頭飼育では、他の猫に取られないように急いで食べることが多いです。勢いよく食事を食べると、消化管に負担がかかり、しゃっくりや嘔吐の原因となります。対策は以下のようなものがあります。

・落ち着ける場所で食事を与える:猫が食事中は、触ったりせずそっとしておきましょう。子供が騒いでいるような場所ではなく、静かな場所で食事を与えましょう。多頭飼いの場合は、食事の時は別の部屋で食べさせるなど、お落ち着ける場所で食事を与えましょう。

・食事の回数を増やす:空腹のあまり、食事を早食いしてしまうことがあります。1日の食事量は変えずに食事を3~4回に分けるとよいでしょう。自動給餌器を使用すると忘れずに留守中でも与えられて便利です。

・早食い防止の食器などを使用する:食器の底に突起がついており、時間をかけないと食べられないようになっているものを使用するとよいでしょう。空き箱やガチャガチャの容器に穴を開けたものに食事を入れ、少しずつしか食べられなくしたり、グリーンフィーダー(※)などの知育トイも使用するのもよいでしょう。

(※)グリーンフィーダー:芝生をイメージして作られたポリプロピレン製の食器。長短のある突起がついている。

食べ過ぎの場合

食べ過ぎで胃が膨らむことで横隔膜に刺激を与えしゃっくりが出ます。肥満にもなり、糖尿病、膀胱炎、関節炎などの病気のリスクを増やしてしまいます。ごはんの量はしっかりと測って与えましょう。食事の量は体型に合わせて調整する必要があります。

毛玉の場合

長毛種は毎日ブラッシングをする必要があります。短毛種でも週に一回はブラッシングを行いましょう。換毛期は特に忘れずに行う必要があります。それでも毛玉を吐いたりする場合は、毛玉対策のフードやサプリメントもあるので、動物病院で相談してみるのもよいでしょう。

子猫の場合

子猫がミルクを飲んだ後にしゃっくりをしている時には、飲み終わった後に軽く背中を叩いたり、さすったりしてゲップをさせるとよいでしょう。子猫は、しゃっくりが多いですが、人間の赤ちゃん同様内臓がまだ発達段階のためと考えられます。様子を見てよいでしょう。

不安やストレスの場合

攻撃行動がある場合や過剰に猫自身を舐めたりする場合は不安やストレスを抱えている可能性があります。しゃっくりが起こる状況を観察し、特定の状況で出る場合にも不安やストレスが原因と考えられます。その状況の時に知育トイでおやつを与えるなどをして、気を紛らわせたり、普段から十分な運動や遊びを行うことが対策になります。行動診療をおこなっている動物病院を受診するのもよいでしょう。

まとめ

人同様に生理現象であることが多い猫のしゃっくりについて解説しました。猫がしゃっくりをしていても基本的にはそっと見守り、他に病気のサインがないか様子を見るとよいでしょう。また、習慣的にみられる時には、猫の食事や環境を見直してみましょう。老齢猫で頻繁にしゃっくりが見られる時には、重大な病気が隠れていることもあるので、動物病院を受診するとよいでしょう。

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監修獣医師

平野 翔子

平野 翔子

2012年に東京農工大学を卒業後、24時間体制の病院に勤務し、予防診療から救急疾患まで様々な患者の診療に従事。その傍ら、皮膚科分野で専門病院での研修や学会発表を行い、日本獣医皮膚科学会認定医を取得。皮膚科は長く治療することも多く、どうぶつたちの一生に関わり、幸せにするための様々な提案や相談ができる獣医療を目指す。パワフル大型犬とまんまる顔の猫が大好き。