栄養豊富で古来より健康や美容にもよいと言われてきたはちみつ。日々の食事や生活に取り入れている方も多いと思います。はちみつのほっこり優しい甘さは私たちを幸せな気持ちにしてくれますよね。一緒に暮らす犬にもはちみつを与えたいと思われる飼い主さんも多いと思いますが、犬にはちみつを与えても大丈夫なのでしょうか。今回は、犬にはちみつを与えるメリット、与えるときの注意点などをご紹介します。

はちみつとは?

はちみつは、みつばちが花の蜜を集めて巣に持ち帰り、唾液に含まれる酵素で花の蜜の主成分のショ糖を果糖とブドウ糖に分解し、濃縮、熟成して作られます。はちみつは紀元前6000年頃という大昔から、天然の甘味料として、食用だけではなく、薬や化粧品など、様々な用途で人々に利用されてきました。

成分

はちみつの種類によっても多少異なりますが、約80%は糖類(ブドウ糖と果糖)で約20%が水分です。その他、ビタミン(ビタミンB1、B2、パントテン酸等)やミネラル(鉄、ナトリウム、カリウム等)、アミノ酸、有機酸、酵素、ポリフェノールなどの成分が少量含まれています。

はちみつの効能

はちみつには、次のような健康によい効果があると言われています。

早急なエネルギー補給源になる

はちみつに含まれる糖類は、単糖類であるブドウ糖と果糖が主成分です。これらの糖は体内で分解される必要がないため消化吸収が早く、早急なエネルギー補給に役立ちます。

砂糖と比べて低カロリー

上白糖のカロリーは100gあたり391kcalですが、はちみつは329kcalです。また、はちみつは甘味が強く、砂糖の半分の量で同じ程度の甘味を感じると言われています。

抗菌作用

はちみつは糖の濃度が高く水分が少ないため、細菌の生育を抑える作用があります。また、はちみつに含まれるグルコン酸にも、抗菌効果があることが知られています。

ニュージーランドに自生するマヌカの蜜でできた「マヌカハニー」は、メチルグリオキサールという強力な抗菌効果を持つ独自の物質を含んでいて、他のはちみつよりも高い抗菌作用があります。グルコン酸は体内に入ると作用が失われるため、抗菌効果が期待できるのは外傷に対してのみですが、メチルグリオキサールは体内でも効果を示し、胃腸疾患や口腔疾患、風邪、皮膚疾患などにも有効と言われています。また、メチルグリオキサールは抗ウイルス活性を持つことも報告されています。

創傷治癒促進効果

抗菌作用に加えて、はちみつのとろみが保護膜を形成し、傷口の乾燥を防いで湿潤環境を維持することで、治癒を促進すると言われています。

腸内環境を整える効果

はちみつに含まれるオリゴ糖やグルコン酸は腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整える効果が知られています。

抗酸化作用

抗酸化作用を持つポリフェノールやフラボノイドが含まれています。

この他にも、免疫力を高める作用、睡眠の質を改善する作用など、様々な有用な作用が認められていて、その薬効や応用について研究が行われています。

犬にはちみつは安全?与えても良い条件とは

そもそもはちみつは犬に有害?

人と同様に、はちみつは犬にも健康に良い効果が期待できる可能性はありますが、現在のところ犬に対してどの程度の量のはちみつがどのような効果をもたらすかを詳細に調べた報告はありません。はちみつだけに効果を頼りすぎることなく、栄養バランスの取れた食事やサプリメントなどと併用しながら利用するのがよいと思います。また、与え方にはいくつか注意しなければならないことがあります。

1歳未満の子犬や免疫力の低下している老犬には与えない

はちみつにはボツリヌス菌という細菌の芽胞が混入していることがあり、人では1歳未満の乳児には与えてはならないという通達が出されています。腸内の環境が整っていない乳児では、腸内でボツリヌス菌が増殖し、ボツリヌス菌が産生する毒素によって神経症状や麻痺症状が起こることがあるためです(乳児ボツリヌス症)。1歳を過ぎると腸内の環境が整ってボツリヌス菌が増殖することがなくなるため心配はありませんが、免疫力が低下している人では念のため注意が必要と言われています。ボツリヌス菌の芽胞は熱に強いため、通常の加熱調理をしたものであっても安全とは言えません。


