動物園や牧場で会うことができるダチョウ。飛べないことで知られ、世界最大の鳥としても有名です。しかし、ダチョウのすごさはそれだけではありません! 実は体の大きさのほかにも、いくつも世界一の特徴を持っているのです。そんなダチョウの特徴やマメ知識を紹介します。

ダチョウってどんな鳥?

ダチョウは飛ばずに歩行する「走鳥(そうちょう)類」の仲間。ダチョウ目ダチョウ科に分類されます。大きなものでは頭頂までの高さが約2.5m、体重は約150㎏にもなり、現存する鳥の中で最大です。

野生ではアフリカのサバンナや砂漠に生息します。天敵はライオンやハイエナ、チーターなど。飛ばない代わりに高速で走って天敵から逃げています。それでも追いつかれると、筋肉が発達した強靭な脚や鋭い爪で反撃することも。

基本的に草食で草や実を食べますが、昆虫やトカゲなどの生物を食べることもあります。

おもに一夫多妻の家族単位の群れで生活をしています。繁殖の季節になると、父親は羽を広げてダンスをして求婚。巣は共用で、母親たちは同じ場所に卵を産みます。卵は群れの大人が交代であたためます。抱卵の期間は45日ほど。ヒナは体重1㎏ほどで孵化し、その日のうちに目が開いて自分で歩くことができます。そして1年ほどで大人と同じ大きさに成長し、3歳前後で繁殖ができるように。

寿命は野生下で50~60年、飼育下で20年ほどといわれています。(最長飼育記録22年:2025年1月時点)

ダチョウのマメ知識

知れば知るほどミステリアスな鳥、ダチョウのマメ知識を紹介します。

卵の大きさも世界最大!

ダチョウは卵も大きく、長径は約15cm、重さはなんとおよそ1.5㎏! 一般的なニワトリの卵20~25個分に相当します。殻も厚くて固く、人間の大人が載っても割れません。割るためには石やハンマーが必要になるほどです。世界一大きな卵ですが、実は母親の体重と卵の重さの比率は最小。小さく産んで大きく育てるタイプです。もし、ダチョウがニワトリと同じ比率で卵を産んだら…?120㎏のお母さんがニワトリと同じように体重の3%の卵を産んだとしたら、その重さは3.6㎏になります。

眼の大きさは陸上動物で最大!

ダチョウのお顔を見ると、とても大きな瞳が印象的です。その眼球の大きさは約5㎝。なんと陸上動物で最大の眼になります。陸上動物で最も体が大きいゾウの眼球は約4㎝、ほ乳類で最も眼が大きいウマの眼球は4.5㎝ほどです。ちなみにダチョウの眼球の重さは60gほど。脳は40gほどなので、脳よりも目の方が重くなっています。野生ではこの大きな目で遠くを見渡し、天敵を見張っています。視力は20~25程度といわれ、最強の視力ともいわれています。

指の数は2本だけ

大半の鳥は4本の指があります。手先が器用なインコやオウムの指も4本です。ところが、ダチョウの指はたった2本。地面を走る生活に適応していくうちに2本になりました。飛ばない鳥の仲間に3本の鳥はいますが、2本まで減ったのはダチョウだけ。この特徴から、2月2日が世界ダチョウの日(World Ostrich Day)と定められました。この日はダチョウのことを祝い、ダチョウの情報や写真、アートなどを共有する日となっています。

走る速さは2本足のどうぶつで最速

飛ぶことをやめて走ることに特化したダチョウ。その最高時速はおよそ70㎞にもなります。これは鳥類最速で、2本足のどうぶつの中でも最速です。速いうえに持久力もあり、時速50㎞以上で最大30分もの間走り続ける姿が観察されています。歩幅も広く、走っているときは1歩でおよそ5メートルも進みます。

ほかの飛べない鳥と祖先は同じ

ダチョウと同じ走鳥類の仲間にエミューやヒクイドリ、レア、キーウィがいます。これらは同じ祖先から進化した種で、その祖先は飛ぶことができる鳥でした。その祖先が飛行してアフリカやオーストラリア、ニュージーランドの各大陸に移動。その後、それぞれの場所で飛ぶことをやめて現在の姿へ進化し、さらに巨大化したことがわかっています。ダチョウはその中でも、比較的早い段階で現在の種に分かれた原始的な仲間です。

頭は良くないって本当?

ダチョウはよく「3歩歩くと忘れる」「自分が産んだ卵を忘れる」などといわれ、頭は良くないというイメージが浸透しています。「ダチョウは天敵が近づくと砂に頭を埋める」というエピソードも古くから伝わってきました。その理由は「自分から見えないものは相手からも見えないと思っているから」といわれ、不注意・不用心の象徴とされました。英語では「頭隠して尻隠さず」という意味のことわざでダチョウが登場します。ダチョウを意味するostrichという単語には「現実逃避をする人」という意味も。ここまでダチョウのイメージを悪くしてしまったエピソードは、今ではほかの目的で頭を下げた瞬間を勘違いしたものとされています。消化を助けるための小石を飲み込む姿や、卵を転がすために頭を地面の巣に入れた姿を見間違えられた可能性があります。脳が体重の割に小さめであること、さらに眼球よりも小さいことも、頭が良くないと思われる一因のようです。

野生のダチョウは警戒心が高く、群れに近づくことは難しいといわれます。優れた視覚や聴覚から得る情報を処理して、早い段階で危険を察知できるからです。また砂漠やサバンナの限られた水場の位置を記憶していることもわかっています。一方で、飼育下のダチョウは好奇心を持って人間に近づいてきます。厳しい環境で生き残り、好奇心も旺盛なダチョウは、本当に頭が良くないといえるでしょうか。古代エジプトでは、ダチョウは「平等」や「正義」の象徴でした。伝承やイメージに囚われず、ダチョウをよく見て考える必要があるでしょう。

まとめ

ダチョウのマメ知識を紹介しました。ダチョウは世界一の特徴をたくさん持つ一方、知性などわかっていないことも多く、謎の多い鳥です。動物園や牧場で会うときは、上で紹介したことも思い出しながら、独特の姿や行動をよく観察してみてくださいね。

ライター

佐藤華奈子

佐藤華奈子

大学の動物系学科を卒業後、教育情報誌、ライフスタイル誌の編集プロダクション勤務を経て、2009年よりフリーランスの動物ライターに。「動物を飼うことは動物と暮らすこと」をテーマに活動中。おもにペット、動物園、牧場の動物関連の雑誌、書籍などで執筆。2011年よりうさぎ(ネザーランドドワーフ)と暮らしている。