
野菜や果物は、鳥の食生活を豊かにします。ただし、鳥にはあげてはいけない食材や注意が必要なものもあるので、事前に確認して与えると安心です。
野菜・果物は副食
セキセイインコ、オカメインコ、ボタンインコ、コザクラインコ、ブンチョウやジュウシマツなどの種類の鳥にとっては、野菜や果物は副食です。
できればペレットを主食として、野菜などの副食は食事全体の3割以下くらいを目安量とするとよいでしょう。野菜は常に食べられるようにしてあげて、できるだけ毎日与えられると良いですね。
一部の鳥では、果物が主食のひとつになることがあります。
ゴシキセイガイインコなどの「ローリー」「ロリキート」などと呼ばれる「花蜜食」のタイプの鳥では、花の蜜や花粉、果汁などが主食になります。

▲ゴシキセイガイインコ
キソデアオボウシインコなどは、果食傾向の強い鳥で、果実や種実を主食としています。

▲キソデアオボウシインコ
これらの種類の鳥を飼育する場合は、事前に食性を学び、お迎え前に適切な食事内容を十分に確認してください。
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無理に与える必要はありません
鳥の中には、葉野菜を見ると怖がって食べないという子もいます。
その場合は無理して野菜や果物を与えなくても良いので、ペレットやサプリメントなどで栄養バランスを整えるようにしたり、楽しく遊びながら食事を楽しめるフォージングトイなどで退屈しない食生活を作ってあげるといいでしょう。
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野菜を食べていてもサプリが必要なことも
主食がシードだけの食生活をしている場合、栄養の偏りが問題になります。
野菜はビタミンやミネラルの補給に多少は役立ちますが、シードで不足する栄養素を完全に補充することはできません。
ペレットを食べてくれず、主食がシードだけの場合は、ヨウ素(ヨード)のような微量元素類※の摂取も考えて、野菜と一緒にサプリメントも併用するとよいでしょう。
※微量元素類…体内で少量しか生成されないものの、生命維持に不可欠な栄養素のこと。鉄・銅・亜鉛・セレンなどが挙げられます。微量元素が不足すると、成長の遅れ、免疫力の低下、貧血、骨の異常など、様々な健康問題が起こる可能性があります。
野菜・果物を与えるメリット
食事を楽しめる
野菜にはついばむ楽しさがあります。
野生下と比べるとどうしても行動範囲が制限されるペットの鳥にとって、ストレスを緩和するための「環境エンリッチメント」の工夫は重要です。
ケージを噛んだり毛引きしたりといった問題行動の予防のためにも、野菜類を取り入れるといいでしょう。
ビタミン源になる
緑黄色野菜に含まれるβカロチンは、身体の中でビタミンAの材料になります。
ビタミンAは呼吸器や消化管の粘膜のバリア機能を保つために働いたり、視力にかかわったりなど、非常に重要な栄養素ですが、シードだけだと不足します。βカロチンは穀類にはほとんど含まれていないので、ぜひ緑黄色野菜を一緒に与えるとよいでしょう。
セキセイインコの場合、一日におよそ小松菜2枚分相当のビタミンA(βカロチン)が必要という見解もあります。ただし、かならずしも小松菜を毎日2枚食べなくてはいけないというわけではないので、さまざまな野菜をローテーションして与えつつ、ペレットやサプリメントも活用してください。
野菜・果物を与えるときの注意点
基本的に、新鮮なものをしっかり水洗いして水滴を取った後、生のままで、人間と同様の可食部を与えます。
食べ慣れていないものを急に食べると、排泄物の状態が変化することもあります。水分の多い野菜の食べ過ぎにも要注意。食べてもよい食材であっても、はじめて与える場合は少量ずつ、様子をみながらあげてください。
うんちをよく観察し、もし下痢などの変調があれば、新しく与えた食材はしばらく休止するか量を減らしましょう。それでも変調が続くようなら、動物病院を受診してください。

