腸リンパ管拡張症 <犬>

概要

Overview

全身に張りめぐらされているリンパ管の中にはリンパ液が流れています。このリンパ液は毛細血管壁から血漿(けっしょう)(※)が浸出したものであり、ほぼ血漿と同じ成分でできていますが、このほかにも免疫に重要な役割を果たす白血球の一つである リンパ球が含まれています。
リンパ系は組織の過剰な液体や老廃物を回収し、小腸で吸収された脂肪分を静脈に運び、体内に侵入した病原体や異物をリンパ節に運び除去するという働きを担っています。腸リンパ管は、腸の粘膜や粘膜下組織(粘膜下織)に存在します。小腸で吸収された栄養素のうち、糖やアミノ酸は毛細血管に入りますが、脂肪分は腸リンパ管に入り、リンパの流れに乗って静脈まで運ばれます。
※血液から赤血球や白血球などの血球部分を除いた液体成分が血漿です。

腸リンパ管拡張症は、何らかの原因でリンパの流れが妨げられ、リンパ管が拡張し、機能不全を起こす病気です。リンパ管の中のリンパ液には、血管から浸出した血漿蛋白が溶解した状態で含まれていますが、拡張して破たんしたリンパ管から血漿蛋白が大量に腸管腔内に漏れ出るため、低蛋白血症を起こします。腸粘膜から蛋白が喪失してしまう病気が蛋白漏出性腸症ですが、腸リンパ管拡張症もその原因疾病の一つです。

蛋白漏出性腸症についてはこちらをご覧ください。

 

※コメント欄は、同じ病気で闘病中など、飼い主様同士のコミュニケーションにご活用ください!記事へのご意見・ご感想もお待ちしております。
※個別のご相談をいただいても、ご回答にはお時間を頂戴する場合がございます。どうぶつに異常がみられる際は、時間が経つにつれて状態が悪化してしまうこともございますので、お早目にかかりつけの動物病院にご相談ください。

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原因

先天性のリンパ管形成不全によるものと後天性のものがありますが、犬では先天性のものは稀だといわれています。後天性のリンパ管拡張症では、腸管の炎症を伴う疾患(炎症性疾患)に続発してリンパ管の閉塞が起こり、リンパ管内圧の上昇に伴いリンパ管拡張が起こるというものが、最も一般的な原因として挙げられます。また、リンパ管を圧迫するリンパ腫のような腫瘍や肝硬変、右心不全などのようなリンパ管内圧を上昇させる疾患に続発する場合もありますが、原因が特定できない場合も多く見られます。

症状

食欲不振、体重減少、慢性的な下痢が見られます。また、低蛋白血症に伴い、血漿の浸透圧が下がり、血液中の水分が血管外に漏れ出して浮腫や腹水、胸水などを起こすこともあります。

治療

残念ながら、現在のところ効果的な根本治療はなく、症状の抑制や改善といった対症療法が中心となります。また、原因疾患の治療に加えて、一般的には低脂肪食、高蛋白質といった食事療法、腸の炎症を抑えるステロイド療法、食物アレルギーが関与している場合は除去食によるアレルギーの治療などが行われます。腸リンパ管拡張症の食事療法において、特に重要なのは脂肪分の摂取に関する点です。
食事中に含まれている脂肪は、分子構造の違いから長鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、短鎖脂肪酸に分けられますが、この中で長鎖脂肪酸は腸管のリンパの流れを刺激してリンパ管を拡張させ、腸管内への蛋白の喪失を大きくします。ところが一般的なペットフードに含まれる脂肪の多くは長鎖脂肪酸なので、なるべく脂肪分を制限したフードを利用し、ココナッツオイルやMCT(中鎖トリグリセリド)パウダーなど、リンパの流れを刺激しない中鎖脂肪酸を多く含む食品を利用して摂取カロリーを補うことが推奨されています。また、食物繊維は長鎖脂肪酸の吸収を抑制してリンパの流れを減少させることができますので、高繊維食が望ましいとされています。
加えて、腸リンパ管拡張症は脂質の吸収不良を起こすので、脂溶性のビタミン(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK)を補っておくことも必要です。重度になると、対症療法として、状況に応じてアルブミン製剤の投与や膠質輸液剤(こうしつゆえきざい)といわれる血漿の浸透圧を維持するための輸液剤の投与、血漿輸血などが行われます。また、近年、再生医療、細胞治療の研究がさかんになされており、病院によっては有効な治療方法の一つとして実用化されています。

予防

病気の発生自体を予防することは難しいので、食欲不振、体重減少、慢性的な下痢など、気になる症状が見られたら早めに受診をして早期発見・早期治療を行うようにしましょう。
腸リンパ管拡張症の確定診断は、全身麻酔をかけて内視鏡や試験開腹での腸の生検によって行いますが、低蛋白血症や衰弱が進んでしまうと検査自体の負担やリスクが大きくなってしまいます。適切な時期に検査を行うことができるように、早期の段階で受診するようにしましょう。

病気のデータ

Disease data

病気のかかりやすさ(%)

平均年間通院回数
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みなさんからのコメント

Comment
JUNCORO
2024-12-04 14:43:59
トイプードル♀9歳です。2年前に内視鏡検査で腸リンパ管拡張症と診断されました。治療はステロイドで、様子を見ながら徐々に減薬しましたが、薬を切ると症状がでてしまい、またステロイドをMAXの量からやり直す、これを3回繰り返してしまったので、現在は症状がでない最低限の量でステロイド投薬をしながらですがとても元気に過ごしています。食事は合うフードがないのでお魚中心の低脂肪手作り食です。
ラッキー
2025-07-14 10:37:28
今日7月14日が13歳の誕生日。3㎏のヨーキー♂です。
月2回の診療を受けていますが 腹水が溜まったりなくなったりを繰り返しております。当初ステロイドを使っていましたが今は数値が下がっていますの使っていません。市販のドライフードにおやつをトッピングしていますがなかなかです。もし魚・肉の手製のレシピがございましたら教えていただきたいのですが。
アニコム獣医師
2025-07-16 09:50:35
>ラッキー様
腸リンパ管拡張症のわんちゃんのお食事は低脂肪・高たんぱく食が推奨されております。手作り食としては、タンパク質として茹でたささみや白身魚、炭水化物として芋や米および野菜類を材料として、水煮や和え物で与える方法がございます。食事の内容が病態に影響する可能性がありますので、実際にわんちゃんに与える前に担当の獣医師に確認されることをお勧めいたします。
ムーママ
2025-08-23 07:01:15
コメント失礼します。我が家のトイプードル10歳6.7キロも一年半前から慢性的な下痢で拡張性腸炎だろうと言う事でステロイドの投薬を行ってきましたが症状が変わらない為内視鏡検査を受けてきました。先生からはササミとジャガイモのみの食事に換えて2週間様子をみて下さいと言われました。ササミのリンの過剰摂取、ジャガイモは一日の量がかなり多い為こんなに同じものだけを食べていいものかと心配です。
アニコム獣医師
2025-08-26 14:46:27
>ムーママ様
ササミとジャガイモのみの食事は、確かにリンの過剰摂取やビタミン・ミネラル不足などの懸念がありますが、2週間の試験的な食事管理ですとリスクは少ないと思われます。食事管理の効果が得られない場合は別の治療法へ進みますが、効果が得られた場合は、サプリメントを追加したり、低脂肪療法食を混合したりして、長期管理に適した食事内容に移行していきますので、かかりつけの先生にもご確認くださいね。

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