犬の場合も同様に、腸内環境の未熟な1歳未満の子犬には与えない方がよいでしょう。老犬は基本的には問題ありませんが、免疫力が低下しているときや胃腸に疾患があるときは念のため控えた方がよいでしょう。心配な場合は主治医の先生と相談しましょう。

摂取量に注意

はちみつは砂糖と比べれば低カロリーですが、糖分を含む高カロリー食品のため、摂取量には注意が必要です。与えすぎると、肥満になることがあります。
また、犬は甘味を好むため、はちみつを与えすぎると主食のドッグフードを食べなくなってしまうこともあります。栄養バランスが崩れる原因になりますので注意が必要です。

疾患のある犬は注意

次のような疾患を持っている犬や治療中の犬ははちみつの摂取に注意が必要です。

アレルギー疾患のある犬

はちみつは、みつばちが花の蜜を採取して作られるので、その植物の花粉が混入している場合があります。特定の花粉に対してアレルギーを持っている犬や、いろいろな物質にアレルギーを起こしやすい体質の犬では、アレルギーの症状が起こる可能性があるので注意が必要です。はちみつを食べた後に、下痢や嘔吐、目や口、耳の周りなどが赤い、体を痒がるなどの様子が見られる場合はアレルギー症状の可能性もあるので、摂取を中止して受診しましょう。

糖尿病の犬

はちみつは糖類を多く含んでいるので、血糖値を上昇させます。糖尿病で食事療法やインスリン療法を行っている犬では、血糖値のコントロールに影響が出るので、与えない方がよいでしょう。

抗がん剤や免疫抑制剤で治療中の犬や病気で免疫力が低下している犬

がんや自己免疫疾患などの治療中で、抗がん剤や免疫抑制剤など免疫力を低下させる薬を使っている犬や、病気で免疫力が低下している可能性のある犬では、ボツリヌス症のリスクが高くなるので、与えない方がよいでしょう。

胃腸疾患や抗生物質による治療などでお腹の調子の悪い犬

はちみつは腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整え、お腹の調子を改善してくれる効果が期待できますが、腸内環境の状態によっては、ボツリヌス症を発症するリスクが高くなることもあります。胃腸に疾患がある犬やお腹の調子の悪い犬では、主治医の先生に相談してから与えるようにしましょう。

犬にはちみつを与えるメリット

エネルギー補給と疲労回復に役立つ

はちみつの主成分であるブドウ糖と果糖は、単糖類と言って、これ以上体内で分解される必要がない糖のため、胃腸に負担を与えずに速やかに消化吸収されて、エネルギー補給や疲労回復に役立ちます。もともと小食の犬や、ストレスや夏バテなどで食欲が落ちている犬、高齢犬や病気で食事量が減ってしまっている犬などの栄養補給に利用するとよいでしょう。特に、腎臓病などで食事中のタンパク質を制限しなければならない場合のエネルギー補給に、はちみつの糖分が役立ちます。ただし、病気の種類や進行状態、犬の全身状態によっては、はちみつを控えた方がよい場合もあるので、主治医の先生に相談してから与えるようにしましょう。

抗菌作用と免疫力サポート

はちみつには、抗菌作用や腸内環境を整える作用があることが知られています。口腔内の健康を保つ効果や、お腹の調子を整え免疫力をあげる効果などが期待されています。ただし、犬で安全に与えられるはちみつの量でこのような効果を期待することができるかどうかは、今のところわかっていません。

食欲増進・おやつ代わりとしての活用

犬は甘味を好むことが多いので、食事に少量混ぜることで食欲増進に役立つ場合があります。おやつとしてそのまま与えたり、手作りのおやつの材料として利用することもできます。しつけに利用したり、特別なご褒美として与えるなど、飼い主さんと犬のコミュニケーションに役立ちます。

