これから鳥をお迎えしたい人にとって、鳥はどのくらいなつくのか、なつかないこともあるのか、気になるところですね。「手乗り」「肩乗り」という微笑ましいワードを聞く一方で、「なついてもらえなくて困る」という飼い主の声もあります。鳥がなつくとはどういうことなのか、なついてもらうためにできることは何か知っておきましょう。

鳥は飼い主になつく!

もちろん、鳥は飼い主になつきます。ペットとして飼われている鳥の多くは野生では群れで行動し、夫婦で協力して子育てをすることもあり、高い社会性があります。基本的に飼い主になつき、コミュニケーションをとることも可能です。ペットとして飼われている鳥の多くはその素質を持っています。

鳥はなつくとどうなる?

鳥がなつくと、近づいても逃げないばかりか、飼い主の後を追ってくるようになります。またなでられることを喜び、自分からなでてほしいと要求することもあります。飼い主の手や肩にとまるほか、頭にとまって髪の毛を毛づくろいをしてくれることも。手にクチバシをこすりつけることや、甘噛みをすることもあります。よくなついた子は飼い主の手の中で眠ってしまうこともあるほどです。

鳥には個性があり、なついても必ずこうした行動をとるわけではありません。ベタベタに甘えることはしない子もいますが、少なくとも飼い主を嫌がらず、名前を呼ぶと返事をするような様子があれば、なついているといえるでしょう。

獣医師

アニコムグループ獣医師 渡邉先生より

私も愛鳥家なので、なつくかどうかで悩まれる飼い主さんのお気持ちはよくわかります。理想のなつき度を追い求めるのではなく、その子に合わせた“鳥さんファースト”の付き合いが鳥さんの幸せにつながると思います!

鳥ならではの問題も

鳥はよくなついてくれる一方で、一度心を閉ざしてしまうと、なかなか開いてくれないこともあります。賢くて繊細なため、飼い主には思いもよらないことで怖い思いをしたり、心が傷ついたりすることも。

また、家族の中の1人にしかなつかないこともあります。ペア同士の絆が深い鳥でよく見られます。この場合、1人の飼い主にはよく懐いて甘えますが、ほかの家族には威嚇をしたり、噛みついたりするほど塩対応になることも。自分が大好きな飼い主を独占したいという嫉妬からくることもあり、鳥の心ならではの難しさがあります。寿命が長い大型のインコやオウムでは「反抗期」があり、なついていたのに突然飼い主を威嚇する、触らせてくれなくなる、という変化が起こることもあります。

鳥になついてもらうには

せっかく鳥を飼うなら、なつかれてコミュニケーションをとりながら楽しい毎日を過ごしたいですね。少しでもなついてもらうために、できることを紹介します。

なつきやすい種類の鳥を選ぶ

鳥は種類によってなつきやすさに差があります。なつきやすい種類もいれば、臆病な性格でなつくまでに時間がかかる種類も。一般に初心者にもおすすめとされるセキセイインコ、文鳥、コザクラインコなどは人に慣れやすく、なつきやすい鳥です。これから鳥の種類を考えるのであれば、性格も参考に選びましょう。

信用できるショップからお迎えする

その鳥がなつきやすい子になる一番のポイントは、ヒナのころの経験です。鳥は「刷り込み」といって、卵から孵って間もない頃に見た相手を追いかけ、よくなつく習性があります。ヒナから育てることが難しくても、この時期に人に慣れるように丁寧にお世話をされた子は、幼鳥からお迎えしても飼い主になつきやすい傾向にあります。将来を考えて人に慣れるようにヒナのお世話をしているショップやブリーダーなど、信用できるところからお迎えしましょう。

丁寧にお世話をする

鳥になついてもらうために、まずやることは特別なことではありません。鳥は「ごはんを運んでくれる人」「ケージを掃除してお世話をしてくれる人」になつきます。こうしたお世話を日々丁寧に繰り返すうちに、飼い主に慣れて心を開いてくれます。

