私たち飼い主は誰しも「愛しいどうぶつたちと共に過ごす時間が、このままずっと続いてほしい」と願います。でも、私たちはヒトよりも速いスピードで凝縮した時を過ごすよう運命付けられたどうぶつたちを見送らなくてはなりません。どうぶつたちが命の炎を輝かせる時と同じように、炎が小さくなり消えゆくどうぶつを「ありがとう」という言葉とともに抱きしめてあげましょう。
いつか迎える「心痛むそのとき」をどのように過ごしたらいいのか、メンタルケアのスペシャリストでグリーフカウンセラーの稲本 有香さんからメッセージをいただきました。
「ターミナル」とは「末期」という意味の言葉です。大切なペットの病気が治る見込みがないと分かったとき、飼い主家族は大きな衝撃とともに、重大な決断を迫られます。
一日でも長く延命を望み積極的な治療を続けるか、あるいはターミナル・ケアへと移行するか・・・。
ターミナル・ケアとは、末期医療ということです。時に苦痛を伴うこともある積極的な治療ではなく、むしろ痛みや苦痛の緩和に重点を置いた看護をさします。病院で死を迎えることが一般的になった人間の場合と異なり、ペットの場合、このターミナルの時期を在宅で介護し看取るケースも多いようです。
大切なペットとの別れに直面し介護を行う飼い主の皆様の悲しみや痛み・・・。それを少しでもやわらげるために、どのようなことが役立つか、以下にご紹介していきます。
今、ここを大切にする
QOL(クォリティーオブライフ)という言葉をご存じでしょうか。人生、生命、生活の質といった意味の言葉です。ターミナル期におけるQOLとは、痛みの緩和はもちろんのことですが、できるだけ"その子らしさ"を支えることと言っても良いかもしれません。では、"その子らしさ"を支えるとはどういうことでしょうか?ここであえて答えの一つをあげるとするなら、できるだけそれまでの日常と変わりなく、飼い主さんや家族、仲間とのふれあいの中に生き、その子本来の性質や性格が保たれるようにすること、と言えるでしょう。
私たち人間は、まだ来ぬ将来について考え、不安を感じたり、嘆いたりします。「この子がいなくなったらどうしたらよいのだろう?」と考え、悲しみにくれることは当然の感情です。しかし、ペットたちは、未来を恐れたり憂えたりすることはありません。彼らは「今、ここ」を懸命に生きているのです。彼らとともに、今、ここにある時間を大切にし、残された時をできるだけ悔いが残らないよう過ごすこと、それが何よりも大切なことではないでしょうか。
自分のできることを探す
ターミナル期のペットを介護する飼い主さんにとって、何よりもつらいことの一つは、日に日に弱って行く子を目の前にして、何もしてあげられることがないということです。悔いのない時間を過ごすためにも、自分ができることを見つけることは役立ちます。
あなたの大切なペットは何が好きですか?どんなことを喜びますか?どんなことを気持ちよいと感じますか?
