古くから博識や幸福のシンボルとしてなじみがあるフクロウ。最近はペットとして自宅で飼う人も増えています。とはいえ、フクロウは猛禽(もうきん)類に分類され、見た目の可愛らしさだけで気軽に飼えるわけではありません。飼育には十分な準備と注意が必要です。ここではフクロウって家で飼えるの?と興味を持った方に向けて、飼う前に知っておきたいことや基本的な飼い方、人気の種類を紹介します。

フクロウってどんな鳥?

フクロウは猛禽類の鳥。猛禽類とは、鋭い爪とクチバシを持つ肉食の鳥の仲間です。獲物は主にネズミのような小動物や小型の鳥など。ワシやタカ、ハヤブサなども同じ猛禽類の仲間になります。

フクロウの特徴は?

フクロウといえば丸くて大きな目。視力がとても優れていて、夜も昼間と同じように目がききます。ほかの鳥と違って目が顔の前面についていますが、首を270度動かすことで360度見渡すことができます。平たく見える顔は目を中心にくぼんでいて「顔盤(がんばん)」と呼ばれます。顔盤は集音器の役割をしていて、音源の方向を正確に把握し、獲物の位置を捉えることが可能です。
頭には羽角(うかく)と呼ばれる羽が飛び出した部分があることも。羽角がある仲間はミミズクと呼ばれることもありますが、この部分は耳ではなく飾り羽です。飛んでいるとき羽音がほとんどしないことも特徴です。これは獲物に近づいていることを悟られないようにするためです。
野生では南極以外のほぼ世界全域に生息し、多様な種類がいます。大きさも全長15㎝程度の小型種から、70㎝にもなる大型種までさまざまです。ほとんどが夜行性ですが、日中に狩りをする種類も。ペットとして飼われているフクロウも、種類によって大きさや習性が異なります。そのフクロウに適した飼い方をすることが大切です。

フクロウは人に懐く?

フクロウは単独行動が基本で、群れで仲間と行動する鳥ではありません。そのためインコやオウムのように懐くことはないといわれています。人になでられることも抱っこされることも好まず、リーダーの言うことを聞く習性もないため、しつけも簡単ではありません。

それでもよく馴れれば、飼い主の腕に止まる、なでさせてくれる、名前を覚えるなど、懐く様子を見せることはあります。孵化したころから人が育てた個体は比較的馴れやすくなります。また一般的に小型のフクロウは神経質で馴れにくく、大型のフクロウはおっとりした性格で馴れやすい傾向があります。

鳴き声は?

フクロウの鳴き声はおなじみの「ホー、ホー」のほかに「ホッホッホッ」「ゴロスケホーホー」などと表現されます。実はこのほかにも多様な鳴き声があり、性別や種類によって違いがあるほか、威嚇の時、お腹が空いたときなど、シチュエーションによっても異なる鳴き方をします。
フクロウは大人しいイメージがあるかもしれませんが、室内でたくさん鳴く場合があることは覚悟しておきましょう。特に繁殖期に求愛のために鳴くとき、威嚇して叫ぶように鳴くときは大きな鳴き声となることも。野生下の男の子の縄張りアピールは、2㎞先まで届く大声になることもあります。ご近所への防音対策を前提に飼育を検討した方が良いでしょう。

フクロウの寿命は?

種類によって異なりますが、比較的寿命が短い小型種でも10年以上は生きるといわれています。大型種は30年を超えて長生きすることも。最後まで責任を持って飼い続けることができるかどうか、よく検討する必要があります。

ペット飼育できるフクロウの種類

ペットとして飼えるフクロウの中から代表的な人気の種類を紹介します。

アフリカオオコノハズク

全長:約20~25cm
寿命:約10~15年

アフリカに生息する小型のフクロウ。飼育する人が多いペットとしてメジャーなフクロウです。体と頭はグレー。白い顔のまわりに黒い縁取りがあり、頭には羽角(耳のように見える飾り羽)がついています。危険を感じた時に体を細くして枝のように擬態する姿でも有名です。性格は好奇心旺盛で活発、鳴くことは少ないといわれています。

コキンメフクロウ

全長:20㎝前後
寿命:約10~15年

こちらも定番で人気がある小型のフクロウです。黒目の周囲が黄色いことから「キンメフクロウ」と呼ばれる種類があり、その中でも小柄なことからこの名前で呼ばれています。頭や背中は暗褐色の地色に白斑が散在し、胸は淡褐色の地に暗褐色の斑が縦に並びます。日中も狩りをするため活動します。性格は神経質で攻撃的になることも。鳴き声は柔らかく「ピュー」「ピョロロ」などと鳴きます。