アブラナ科の野菜は、ゴイトロゲンという成分の影響で、ヨードを摂取していないと甲状腺腫になりやすくなると言われています。普段からペレットやサプリメントで補っていれば大きな心配はいりませんが、野菜は一年中毎日キャベツだけという生活は望ましくありません。
同じ食材だけを食べ続けていると、どうしても栄養上の問題が出やすくなります。できるだけ特定の野菜だけに偏らないようにして、豊かな食生活を楽しんでもらいましょう。
おすすめの食べられる野菜
レタス、サニーレタス(キク科)
水分を多く含んでいます。キャベツのように丸く結球する玉レタスは、βカロチンをあまり含んでいません。縮みがあるリーフレタスや葉先が赤紫色のサニーレタスは、丸いレタスの約8~9倍のβカロチンを含んでいるので、ビタミン補給目的であればリーフレタスやサニーレタスを選びましょう。
サラダ菜(キク科)
βカロチンを多く含んでいます。葉がやわらかく、芯の部分も少ないので食べやすいです。
ニンジン(セリ科)
生のまま、食べやすいサイズに切って与えましょう。葉も食べることができます。
根の部分のβカロチンの含有量は、野菜類の中でトップクラスに豊富です。
カボチャ(ウリ科)
生のままスライスして与えましょう。
加熱された炭水化物は、消化管内でカンジダ(カビ)の増殖やそのう炎を誘発する可能性があるので、加熱してはいけません。
日本カボチャよりも西洋カボチャの方がβカロチン量が多いです。
豆苗/エンドウマメのスプラウト(マメ科)
根と種子を切り離し、茎と葉の部分を与えます。
じつは小松菜よりもβカロチン量が多いので、おすすめの野菜です。食物繊維も豊富。
与えすぎには注意の野菜
アブラナ科の野菜は甲状腺腫の発症率を高めるという報告もあり、与えすぎないことをおすすめします。
小松菜(アブラナ科)
菜刺しに入れやすい形状で、βカロチンも豊富。アクも少ないです。
チンゲンサイ(アブラナ科)
βカロチンを多く含んでいます。葉が薄いので食べやすいです。
ブロッコリー(アブラナ科)
生のまま与えて大丈夫です。βカロチンもそこそことれます。
つぶつぶしたつぼみ部分を与えましょう。ついばんだりむしったりできるので、くちばしを使って楽しんでもらうのにも向いています。
大根の葉(アブラナ科)
葉の部分は緑黄色野菜として食べられます。βカロチンも多め。
茎と葉全体の食物繊維量は、じつはタケノコよりも多いです。茎の部分はスジっぽいので残すかもしれません。
カブの葉(アブラナ科)
葉の部分は緑黄色野菜として食べられます。βカロチンも多め。大根の葉と同様です。
白菜(アブラナ科)
水分が多いです。βカロチンはあまり含まれません。水分を取らせたいという事情がなければ、他の野菜の方がおすすめ。
野草は与えてもよい?
自分で栽培したものなど、衛生的な管理が確実であれば、ナズナ(ぺんぺん草)やハコベなどを食べることができます。しかし、野外に自生しているものは、野鳥の病原体による汚染や、農薬散布などの可能性が完全には否定できません。野外採取の野草は与えない方が無難です。
食べられる果物
健康な鳥は体内でビタミンCを合成することができます。そのため、果実からビタミンCを取らせようと意識しなくても大丈夫です。
セキセイインコやオカメインコなど、果物に含まれる果糖を分解できない鳥種もいるため、与えすぎに注意しましょう。
オレンジ
輸入品の場合、外皮に防カビ剤やシールがついていることもあります。皮を取り除いて与えると安心です。
バナナ
皮をむいて与えます。果実類の中ではカロリーが高いです。食べ過ぎないように注意しましょう。
リンゴ、梨、桃、プラム、サクランボ、アンズの果肉
果肉(やわらかくて甘いところ)は与えることができます。
種子部分(こげ茶色で硬い粒のところ)にはアミグダリンという中毒物質が含まれます。種の部分は必ず取り除いてから与えてください。
与えてはいけない野菜と果物
以下の野菜や果物は中毒の恐れがあるため、与えないでください。
アボカド
ペルシンという殺菌成分が、鳥には猛毒になると言われています。
セキセイインコの場合、1gでも致死的な中毒症状を起こすことがあるとの報告もあります。ごく少量でも与えないようにし、放鳥中の台所ゴミなどにも十分注意してください。
ネギ、玉ねぎ、ニラ
犬や猫など、ほかのどうぶつで中毒が報告されている野菜です。
おすすめしない野菜
ホウレンソウ・春菊
シュウ酸がカルシウムと結合し、カルシウム吸収を妨げると懸念されています。避けたほうが良いでしょう。
乾燥野菜やドライフルーツは食べられる?
乾燥野菜は鳥も食べられます。しかし、できれば新鮮な生野菜を与えた方がよいでしょう。
市販の乾燥野菜の多くは小さくカットされているため、ついばむ楽しさや多様な触感を与える目的であれば、生野菜の方がより適しています。
ドライフルーツ類は、生の果物よりも糖分が凝縮し、甘みが強くなっています。適量であれば食べてもよいのですが、本来の食性を無視してあまり甘いものを食べすぎていると、糖類を好むカンジダ(真菌・カビ)が消化管内で増殖しやすくなるおそれがあります。
もともと種子類を主食にしている鳥種の場合、ドライフルーツは食べすぎない方がよいでしょう。ケージにたっぷり入れっぱなしにするのは避けてください。
体重測定やケージに戻すときなどのしつけのごほうびとして使ったり、馴らすためのコミュニケーションツールとして使うなど、スペシャルなときに限定して与えるのがおすすめです。
まとめ

くちばしを使って食べる喜びや食材の変化による楽しさは、ペレットやサプリメントだけでは得ることができません。「心の栄養」として、野菜や果物も鳥に楽しんでもらえるといいですね。