ペットのQOLを維持するのに役立つそれらの答えを知っている(あるいは見つけられる)のは、飼い主であるご家族です。
食欲がない時でも、これだったら食べられる、というものを探すこともできるでしょう。ベッドの寝心地を良くするための工夫もできるかもしれません。不快感を軽減するために身体を清めてあげたり、マッサージをしたりすることで、ふれあいの時間を過ごすこともできます。
ターミナル期は愛するペットとともに歩んだ人生を振り返り、その子が自分に与えてくれた様々な価値や意味について考える大切な時間でもあります。ともに暮らした時間を思い出しながら、たくさんの「ありがとう」「愛しているよ」という想いを伝えること、それもまたペットのためにできることの一つではないでしょうか。
信頼できる相手に話を聞いてもらう
ターミナル期のペットの介護をする飼い主さんには、多くの身体的、心理的痛みが伴います。例えば、この子がいなくなったらどうしたらいいのだろうという不安や、この子がこうなってしまったのは自分のせいではないかという自責の念にかられることもあるかもしれません。治療方針の選択について、自分の選択が正しいのかという迷いが伴うこともあるでしょうし、また介護による睡眠不足や食欲不振から体調を崩すこともあるでしょう。
そのような状態の中で、ペットのQOLを維持するのはなかなか難しいことです。そのような時、とにかく一人で抱え込まず、信頼できる相手に話しを聞いてもらうことが役立ちます。家族でも、友人でも、ペット仲間でも、獣医さんでも・・・。自分が感じている痛み、様々な想いや悩みを理解してくれる人達のサポートが、ターミナル期のペットを支える助けとなります。介護に伴う負担は一人で負い切れるものではありません。ターミナル・ケアのためには、介護する家族自身の心のケアも必要だということを心にとめておいて下さい。
「相談したら迷惑になるのでは?」「こんなことを言ったら相手が困るかもしれない」「できるだけ人に頼らず自分の力で頑張らなければ」などという心理が働くかもしれません。しかし介護の時期は長い人生からみればひと時のことです。あなたと同じようにペットを愛し、あなたの気持ちを理解しようとしてくれる方々からのサポートを受け取ってください。そしていつかその方がサポートを必要とするときに、今度はあなたがその方の支えとなって下さい。
自分自身をいたわる
ペットの介護を一生懸命しているとき、忘れてしまいがちなのは自分自身をいたわるということです。介護が長引けばそれだけ身体的・心理的負担も増します。考えてみてください。もしあなたが介護の疲れで倒れてしまったら、あなたを頼りにしているペットはどうなるのでしょう?
ターミナル期の介護を続けるためには、時にはリラックスできる時間を持つことも必要でしょう。ゆっくりと入浴したり、お気に入りの音楽に耳をかたむけたり・・・。マッサージやアロマテラピーなどを活用しても良いかもしれません。
また思い切ってペットのことをひと時、信頼できる相手----たとえば家族や友人、かかりつけの動物病院や馴染みのペットシッターさんなど----に看てもらい、その時間ゆっくりと休養を取るという選択肢もあるかもしれません。介護を手助けしてくれる協力者を探し、チームを作ること。(3)でも述べましたが、ペットのQOLを維持するためには介護している家族にもサポートやケアが必要だということを、ぜひ心にとめておいて下さい。
◇稲本 有香さんのご紹介
【資格】
●日本ペットカウンセラー協会認定 講師 1級ペットカウンセラー 1級ターミナルケアリスト
●GCC認定 グリーフカウンセラー
●財団法人メンタルケア協会認定 メンタルケア・スペシャリスト
【経歴】
日本語、人類学講師として長年留学生の指導に務める。家族およびペットとの死別をきっかけに死生学、ターミナルケア、グリーフケア、カウンセリング等を学ぶ。現在グリーフ教育の普及を目指し、HAAC(Human And Animal Community)において活動を行っている。
【飼っている動物】
猫 (アビシニアン ♂ 小太郎)
【ひと言】
人は互いに支え合う存在です。人生において他者からのサポートが必要な場面はいくつもありますが、大切な命を育てる責任を負っているとき、またその命との別れのとき、人はより多くのサポートを必要とするのではないでしょうか?そんなとき、周りにいる人々と自然に手をさしのべ合い、助け合うことができれば、これほど心強いことはないでしょう。人と動物がより絆を深め、ともに幸福であるために、私もまたそんな一人として、皆さんのお手伝いができればと願っております。
"ありがとう"の気持ちを込めて・・
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9月に大細胞性リンパ腫の注射での抗がん剤を受けて、その後食事をしなくなりました。
注射をしなくても余命2ヶ月と言われていました。
強制給餌をしていますが、日増しに弱くなるフクちゃんを見ているのが辛い。
吐いた前日まで元気に走り回っていたのに、余命2週間、現実が受け入れられません
吐いた前日まで元気に走り回っていたのに、現実受け入れられません
呼吸が苦しそうであまりちゃんと寝られてない様子などを見てるのが辛く、元気に走り回ってた頃を思い出しては泣いてしまいます。