みなさんは、「猫は固体であり液体である」という話が大きな話題となったのをご存知でしょうか。きっかけはイグノーベル賞に選ばれた研究だったのですが、なぜ猫が液体だと言われることになったのでしょうか。猫の身体の柔軟性について解説します。
イグ・ノーベル賞で「物理学賞」を受賞した「猫は粘度の高い液体」説

猫の液体説がニュースになったのは、2017年のイグ・ノーベル賞で物理学賞を受賞したフランスの研究者マーク・アントワン・ファルダン氏の研究によるものです。
この年のテーマは「不確実性」で、マーク・アントワン・ファルダン氏は「液体とは容器に合わせて形を変えるもの」と説明した上で、猫も容器に合わせて形を変えるため液体なのではないか?と発表しました。
猫と暮らしている方はよく知っていると思いますが、猫には狭い場所が好きという習性があります。猫鍋をはじめ空き箱やカゴなど、一見そんなところに入れないと思うような容器にも、上手に身体をしまいこみますよね。
マーク・アントワン・ファルダン氏は「猫は固体か液体か」という今回の研究を「レオロジー(流動学)で実際に研究されている疑問や問題の一部」を証明するための重要な試みだと説明しました。
イグ・ノーベル賞とは
イグ・ノーベル賞とは、「人々を笑わせ、そして考えさせる研究」に贈られる賞です。
1991年、マーク・エイブラハムズ氏によって創設されたノーベル賞のパロディで、毎年テーマが決められその中から10部門ほど選出されます。
「猫は個体かつ液体である」と発表
マーク・アントワン・ファルダン氏は自身の研究であるレオロジーの分野で「On the rheology of cats(猫の流動学について)」という論文を発表しました。
論文の内容も面白く、「猫の三態(固体、液体、気体)」について書かれていたり、「猫のレオロジーと表面物理学」、「猫の回転的性質(非線形性)」さらには、日本の猫カフェについても触れられています。
「On the rheology of cats」
http://www.drgoulu.com/wp-content/uploads/2017/09/Rheology-of-cats.pdf
猫が液体のように見える理由

猫が液体のように見えるのは、身体がとても柔らかく器に合わせてその形を変えるためです。
ではなぜ、猫はそんなにも身体が柔らかいのでしょうか?
猫の骨格構造の特徴
猫の身体の柔らかさの理由のひとつが骨格構造です。
人間がおよそ200本の骨を持っているのに対し、猫は240本と小さい身体でありながら、人間よりも多くの骨を持っています。
肋骨は左右ともに13本ずつで、猫は人間よりも1本ずつ多く、腰椎は人間よりも2本多く持っているために、脊柱を柔軟に動かすことが可能です。
また、肩甲骨と鎖骨にも大きなヒミツがあります。
猫の肩甲骨は、人と違って首の後ろ側にあるため、足の動きに従って自由に動かすことができます。そして猫の鎖骨は退化しているため、とても小さく他の骨と繋がっていないので、柔軟に動かすことができ、狭い場所であっても頭が通れば全身が通り抜けられるのです。
猫の伸縮性
猫の両脇を抱えて持ってみると、みょーんと伸びるのをご存知でしょうか?
実は狭い場所に身体を収めるだけでなく、通常時に比べて伸びることができるのも、猫が液体といわれるポイントです。
そのポイントとなる3つについて解説します。
①「プライモーディアルポーチ(Primordial Pouch)」
聞き慣れない言葉ですが、猫が歩くたびに、たぷんたぷんと揺れるお腹の部分と言えば想像しやすいのではないでしょうか。
プライモーディアルポーチとは、英語で「原始的な袋」という意味で、野生の猫科に見られ、日本では「ルーズスキン」とも呼ばれています。
このルーズスキンは一見すると脂肪かなと肥満を気にしてしまいますが、実はたるんだ皮膚です。
役割としては、外敵からお腹を守るためであったり、身体の動きをスムーズにするためであったり、食料の貯蔵などと言われています。
②猫の食性
猫は完全肉食性であるため、腸の長さが他の雑食性や草食性の動物と比べ短くなっています。そのため守るべき内蔵が小さく、大きく身体を丸めたり、捻ったりすることが可能なのです。猫背であることも身体の柔らかさを表していると言えるでしょう。
③猫の姿勢
猫が通常四つ足で立っている時に、地面についている足の裏は実は指で、猫は常に爪先立ちをしている状態。
さらに、後足の中足骨は前足の中手骨の約2倍の長さがあるため、普段は中腰の姿勢、しゃがんだような姿勢でいるということです。
骨をつなぐじん帯が柔軟
猫の骨格や皮膚以外にも大事な部分がじん帯と椎間板になります。
どちらも柔軟であるために、可動範囲が大きく自身の身体をきれいに舐めるなどの動きができるわけです。
液体猫として有名になった猫

イグ・ノーベル賞の発表によって、おそらく猫と暮らしている人たちが「なるほど!確かに(笑)」と思いながら、さっそく試してみようといろいろな器を用意したのではと思います。
そんな中で一躍有名になった猫さんたちを紹介します。
動画やCMで液体化を説明してくれた猫たち
YouTubeやInstagramで人気の液体猫はスコティッシュ・フォールドの「まる」さん。
「絶対に無理でしょ」と思うような金魚鉢にきれいに収まって液体になって見せ、そして「どうやって出るんだろう・・・」という心配をよそに、スルスルと固体に戻っていく姿にまるでマジックを見ているような不思議な気持ちにさせてくれます。
YouTubeやInstagramでは金魚鉢以外にもたらいや四角い箱、バケツなどに入っている姿をみることができます!透明な容器なので液体っぷりを見られるのもいいですね。
次は「通販生活」のCMに登場していた3頭の猫ちゃん。
X(旧Twitter)アカウントで人気がある「猫は液体(みかんとじろうさんち)」さんが飼われているブリティッシュショートヘアのあんみつちゃん、てんぷら君、とんかつ君が撮影に協力してくれたのだそう。
CM放送ということもあって、猫を飼っていない人も興味を引かれた映像だったのではないでしょうか。
まとめ
猫が液体のようになれる理由は、骨格はもちろんのことながらジャンプやダッシュといった瞬発性と、高いところからの着地も負担なくできる猫の身体能力と考えてもいいのではないでしょうか。
SNS上では、猫たちがいろいろな器に入って液体化した動画や写真がアップされています。
お家の猫ちゃんで試してみるときには、決して無理やり入れたり、容器が倒れたり転がったりしないように安全に配慮して可愛い写真を撮ってくださいね。