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メンフクロウ

全長:約30~45cm
寿命:約10~15年

リンゴの断面のようなハート型の顔が印象的な中型のフクロウです。まるでお面をかぶったように見えることからこの名前になりました。夜の狩りに特化した姿を活かし、視覚よりも聴覚を頼りに獲物をとらえます。鳴き声は大きめです。性格は神経質で馴れるまで時間がかかります。

モリフクロウ

全長:40㎝前後
寿命:約15~20年

イギリスをはじめヨーロッパ全域、北西アフリカ、カスピ海周辺などの森林に生息する中型のフクロウ。おっとりした大人しい性格といわれています。体色が個体により異なり、赤褐色型、灰色型、茶色型があります。日本に生息する代表的な野生種の「フクロウ(ウラルオウル)」と近縁で、灰色型のモリフクロウは日本のフクロウ(ウラルオウル)によく似ています。

ベンガルワシミミズク

全長: 55㎝前後
寿命:約15~20年

ミナミワシミミズクと呼ばれることも。野生ではインド~ヒマラヤ山脈に生息しています。大型種の中では小柄な方でペットとして人気のフクロウです。フクロウの中でも特に聴覚が優れ、暑さに弱いため、静かで涼しい環境で飼育する必要があります。性格は好奇心旺盛ですが大人しく、人をあまり怖がらないといわれています。

飼う前に知っておきたいこと

今ではペットの選択肢が増え、フクロウを飼う人も増えてきました。ですがフクロウは長く飼育されてきたインコやニワトリなどとちがって、野性味のある猛禽類。家庭で飼うことは簡単ではありません。詳しくは本記事の後半紹介しますが、食べるものや飼育用品、接し方はほかのペットの鳥とは大きく異なります。フクロウならではの飼い方をよく理解してお迎えしましょう。
また、鳥を診察できる動物病院は限られる中、猛禽類を診察できるところはさらに少なくなります。「様子がおかしい」と思ったとき、相談・診察できる動物病院が通えるところにあるかはとても重要です。診てもらえる動物病院の情報も確認しておきましょう。

いつからお迎えする?

フクロウはヒナから飼うとよく懐くといわれ、ヒナも販売されています。ただ、ヒナのお世話は成鳥よりずっと手間がかかります。お腹の空き具合を見ながら1日に複数回ごはんをあげることと、慎重な温度管理が必要になるからです。飼育初心者や、お仕事等でお世話できる時間に制約がある場合は、若鳥と呼ばれるヒナの後のステージになってからお迎えするのがおすすめです。

フクロウの飼い方

フクロウとの暮らし方や必要なものを知っておきましょう。

必要な飼育用品

フクロウの飼育には次のものが必要です。ものによってはすぐに手に入らない場合もあるため、事前にフクロウに詳しいペットショップなどで相談し、必要なものを確認・用意してからお迎えしましょう。

◆係留飼育に必要なもの…パーチと呼ばれる止まり木のほか、アンクレット(足首部分につける足革)、ジェス(アンクレットに通す紐)、リーシュ(一方をジェスに通し、もう一方をパーチに固定する長い紐)といった専用の器具が必要です。パーチの大きさや重さはフクロウに合わせて選ぶ必要があるので、お迎えするペットショップなどで相談しましょう。

◆ファルコングローブ…鷹匠が用いる猛禽類を手に止まらせるためのグローブ。爪が鋭いため、腕に留まらせるときに使用します。また、食事などのお世話の際、防護のために豚革製の安全手袋などを使うのもおすすめです。革手袋は洗浄・消毒しにくいので、食事や排泄物などで汚れた時は思い切って廃棄して買い替えましょう。

◆水入れ…飲み水を入れる安定感のある器を用意します。器のふちにつかまってもひっくりかえらないような、しっかりした重みのあるものを選びましょう。

◆水浴び用の器…浅く水を張れる容器で水浴びをさせます。霧吹きを使用しても。

◆食事用のハサミやピンセット、バット…内臓の下処理や食事を与えるために使用します。

◆温湿度計…温度管理のためにフクロウがいる場所の近くに設置します。

◆キャリー…移動ケージとも呼ばれます。通院や災害時の避難などに使用します。猛禽類やフクロウ用のものをあらかじめ用意しましょう。

上記のほか、フンを受けるために床に敷く紙(新聞紙やキッチンペーパーなど)またはペットシーツ、掃除道具、体重測定のためのキッチンスケールなども必要になります。キッチンスケールに人工芝をカットしたものを貼り付ければ、フクロウが自ら乗ってくれることもあります。