お迎えしたばかりの鳥は、環境の変化に戸惑い、新しいおうちに慣れるのに精いっぱいです。この頃に何度も声をかけたり、触れようとしたりすると、かえってストレスになりかねません。まずは「わたしがお世話をする人です」という自己紹介を兼ねて、毎日きちんとお世話をしてください。

最初はケージ越しにコミュニケーションを

鳥が環境に慣れて落ち着いてきたら、ケージに近づいて外から声をかけることから始めましょう。大きな声ではなく、やさしいトーンで話しかけてみてください。

警戒する様子がなく慣れてきたら、今度はケージ越しに手を近づけます。最初はびっくりして遠ざかるかもしれません。慣れやすさは鳥によって異なるので、鳥の方から近づいてくるようになるまで根気強く繰り返しましょう。ケージ越しに手に近づくことに充分慣れてから、スキンシップのステップへ進んでください。

手乗りやスキンシップに挑戦する

手に慣れたら、おやつやフードを手からあげてみましょう。手のひらに置くと、徐々に近づいてうまくいけば手に乗ってくれます。慣れてくるとおやつやフードがなくても乗るようになるでしょう。

すぐに手に乗ってくれるかどうかは、鳥によって異なります。なかなか乗ってくれなくても、鳥の方から近づいてくるようになったらなでてみましょう。もちろん、嫌がる場合は無理をしません。鳥がなでて喜ぶのは、頭やお顔のまわりです。背中をなでることは控えてください。女の子の産卵を促すことになり、体に負担をかけてしまいます。

なでることができるようになったら、充分仲良くなれています。放鳥のタイミングでおもちゃを使って一緒に遊んだり、言葉を教えたりして、絆を深めていきましょう。

鳥からのアプローチを待つ

鳥と仲良くなるために重要なことは、決して焦らないこと。なつくスピードは鳥によって異なります。鳥の年齢や家庭に来るまでの人との関わり方、その鳥の個性も関係してくるので、一概には言えません。

時間がかかる子でじれったくても、急に触れたりつかんだりするのは絶対にNG。なつき始めると鳥の方から近寄ってくるので、その時を待ちましょう。なかなか手応えがなくても、毎日少しずつでも関わることを続けるのが大切です。

鳥に嫌われる行動を避ける

大きな音を出す、強い香りをつける、突然ケージに手を入れる、いきなり捕まえる、頭上から覆いかぶせるように手を伸ばす、といった鳥が嫌がる行動は避けてください。

特に大きな音は、生活の中で無意識に出していることもあるので要注意。ドアを開け閉めする音や電話の着信音の音量などにも気をつけて、鳥をびっくりさせないようにしましょう。

また飼育環境が落ち着けるものであることも重要です。室内が鳥にとって快適な環境になっているか、鳥の様子も見ながらよく確認してください。

まとめ

鳥になついてもらうためにできることを紹介しました。鳥が「なつく」ということは、飼い主のことを「仲間」またはペアの鳥と同じように大切に思っているということ。なついた飼い主が忙しくなって構ってくれない、お世話をしてくれない状況が続くと、鳥はとてもさみしい気持ちになります。飼い主に裏切られたと感じて、なついていたのにすっかり態度が変わってしまうことも珍しくありません。鳥がなついてくれたら、飼い主からも惜しみなく愛情を注いで大切に飼い続ける必要があることも、覚えておいてくださいね。

ライター

佐藤華奈子

佐藤華奈子

大学の動物系学科を卒業後、教育情報誌、ライフスタイル誌の編集プロダクション勤務を経て、2009年よりフリーランスの動物ライターに。「動物を飼うことは動物と暮らすこと」をテーマに活動中。おもにペット、動物園、牧場の動物関連の雑誌、書籍などで執筆。2011年よりうさぎ(ネザーランドドワーフ)と暮らしている。