おしゃべりが得意な大型インコとして長年親しまれてきたたヨウム。しかし現在では、絶滅危惧種に指定され、ワシントン条約によって取引も譲渡も厳しく規制され、新たにペットとしてお迎えすることは原則できなくなりました。
それでも寿命が長いため、すでに飼育されている個体については、家族が世代を超えてお世話を引き継ぐこともあります。
ヨウムのお世話をすることになったとき、まず知っておきたい特徴や飼い方のポイントを紹介します。
ヨウムってどんな鳥?
ヨウムは全体がグレーで、目の周りは白、風切り羽は黒、尾羽は赤です。目の周りは羽毛がなく、クチバシは黒。カラフルではありませんが、繊細なグラデーションがあり美しい羽色をしています。

名前からオウムの仲間に思われがちですが、オウムの特徴である冠羽はなく、インコの仲間に分類されます。全長約35㎝、体重400g前後の大型のインコです。漢字では「洋鵡」と書きます。野生ではアフリカ中西部の熱帯雨林に生息し、群れで生活しています。
飼育のための捕獲が一因となり、現在は野生の生息地では絶滅危惧種です。そのためワシントン条約で野生の個体の取引が禁止されています。飼育下で繁殖した場合や規制前(2016年以前)から飼育していた場合でも、登録証がなければ売買や譲渡ができません。
2025年4月には、大阪府警が落とし物として届けられたヨウムを譲渡したことが事件に発展した件もありました。 ※毎日新聞より
ヨウムの寿命
ヨウムの寿命は50年前後といわれています。
大変寿命が長いため、飼い主の人生に長く寄り添ってくれるメリットがある一方で、さまざまな事情から飼いきれなくなる事態も起こっています。
【関連リンク】
ご長寿アルバム|アニコム損保
ヨウムはどんな性格?
温和で賢く、人懐っこい鳥です。社交的で慣れた飼い主に甘えることも。繊細で用心深い面もあります。
環境の変化は大きなストレスになり、飼い主が変わると警戒心を抱き、慣れるまでに時間がかかることもあります。できる限り以前の飼い主に飼育環境や1日のスケジュール、放鳥の時間、関わり方、好きなもの、好きな遊びを聞いておき、新しい環境でも同じようにできることはそのまま引き継いであげましょう。なかなか慣れない、攻撃的・反抗的になるということがあっても、変化に対応している最中なのだと受け止めて、気長に見守ってください。鳥の基本的な行動や心理を理解したうえで、その子の個性や良いところを探しながらつき合っていきましょう。
鳴き声は?
ほかの大型の鳥と比較すると、鳴き声は小さい方です。雄叫びをあげることも少ないですが、小型のインコよりはかなり大きな声で鳴きます。集合住宅や近隣と距離が近い場合は、防音室を用意するといった対策が必要になります。
おしゃべりはできる?
おしゃべりはとても上手で、インコの中で一番といわれています。多くの言葉を覚えることができ、単に音として覚えるだけでなく、使うタイミングも覚えて飼い主と会話が成り立つ子もいるほどです。真似をするのも得意で、言葉のほかに歌、音楽、犬猫やほかの鳥の鳴き声、機械の音などさまざまな音を真似します。
飼う前に知っておきたいこと

ヨウムは知能も社会性も高いので、退屈や孤独を感じる時間が長いと、ストレスから問題行動を起こす場合があります。大声で騒ぎ立てたり、自身の羽をむしり取ってしまったりします。飼い主が毎日ヨウムと向き合い、遊んでコミュニケーションをとる時間をしっかり確保することが大切です。
また、鳥を診てもらえる動物病院は限られています。もしものときにすぐに受診できるよう、かかりつけとして通える動物病院を見つけておきましょう。

ヨウムの飼い方
ヨウムは大型の鳥なので、他のペットとして飼育されている小鳥と必要な飼育用品が異なります。事前によく調べて実際に飼っている人の工夫も見ながら、ヨウムと飼い主の双方に快適な暮らしを考えていきましょう。
ケージは、飛び回れるほどの広さは不要ですが、最低限羽を広げられるスペースは必要です。両側の翼の大きさを考えると、50㎝ほどのケージ幅があっても、のびのび羽を広げるにはギリギリのサイズになります。ショップの店員さんなど詳しい人に相談しながら、できる限り広いケージを選びましょう。
知能が高く、自分でケージの扉を開けて、脱走してしまう可能性もありますので、鍵やナスカンといったスライドドア部分をロックするグッズを使用しましょう。
ケージケースがあると、フンや脂粉の飛び散りを防ぐことができるほか、防音にも役立ちます。室内でも抜けた羽毛や脂粉が漂うことになるので、空気清浄機も用意するといいでしょう。
おもちゃは、好奇心や遊び心を満たすため必ず用意しましょう。かじって遊ぶおもちゃはすぐ壊れてしまうので、消耗品と考えて複数用意しましょう。工夫して遊ぶ知育おもちゃや、室内に置くバードジムなどでも楽しく遊べます。
【関連リンク】
鳥のおもちゃはどんな種類がある?どんなものをどのくらい用意すればいい?【獣医師監修】
環境の準備
ケージはリビングなど、なるべく飼い主のそばにいられて様子が見える場所に置きましょう。鳥が落ち着ける部屋の隅で、直射日光が当たらず、温度差が少ない場所に設置します。
野生のヨウムが生息する場所の気温は、年間を通して25℃程度です。多少の温度差があっても快適に過ごせますが、暑がっている・寒がっているといった様子があればエアコンやヒーターで室温を調節し、必要に応じてバードヒーターなどの保温器具を使用します。
ヨウムは何を食べる?
食事は専用のペレットがメインになります。副食として野菜や果物、おやつとしてシード類(ヒマワリの種、ソバの実など)を与えます。
慣れない食べ物は受け付けないことがあるので、飼いはじめは以前から食べていたものと同じものを準備して与えましょう。食事内容を変更したいときは環境に充分慣れてから、様子をみながら行ってください。
【関連リンク】
【獣医師監修】ペットの鳥のフードの種類を解説!
お世話は何をする?
日ごろのお世話は1日1回ごはんを入れることと、お水の交換、ケージの掃除です。掃除はケージの床に敷いた紙を交換し、フンで汚れた場所をきれいに拭き取ります。1日に一度、1~2時間はケージから出して一緒に遊びます。
気温や体調を見ながら、日光浴や水浴びも行ってください。野生のヨウムは熱帯雨林気候地域に生息しているので、本来は降雨で水浴びをしている種類です。嫌がらなければ、週に2回くらいを目安に水浴びをさせてあげましょう。水浴びは弱い水流でシャワーをあてる、霧吹きでかけるなどいくつかやり方がありますが、その子が好む方法にあわせましょう。
お手入れは何をする?
頻度はその子によって異なりますが、定期的な爪切りが必要です。飼い主自身で行うことが難しい場合は動物病院でお願いすることもできます。

まとめ

ヨウムは大型のインコなので慣れるまで飼育が大変なこともありますが、賢くて飼い主に懐き、長い間寄り添ってくれる鳥です。ヨウムのことをしっかり理解すれば、楽しいおしゃべりができるかけがえのないパートナーとなってくれるでしょう。