環境の準備

フクロウは「係留(けいりゅう)飼育」といって、止まり木につないで飼うのが一般的です。ケージで飼うと自由に動けないことからストレスがたまり、放し飼いにすると逃げたり誤飲したりといった事故につながるためです。
係留飼育であれば、つながれた範囲で自由に動くことができ、飛んでいける範囲を片付けておけば誤飲の危険もありません。時々は止まり木から放して広い範囲で動ける時間を作ってあげます。その際は飼い主が絶対に目を離さないようにして、誤飲や逸走(逃げてしまうこと)を防ぎましょう。

適温は種類によって異なりますが、寒さには強いものの、暑さには弱い傾向にあります。真夏でも室温が30度を超えないように室温を調節する必要があります。シロフクロウやカラフトフクロウなどは、暑さに極端に弱く、さらに涼しくする必要があります。鳥の様子に合わせて調節しましょう。24時間365日エアコンが必要になることもあります。
トイレはある程度決まった場所でする場合もありますが、基本的に至る所でするので、できれば室温調整ができるフクロウ専用の部屋があるのが理想です。

フクロウは何を食べる?

飼育下のフクロウの食事は一般的にはマウスやヒヨコ、ウズラなどが使われます。冷凍で販売されているものを購入し、解凍してから与えましょう。マウスやヒヨコはそのまま与えることが多いですが、ウズラは内臓を処理して与える場合が多いです。食事を抵抗なく準備できるかどうかが飼育の可否の分かれ目になるでしょう。
また冷凍餌を与えるということは、これを保管する冷凍庫なども必要となります。 お迎えする前に、飼育経験者やペットショップによく相談することで、お迎えしたい子の食事内容や量、保管期間などをイメージすることができます。どれくらい冷凍庫のスペースを確保する必要があるかなど、しっかり確認しておきましょう。

お世話は何をする?

毎日のお世話は食事を与えること(1日に1~2回)、水換え、室内の掃除です。また週に1〜2回を目安に水浴びをさせます。フクロウは水浴びをすることで羽の汚れを落とし、健康を保っています。汚れ具合も見ながら間隔を調整して水浴びをさせましょう。

お手入れは何をする?

爪が伸びるので、1~2ヶ月に1度を目安にカットします。
フクロウの爪はタケノコの皮のように層状になっていて、飼育下ではその層が分厚くなってしまうことがあります。そのままにしておくと、爪が根元から折れてしまう恐れも。1年に1~2回は、厚くなった角質層を整える「コーピング」をしてあげるとよいでしょう。

ただし、コーピングを含めた爪のお手入れは難易度が高いため、動物病院やフクロウ専門店などへ相談するのがおすすめです。
また、クチバシが伸びてしまうこともよくあります。伸びた部分をカットして整えますが、顔周りのお手入れは警戒心を抱かせやすく、かみ合わせの調整も必要なため、かなりの技術が必要です。こちらも動物病院や専門店などに依頼するほうがよいでしょう。

まとめ

フクロウは個性的で魅力的なペットであることは間違いありませんが、小鳥と比べると上級者向け。決して飼いやすい鳥ではありません。飼い続けることができるか、しっかりと検討する必要があります。さまざまな懸念点をクリアして迎えることができれば、可愛らしい仕草や猛禽類ならではの格好良さで、日々を楽しませてくれるでしょう!

監修獣医師

中道瑞葉

中道瑞葉

2013年、酪農学園大学獣医学科卒。動物介在教育・療法学会、日本獣医動物行動研究会所属。卒後は都内動物病院で犬、猫のほか、ハムスターやチンチラなどのエキゾチックアニマルも診療。現在は、アニコム損保のどうぶつホットライン等で健康相談業務を行っている。一緒に暮らしていたうさぎを斜頸・過長歯にさせてしまった幼い時の苦い経験から、病気の予防を目標に活動中。モットーは「家庭内でいますぐできる、ささやかでも具体的なケア」。愛亀は暴れん坊のカブトニオイガメ。