飛べずに路上などにいる野鳥を見つけると、とても心配になりますね。そんな野鳥を見かけたらどうすればいいのでしょうか。飛べない野鳥を拾ってもいいのかどうか、また見かけたときにできることを紹介します。

野鳥は拾ってもいい?

野鳥は許可なく保護したり飼育したりすることはできません。ウグイスやメジロなどの身近な鳥も野鳥の一種です。「鳥獣保護法」で国や都道府県などの許可なく捕まえることは禁止されています。善意で保護しても法律違反になってしまうので、心配でもすぐに拾うことは控えましょう。

野鳥は「触れない」「拾わない」で見守ること

野鳥に対して私たちができることは、見守ること。何もしないで見守ることは心が痛むかもしれませんが、繊細な野鳥は人に捕まったことでショックを受けて死んでしまう可能性があります。そうでなくても捕まえることは大きなストレスにつながります。簡単に捕まるほど弱っている時点で、保護しても助からない可能性も。拾うことが必ずしも野鳥のためになるとは限りません。

野鳥は自然の一部です。弱っている野鳥を狙う天敵もいるでしょう。かわいそうに思うかもしれませんが、鳥を食べる野生動物も生きるためにしていることです。自然界は食べるものと食べられるものがバランスを保って成り立っています。私たちが鳥ばかり保護して助けてしまうと、自然の生態系のバランスを崩すことに。鳥と人に共通する感染症もあるため、野鳥には「触れない」こと、そして「拾わない」ことが基本です。

野鳥のヒナは飛ぶ練習中の場合も

とくに気をつけたいのは、飛ぶ練習中のヒナを拾ってしまうことです。ツバメなどの野鳥のヒナや若い鳥が地面にいると、巣から落ちたのかも、と思うかもしれません。その可能性もありますが、たいていは飛ぶための練習中と考えられます。野鳥のヒナが飛ぶ練習をするときは、親鳥が近くで見守っています。ヒナが飛べないでいると、飛び方を教えにきます。このとき、人がむやみに近づいてしまうと、親鳥は警戒してヒナに近寄ることができません。鳥の親子のために、私たちは絶対に近づかず、離れた場所で見守るようにしましょう。飛べないヒナは親鳥が助けにきます。

飛べない野鳥が春夏に多い理由

飛べない野鳥が目撃されることが多いのは春の終わりごろから初夏にかけてです。この期間は野鳥のヒナが巣立つために飛ぶ練習をする時期。親鳥が春に巣作りをして卵を産み、生まれたヒナが育ってちょうど巣から出られるようになる時です。この時期は特に、ヒナが飛ぶ練習をしていることを念頭に置いて見守りましょう。

飛べない野鳥を見かけたとき、できること

以上のように、野鳥をむやみに拾ったり、触わったりするのはNGです。ただ、もし野鳥がいる場所が路上で、交通事故の恐れがあるなど命の危険にさらされているような場合は、付近の草むらや木の枝に移動してあげてもいいでしょう。人と鳥に共有する感染症もあるので、できれば手袋などをして、直接触れないようにしてください。触ったあとは石鹸でよく手を洗うなどして対策を。鳥を移動した後は、離れて見守りましょう。ヒナであれば、鳴き声を聞いて親が迎えにくる可能性があります。

見守ることが基本ですが、例外もあります。まず、希少種の場合は、自治体の担当課に連絡することで保護される場合もあります。環境省や都道府県のレッドリストにあがっている絶滅危惧種などは、ケガの治療や一時保護で助かる可能性がある場合は、引き取られて保護されることもあるのです。希少野鳥の代表的な種類にはトキやタンチョウ、ヤンバルクイナ、シマフクロウなどですが、なかには「シジュウカラガン」など、よく見かけるカモ類と見分けが難しい鳥もいます。条件によるので必ず保護されるわけではありませんが、希少種の可能性のある野鳥がケガをしているような場合は、都道府県の鳥獣保護担当に相談してもいいでしょう。

また、野鳥が人工物や人為的な事故でケガをした場合、保護すべきだという考え方もあります。こうした場合、自治体によっては専用施設を設けたり、ボランティアなどが保護活動を行ったりすることもあります。ただし、生態系や人間への生活の影響などの観点から、保護対象外の鳥が決まっていることも。たとえば東京都の場合は、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト、スズメ、ヒヨドリなどは対象外とされています。

住んでいる都道府県のホームページなどを確認し、保護の可能性があれば野生鳥獣の担当窓口に連絡をして指示を仰いでもいいでしょう。
自然の一部である野生動物への対応は都道府県によって異なります。基本的な方針は、野生動物は見守ること、何もしないでそっとしておくことですが、上のような例外的な対応がある場合も。この機会に住んでいる都道府県の対応を調べてみてもいいですね。傷病鳥獣救護のボランティアを募集していることもあります。

飛べない鳥を見かけたとき、してはいけないこと

野鳥に対する接し方は最初にあげたとおり、見守ることです。動物病院や動物園などにむやみに問い合わせることや持ち込むことはやめましょう。

なお、首輪や足環をつけた野鳥が見られることもあります。ハトの場合、足環があれば野鳥ではなく飼われているレース鳩・伝書鳩です。じっとしている様子が一時的なものであれば、レースや訓練の途中で休んでいるだけの可能性もあります。まずはしばらく様子を見てみましょう。ただし、明らかにケガをしていたり、衰弱して動けないようであれば、保護や連絡が必要な状況かもしれません。足環に記載された文字によって連絡する機関が異なるので、ホームページなどで確認して必要があれば連絡しましょう。

ハト以外の鳥の場合は国や研究機関が調査のためにつけたものです。おもに渡り鳥の渡りの経路を調べるために装着されたものになります。勝手に取り除いたり、壊したりすることはやめましょう。こうした野鳥を見かけた場合は、公益財団法人山階鳥類研究所へ報告フォームなどを利用して情報を提供すると調査に協力できます。

まとめ

野鳥は同じ鳥でもペットとは異なる存在です。基本的には人の保護を必要とせず、自然の摂理の中で生きるものです。心配になってしまいますが助けが不要なケースも多いので、まずは見守りましょう。

ライター

佐藤華奈子

佐藤華奈子

大学の動物系学科を卒業後、教育情報誌、ライフスタイル誌の編集プロダクション勤務を経て、2009年よりフリーランスの動物ライターに。「動物を飼うことは動物と暮らすこと」をテーマに活動中。おもにペット、動物園、牧場の動物関連の雑誌、書籍などで執筆。2011年よりうさぎ(ネザーランドドワーフ)と暮らしている。