飲水量を増やす

夏の熱中症予防、膀胱炎や尿石症など尿路疾患の予防、便秘予防など、水分をたくさん摂ってほしいときに、飲み水に少量はちみつを混ぜると、水をよく飲んでくれるようになることがあります。ただし、病気の治療中の場合は主治医の先生に相談してからにしましょう。

愛犬に与えるはちみつの種類と適量

はちみつの選び方

はちみつには、「レンゲはちみつ」「アカシアはちみつ」など花の種類による区分の他に、製造方法によって次のように分類されています。

純粋はちみつみつばちが花から集めたそのままのはちみつで、加温処理以外の加工を行っていないもの
加糖はちみつみつばちが集めた蜜に、砂糖や水あめなどを加えて加工したもの
精製はちみつみつばちが集めた蜜を加熱して、香りや色、花粉などを取り除き、はちみつの甘味だけを抽出したもの

どの種類も与える際の注意点を守れば、犬に与えていけないというわけではありませんが、はちみつ本来の栄養を効果的に摂取するためには、「純粋はちみつ」を選ぶとよいでしょう。加工されたはちみつには添加物が多く含まれていることもありますが、無添加の「純粋はちみつ」であれば安心して与えられます。

通常、はちみつは製造の過程で、異物をろ過する工程の前に、結晶化したはちみつを溶解するために湯せんなどの方法で加温処理されます。一般的に行われる湯せん程度の温度では栄養学的な影響は少ないと言われますが、商品によっては高温で長時間加熱処理されるものもあり、このようなはちみつは風味や栄養成分が失われてしまっている可能性があります。加熱処理を行わない「非加熱」や「無濾過」のはちみつであれば、はちみつそのままの栄養や風味を楽しむことができます。

また、日本国内で流通しているはちみつには、国産のものや外国産のものなど様々な製品があり、品質もいろいろです。過去に、はちみつから抗生物質や基準値を超える除草剤のグリホサートなどが検出されるということがありました。生産地や採取地を明記している、安全性の基準を設けているなど、品質管理を徹底している、信頼できる生産者やブランドのはちみつを選ぶことが大事です。

マヌカハニーの選び方

強い抗菌効果を持ち優れた健康効果が期待されるマヌカハニーも、一般的なはちみつと同じ注意点を守れば、犬に与えても大丈夫です。ただし、犬でも人と同じような健康効果があるかどうかは、今のところまだわかっていません。そもそも犬に与えても大丈夫なはちみつの量はごくわずかなため、これだけに効果を期待しすぎないようにしましょう。

マヌカハニーとしていろいろな製品が販売されていますが、品質もいろいろで、中には偽物や低品質のものもあると言われています。購入時には品質の良い本物のマヌカハニーかどうかを見極めることが大事です。本物のマヌカハニーは希少価値が高いためそれなりの価格が設定されています。格安の商品は偽物の可能性もあるので注意しましょう。また、ニュージーランド政府公認の証明書がついているかどうかを確認しましょう。「UMF」や「MGO」はニュージーランド政府が認証したマヌカハニーの主要成分の評価基準なので、パッケージにこの表示があるものを選ぶとよいでしょう。

与える量の目安 1日の適量を体重別に解説

はちみつは犬にとって主食ではなく、間食(おやつ)になります。一般的に、主食(総合栄養食)の栄養バランスを崩さないためには、間食は1日の総摂取カロリーの1割以内にとどめることがすすめられます。

1日の総摂取カロリー目安の1割をはちみつの量に換算すると次のようになります。

体重(kg)はちみつ(g)
37.8
511.4
1019.2
1526.0
2032.2
3043.6

※去勢・避妊済みの成犬の場合
 はちみつ100gあたり329kcalとして計算

これは主食以外の間食をすべてはちみつで摂ると仮定した場合の最大値の目安であり、犬の体型、体質、運動量などによっては、この量のはちみつは過剰摂取になり肥満の原因になる可能性があります。現在のところ、体に対する影響や効果の面で、犬がどの程度の量のはちみつを摂取するのが適当なのかは、わかっていません。ただ、はちみつの成分のほとんどが糖質であること、甘味が強く嗜好性が高いことを考えると、他の副食やおやつと合わせて量を減らして与える、毎日ではなく特別なご褒美としてたまに与える、など、少量を様子を見ながら使っていただくことをおすすめします。ちなみに、人で一般的に推奨されているはちみつの1日の摂取量は20~40g程度です。

はちみつの加工品は与えて大丈夫?

