皆さんは猫がお尻を高くあげる姿を見たことがあるでしょうか? 伸びをしたときや、飼い主さんに撫でられているときなど、猫のお尻が上がるシーンは意外とよく見られます。
ではなぜ、お尻を高くあげるのでしょうか?

猫がお尻を高くあげる理由

まず「どんなときにお尻を高くあげているのか」について考えてみたいと思います。

猫と暮らしている人が「お尻をあげてるな」と気がつく、気になるタイミングで多いのは、やはり撫でているときではないでしょうか。
「頭からお尻にかけて撫でていると、だんだんとお尻が上がってくる」、「尻尾の付け根や腰のあたりを軽くトントン叩くとお尻が上がる」といったところだと思います。

しかし、猫がお尻をあげるタイミングはそれだけではありません。

・発情期
・伸び
・すり寄って来たとき
・爪とぎ
・獲物を狙っているとき
・撫でてほしいとき

などさまざまなタイミングで見られる体勢です。そして、そのタイミングごとによって「お尻を高くあげる理由」は異なります。

発情が関係している?

猫は発情期になると男の子は女の子を探し求め、女の子は男の子を受け入れる準備をします。
どちらも、マーキング行動が増えるのですが、その中にお尻を高くあげ、おしっこをかける「スプレー行為」というものがあります。

また、女の子は伏せた状態からお尻だけをあげる「ロードシス」と呼ばれる姿勢をするようになり、この行動が見られると男の子を受け入れる準備ができたという合図です。

発情期中は他にも、落ち着きがなくなる、大きな声でなく、攻撃的になる(男の子)、床に身体をこすりつける(女の子)といった行動が見られるので、見極めるポイントとして覚えておくとよいでしょう。

単なる伸び

寝起きや長く同じ姿勢をとった後など、身体をほぐすときに見られる伸び。このときにもお尻を高くあげる姿勢をとることがあります。

伸びのときには、固まっている身体をほぐし動く準備をするという理由があるので、前足を遠くに伸ばして背中を伸ばしたり、反対に背中を反って胸前を伸ばしたりと複数の動きの中にお尻を高くあげるという動作が見られます。

すり寄って来たとき

猫が足元などにすり寄って来たときにも、頭を下げてお尻を高く上げる姿勢になることがあります。

猫がこのようにすり寄って来るのにも理由があり、一つは顔回りの分泌腺から出るにおいを大好きな飼い主さんやテリトリーなどにこすりつけるマーキング行動です。

飼い猫の場合は、飼い主さんの帰宅時やお風呂上がりにスリスリすることが多いのではないでしょうか。
外のにおいをつけて帰って来たり、入浴後に石鹸のにおいがしたりすると、自分のにおいをつけるために頭や顔をこすりつけてマーキングするのです。

また、仲の良い猫同士の挨拶でも同じような行動が見られます。
飼い主さんにも同じように挨拶としてすり寄ってきたり、甘えたいときにも見られます。

爪とぎ中に見られる

壁やキャットタワーの支柱部分など垂直な爪とぎでは、見られない(わかりにくい)ですが、床に置くタイプの爪とぎでは、後ろ足でしっかり身体を支え上半身は低く力強く爪をとぐ姿勢が見られます。

獲物を狙っているとき

猫じゃらしやポインターなどで遊んでいるとき、姿勢を低くして様子をうかがい飛び出す直前にお尻をフリフリする姿が見られます。
このとき、猫によってはお尻を高くあげて飛び出す子がいます。また、獲物の素早い動きに対応するように追いかけているときには、下半身を軸に華麗な身のこなしで獲物を狙うので「お尻を高くあげている」ように感じられるでしょう。

お尻をトントンしてほしい

猫を撫でているとだんだんとお尻があがってくることがあると思います。猫によっては、飼い主さんが撫でる前から目の前でお尻を向けてくる子もいるでしょう。

猫は腰回りを優しくトントンとされると気持ちがいいようで、好きな子が多いです。撫でているときにお尻があがってきたり、猫の方からおねだりする場合は力加減に注意してトントンしてあげて大丈夫です。

ただし、腰やしっぽの付け根は神経が密集しているので、嫌がる猫もいます。急に触ったり強い力でトントンすると、噛まれたりひっかかれたりすることもあるので注意しましょう。

猫がお尻を高くあげていたらどうしたらいい?

お家の中で猫がお尻を高くあげているシーンを見ることもあるでしょう。
先に説明したように、猫がお尻を高くあげる理由は一つではありません。

前後の様子や、まわりの環境などをよく見て対応することが大切です。

理由を見極めて対応

甘えて来ている場合には、それに応えるように撫でたり腰のあたりをトントンしてあげてOKです。もちろん毎回おねだりに応えてあげる必要はないので、そこは飼い主さんの都合に合わせてもらいましょう。

おもちゃで遊んでいるときや爪とぎをしている最中、伸びをしているときは、触ったりせずに猫の好きなように過ごさせてあげるのが一番です。

上記で挙げたシーンについては、何か特別に対応しなくてはいけないということはありませんが、発情期によってお尻を高くあげている場合には対応が必要になってきます。

おしっこをかけるスプレー行為は、お家の中の壁や家具などにマーキングされてしまう可能性が高く、通常のおしっこよりもにおいが強いので1回のスプレー行為でにおいが付いてしまいます。
事前にペットシートを貼っておいたり、広めのケージで行動制限をしてケージの回りだけおしっこ対策をとるなどの必要があります。

また、去勢していない猫同士ではケンカが起こりやすくなりますし、避妊・去勢をしていない猫を多頭飼育している場合には、交配してしまいます。
多頭飼育の場合は部屋を分ける、ケージで棲み分けをするなどの対応が必要になります。交配させる予定がないのであれば、発情期が来る前に避妊・去勢をしておく方が安心です。

猫がお尻を高くあげているときにしてはいけないことは?

大切なのはなぜその姿勢をとっているのかの見極めです。
もし、「撫でてほしそうにしている」と思ったときでも、急に触ったり、強い力で触ったりせず、猫の様子を見ながらやさしく撫でたり、トントンしてあげましょう。

もしも、触っているときに猫が嫌がる様子が見られたらすぐにやめて、執拗にしないことが猫との良好な関係を築くうえでも大切です。

まとめ

「猫のお尻があがっている」と一口に言っても実際はいろんなシーンで見られ、理由も異なります。
触れ合いやおもちゃを使ったコミュニケーションは、猫にとっても飼い主さんにとっても大事な時間です。

しかし、一緒に生活する中で意識してほしいのは「猫の様子を良く見る「観察する」ということです。観察することが当たり前になると、「あ、今は撫でてほしいのだな」とか、「今はひとり遊び中なのね」というように猫の取る行動や姿勢の理由がすぐに分かるようになります。

気になる行動や状況があったときにはメモや写真、動画などで記録しておくと、後で見返すことができますし、動物病院へ行ったときにも質問しやすくなるのでおすすめです。

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監修獣医師

長根あかり

長根あかり

大学で動物行動学やアニマルセラピーを学ぶ。保護犬を家族に迎えたこと、野良猫の保護をした経験から、「保護犬・猫について」や「正しい飼い方」の情報発信の必要性を感じ、大学卒業後はペットメディアで勤務。その後はフリーライターとして執筆活動しながら保護シェルターで働き現状を知る。現在は、動物ライターとしての執筆活動のほか、ドッグトレーナーとして飼い主さんとワンちゃんの暮らしが良くなるように、アドバイスやトレーニングを行っている。