そのう炎はどんな病気?

そのう(そ嚢・嗉嚢)とは、食道の途中にあるふくらみで、食べ物を一時的にためておく場所です。インコやハト、ニワトリなどのペットとして飼育される種類の鳥の多くがそのうを持っています。この、そのうに何らかの要因で炎症が起きてしまった病気を「そのう炎」といいます。

そのう炎の原因

そのうは、食べ物を胃に送る前にふやかすため一時的に保管する器官です。野生の鳥は、いつも安全にゆっくり食事ができるとは限りません。そこで、まずはそのうに食べ物をため込み、後で安全な場所でゆっくり消化できる体のしくみが発達しました。

構造は食道と同様で、硬い食べ物が入る場所のため頑丈にできています。常在菌の働きで悪い菌の増殖が抑えられているため、本来は感染にも強いしくみをもっています。

しかしながら、ヒナ鳥や不適切な食事やストレスで抵抗力が落ちているなどの場合は、そのうにトラブルが起きやすくなります。

感染症

トリコモナスの感染
トリコモナスという原虫が感染して、そのう炎を起こしてしまうことがあります。トリコモナス感染はヒナに多く、文鳥やハト、オカメインコなどで見られることがあり、よく口内炎を起こします。口内炎が進行してそのうまで到達すると、そのう炎を発症します。
大人の鳥ではトリコモナスに感染していても無症状のことが多いので、知らないうちに母鳥などから潜伏感染しているケースもあると考えられます。

カンジダの感染
カビの仲間であるカンジダは、環境中にありふれている真菌のひとつです。健康な鳥ではほとんどトラブルの原因にはなりませんが、抵抗力が落ちていたり、不適切な食事を食べている場合、そのう内でカンジダが異常増殖してカンジダ症を起こすことがあります。
ビタミンA欠乏などでそのうの粘膜が正常に働くのが難しくなっているときや、甘いお菓子のようなカビが増えやすい食べ物がそのうにたまってしまったときには、とくにカンジダ症が発症しやすくなると考えられます。

不適切な給餌・食事内容

熱いさしえでのやけど
お迎えしたばかりのヒナの時期は、さしえを与えることも多いもの。このさしえを熱湯を使って作っていたり、電子レンジで温めていたりすると、食道やそのうをやけどし、炎症を起こす原因となります。

チューブフィーディング
さしえや流動食をスプーンなどではなく、くちばしからチューブを挿入して与える方法を「チューブフィーディング」といいます。硬いチューブを無理やり押し込んだり、チューブを入れすぎてそのうをつついたりすると、食道やそのうを傷つけて炎症の原因になる恐れがあります。また、ヨウムのような比較的大きな鳥では、外れたチューブを飲み込んでそのうに入ってしまう可能性もあるため、チューブの使用には注意が必要です。

不適切な食事(ビタミンA不足・高糖度食)
そのうの内側は健康な粘膜のバリアで守られていますが、ビタミンAが欠乏するとその力が衰えてしまいます。食事にビタミン類が含まれていなかったり、ふやかしたアワ玉だけをさしえにしていたりすると、栄養バランスが乱れて抵抗力が落ちてしまいます。
また、人間用の菓子パンやクッキーのような糖分の多い不適切な食事も、カンジダがそのう内で増殖しやすい状況をつくると考えられます。

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そのう炎の症状

そのう炎の代表的な症状は、食欲不振や吐出です。

そのう炎で吐く症状がみられる場合、ほとんどが嘔吐ではなく、吐出です。性成熟した鳥では発情に関連して食事を吐き戻すこともありますが、顔周りが汚れるようにまき散らして吐く場合は、病的な嘔吐が考えられます。性成熟前のヒナがなにか吐いている場合は、発情での吐き戻しとは考えにくいので、病的な吐出を疑った方がいいでしょう。

炎症を起こしてそのうが分厚くなったり、そのうの食べ物が流れないまま溜まった状態(食滞)になると、腫れがわかることもあります。ヒナにはそのうが空っぽにならないようこまめにさしえを与えることもあるので、そのうのふくらみだけでは病的か判断が難しいこともありますが、次のさしえの時間になっても前のさしえが残ったままパンパンというときは、食滞を起こしている可能性もあります。また発酵臭や酸っぱいにおいがする場合も、そのうのトラブルの疑いがあります。早めに受診したほうがよいでしょう。

そのう炎が重度の場合は、のどのあたりの位置が痛くなるので、首を伸ばした姿勢を取ることもあります。そのう炎は気づくのが遅れて重度になると、衰弱死してしまうこともあります。

そのう炎の診断方法

視診やそのう部の触診を行いながら鳥の体調を評価し、問診や症状などから総合的に評価します。

トリコモナスやカンジダなどの感染の有無はそのう液の検査でわかります。顕微鏡での観察のほか、院外の検査センターで培養して評価します。トリコモナスやカンジダでは感染していても無症状というケースもあります。そのため、そのう液からトリコモナスやカンジダが見つかったからといって、かならずしも治療が必要というわけではありません。治療の必要性は、食欲不振や吐出などの症状の有無を見ながら判断します。

そのう炎の治療法

感染に対する治療

トリコモナス(原虫)やカンジダ(真菌)などの感染があれば、それに応じた抗原虫薬や抗真菌薬を使用します。薬を飲み水に混ぜて経口投与する方法が一般的ですが、それにより水を飲まなくなってしまう場合には、直接経口投与することもあります。