摂取量に注意する、子犬や免疫力の低下している犬には与えないなど、はちみつを与える際の注意点を守れば、はちみつの加工品であっても犬に与えることができます。ただし、人間用に加工されているはちみつ入りの加工品は、犬にとっては糖分や塩分が多かったり、添加物や犬に有害な成分が含まれている可能性もあるので、注意が必要です。犬に与える場合は、「犬用」として作られているものの方が安心です。

はちみつ入りクッキーやパンを与えるときの注意点

犬にはちみつ入りクッキーやパンを与えても大丈夫ですが、人間用のものははちみつの含量が多かったり、塩分や添加物、犬に有害な成分などを含んでいる可能性があります。犬用に販売されているものや、犬用に手作りしたものを与えるようにしましょう。

はちみつレモンや梅干しはOK?

レモンはビタミンCやクエン酸、ビタミンB群など、犬の健康に役立つ栄養素を含んだ果物です。犬に与えても問題ありませんが、レモンの種や皮は消化に悪く、また、皮に防カビ剤などの成分が付着している場合もあるため、皮や種を取り除いて果肉の部分だけを与えることがすすめられます。皮や種を取り除き果肉の部分だけを使用したはちみつレモンであれば、犬に与えても大丈夫ですが、レモンの酸っぱさが苦手な犬もいるので、無理強いはしないようにしましょう。

はちみつを加えて漬けたはちみつ梅干しは、犬に与えていけないわけではありませんが、糖分も塩分も高いため注意が必要です。与えるとしてもごく少量にし、高齢犬、心臓や腎臓の悪い犬、塩分制限が必要な犬には与えないようにしましょう。梅干しの種は誤って飲み込むと窒息や腸閉塞の原因になることがあり、また、種を大量に摂取したり、かみ砕くと中毒の危険もあるため、必ず種は取り除いてから与え、盗み食いや誤食にも十分注意して下さい。

おすすめの与え方

フードやおやつに混ぜる

フードやおやつに混ぜて与えると、食欲が落ちているときにはよいカロリー源になるだけではなく、風味が変わって、食欲が増進する可能性もあります。

薬を嫌がるときに混ぜて与える

犬が薬を飲むのを嫌がるとき、はちみつに混ぜると喜んで飲んでくれることがあります。粉薬や液体の薬はそのまま、錠剤は砕いて、カプセルは中身をあけて、はちみつと混ぜて与えることができます。ただし、薬の種類によっては、他のものと混ぜたり、錠剤を砕いたりカプセルをあけたりすると、薬の効果や吸収率が変わったり、余計に苦みが増してしまったりするようなものもあるので、必ず主治医の先生に相談してからにしましょう。

まとめ

犬ははちみつを食べても大丈夫ですが、子犬や免疫力の低下している犬、肥満気味の犬や糖尿病の犬などには与えないようにしましょう。はちみつは早急なエネルギー補給源となるほか、抗菌作用、抗酸化作用、腸内環境を整え免疫力をあげる作用など、様々な効果が期待されますが、犬に対するはちみつの効果や適正な摂取量は今のところわかっていません。はちみつだけに頼るのではなく、栄養バランスの取れた食事に気をつけながら、上手に利用しましょう。

監修獣医師

岸田絵里子

岸田絵里子

2000年北海道大学獣医学部卒。卒業後、札幌と千葉の動物病院で小動物臨床に携わり、2011年よりアニコムの電話健康相談業務、「どうぶつ病気大百科」の原稿執筆を担当してきました。電話相談でたくさんの飼い主さんとお話させていただく中で、病気を予防すること、治すこと、だけではなく、「病気と上手につきあっていくこと」の大切さを実感しました。病気を抱えるペットをケアする飼い主さんの心の支えになれる獣医師を目指して日々勉強中です。