飼育環境を整える

不適切な食事や飼育環境により抵抗力が低下すると、そのう炎にかかりやすく、また長引きやすくなります。とくに抵抗力が低く、そのう炎を発症しやすいヒナでは、おうちでのケアも大切です。

食事管理
アワ玉しか与えていないなどの極端に偏った食事だった場合は、食事を適切なものに変更します。ビタミン類が適量とれるフードやサプリメントを活用します。

保温
ヒナの場合は積極的な保温が必要です。週齢に合わせて、お迎え前の飼育温度を保てるようにしましょう。少し大きくなった子でも病鳥の場合は、品種にもよりますが28~31℃くらいでの管理が推奨されることが多いです。熱中症ややけどなどがないよう注意し、保温器具を使用する際は温度計やサーモスタットを使いつつ、鳥の様子を見ながら温度を調節しましょう。
鳥の種類に合わせた具体的な飼育温度については、診察の際に確認するとよいでしょう。

消毒
原因病原体であるトリコモナスやカンジダは、石鹸での洗浄や天日干しでも十分対処できます。吐き出した物などがついたものは洗って乾かすとよいでしょう。

治療費の目安

診察料と、そのう液検査料、感染があった場合の投薬料が基本の治療費の内訳になります。「みんなのどうぶつ病気大百科」のデータでは、一回の診察料の平均額は4,320円程度となっています。

抗原虫薬や抗真菌薬は比較的安価な薬剤ですが、培養検査は高額になる傾向にあります。院内での顕微鏡検査だけではなく、外部の検査センターに依頼しての病原体検出を行う場合には、上記の平均的な治療費よりも数千円以上高額になることもあるでしょう。

また、不適切なチューブフィーディングでそのうを破ってしまったなど、重篤なそのうの損傷・炎症の場合は、外科的な対応が必要になることもあります。その場合は、数万円以上かかることも考えられます。

治療期間の目安

トリコモナス感染が原因の場合、有効な駆虫薬が適切に投与されれば、早ければ数日で駆除されます。体力があり経過が順調な場合は、長引くことは少ないでしょう。炎症が広がって重症の場合は呼吸困難症状が出ることもあるため、衰弱している場合は回復が難しいこともありえます。

小型の鳥の成長は速く、数ヶ月もすれば小さなヒナも若鳥へと成長していき、そのう炎を起こしにくい体力を身につけていきます。大人の鳥にもかかわらずそのう炎になってしまった場合、抵抗力が下がるような他の病気が隠れている可能性があり、持病の治療で経過が長くなることもあるかもしれません。

そのう炎の予防法

病原体の感染が発症にかかわることもありますが、トリコモナスは潜伏感染で拡大することもあるため、完全な予防は難しいこともあります。また、カンジダは環境中にごくふつうにありふれた真菌なので、カンジダとの接触をゼロにするのも難しいです。

病原体との接触が減らせればそれもよいのですが、そのう炎は抵抗力の落ちた個体に発症しやすいので、本人の抵抗力が落ちないようにして予防しましょう。

栄養不足や寒さのストレスなどをかけないことが予防につながります。

飼育温度
鳥の身体の中には空気をたくさん取り込むための構造があり、周囲の空気が冷たいと身体も冷えてしまいます。保温器具を設置していても、外気温が低ければ目的とした設定温度まで温度が上がりきっていないことも。鳥が実際にいる場所の温度をはかり、ケージ内の空気ごと十分に暖かくなっているかを確認しましょう。
ヒナの場合は、とくに温度管理に要注意。お掃除のときなどケージから出している短時間でも冷えないように気をつけてください。

食事の注意点
・食事やさしえには、ビタミンAを含むものを与える
専用のパウダーフードやペレットなどには適量のビタミン類が含まれています。ビタミンAは緑黄色野菜に含まれるβカロテンからも作られます。ひとりで食事ができるまで成長したら、青菜などでβカロテンを摂取できるようにするとよいでしょう。

・熱いさしえでやけどをさせない
電子レンジで温めたフードは、かならず混ぜて、温度を確かめてから与えましょう。

・のどにチューブを無理やり突っ込まない
スプーンでのさしえと違って、チューブフィーディングは難易度が高いもの。ビギナーの飼い主さんはスプーンでさしえを与える方が無難です。

・人間のお菓子類は与えない
ほんの少量のおすそ分けのつもりでも、鳥にとってはかなりの量です。大好きなわが子と同じ食べ物をシェアして楽しみたいときは、小松菜などの青菜・野菜類にとどめましょう。

まとめ

そのう炎は抵抗力の乏しいヒナの時期に見られやすく、お迎えしたばかりのタイミングで食欲不振や吐出が出ると、まだかかりつけ医も決まっておらず不安になることもあるかもしれません。
鳥の不調は基本的にはすぐに受診することが望ましいですが、鳥の診療が可能な動物病院は多くはないので、飼いはじめるときに鳥の受診が可能な病院をあらかじめ調べておきましょう。

監修獣医師

中道瑞葉

中道瑞葉

2013年、酪農学園大学獣医学科卒。動物介在教育・療法学会、日本獣医動物行動研究会所属。卒後は都内動物病院で犬、猫のほか、ハムスターやチンチラなどのエキゾチックアニマルも診療。現在は、アニコム損保のどうぶつホットライン等で健康相談業務を行っている。一緒に暮らしていたうさぎを斜頸・過長歯にさせてしまった幼い時の苦い経験から、病気の予防を目標に活動中。モットーは「家庭内でいますぐできる、ささやかでも具体的なケア」。愛亀は暴れん坊のカブトニオイガメ。