あどけない表情の子犬が、いつの間にか性成熟期を迎えると、「大きくなったね」と感激しながらも、戸惑ってしまいますね。発情のしくみや性周期などはどうぶつ種により大きく異なります。今月は犬の性周期についてご案内しましょう。
犬の性成熟期とは?
性成熟とは、一般的には犬の体が生殖可能な状態になったことをいいます。
犬の性成熟期は、犬種や個体などによる差はありますが、一般的に生後6〜12ヶ月頃に訪れます。小型犬の性成熟は比較的早いのですが、ゆっくりオトナになる大型犬では遅く訪れます。大型犬の初めての発情は生後12ヶ月〜24ヶ月にみられる場合もあります。
性成熟の目安
女の子では、初めての発情の到来が目安となります。
男の子では、女の子ほどハッキリしませんが、「片足を上げて排尿をするようになること」が目安となります。他にもクッションやぬいぐるみなどの上に乗っかって腰を振るような行動(マウンティング)がみられるようになります。
犬の発情の特徴
犬の場合、発情は通常女の子にみられるものです。
発情中の女の子の尿中には男の子をひきつけるフェロモンが含まれており、男の子は発情中の女の子に誘発される形で反応が起こります。男の子は数キロ離れていても発情中の女の子の匂いを察知できるといわれ、誘発された男の子は発情した女の子を必死に追いかけるようになったり、男の子同士でケンカになったりすることもあります。
犬の発情は、6〜10ヶ月の周期で起こり、1年に約1〜2回の周期で発情を繰り返します。初めての発情は発情徴候が目立たないこともあり、飼い主さんが気付かない うちに終わってしまっていることもあるようです。
小型犬の発情周期は短く、大型犬は長い傾向があるといわれており、ほとんどの犬種では1年に2回の発情を迎えますが、1年に1度、秋に発情を示すバセンジーなどのような犬種もいます。
犬の発情周期
犬の発情のことをヒートと呼ぶことがあります。犬の発情周期は、次のように4つに分けられます。
◇発情前期(期間:約3〜27日間、平均約9日間)
発情出血が確認できる時期です。なお、犬の発情出血は、人の生理とメカニズムが異なります。人の生理は、妊娠が成立せず、排卵後に子宮内膜がはがれ落ちた際にみられる出血であるのに対して、犬の場合は、妊娠の準備のために厚くなった子宮内膜が充血し、血液がにじみ出たことによる出血です。したがって、犬では発情出血後に排卵がおき、交配が可能な時期を迎えます。この時期の陰部は、ぽっこりと腫れた状態(腫脹)になり、犬は陰部をなめるような仕草をみせます。尿の量が多くなるのに伴い、排尿の頻度が高くなります。
◇発情期(期間:約5〜20日間、平均約10日間)
女の子の犬が交尾を許容する時期にあたります。発情期に入ってから約3日目になると排卵が起こります。交配適期は、発情出血が始まってから約15〜17日目にあたる排卵後約60〜108時間の間とされ、排卵後約4日間は受精が可能です。陰部が腫脹した状態が続きます。
◇発情休止期(期間:約2ヶ月間)
発情休止期の卵巣では受精卵の着床や妊娠の維持に重要な働きをする黄体が形成され、発情休止期を黄体期ともいいます。妊娠が成立していなくても黄体は2ヶ月間ほど機能しますが、しばらくすると退行し、次の排卵に備えて新たな卵胞が育ちます。
この時期に偽妊娠の症状がみられることがあります。
◇無発情期 (期間:約4〜8ヶ月間)
発情休止期とその後迎える発情前期の間にあたる時期が無発情期です。卵巣の活動など、繁殖に関する機能は休止しています。
偽妊娠って何?
発情出血も随分前に終わり、妊娠していないにもかかわらず、女の子がぬいぐるみなどをケージに持ちこんで、まるで子育てをしているような仕草をみせることがあります。このような巣作り行動以外にも、乳腺の張りや乳汁の分泌といった妊娠に似た症状がみられることもあり、このような症状を偽妊娠といいます。発情休止期にみられます。
排卵後に卵巣に形成される黄体が、犬では妊娠していた場合と同じ期間(約63日)機能し、プロジェステロン(黄体ホルモン)と呼ばれるホルモンを分泌します。このプロジェステロンは妊娠維持の作用をもつホルモンであり、プロジェステロンの分泌が低下した頃に乳腺を刺激するホルモンが分泌されますので、乳腺の張りなどの、妊娠時のような兆候がみられることになります。
偽妊娠は治療を行わなくても時間の経過とともに落ち着く場合がほとんどですが、中には食欲や元気が無くなることもあります。発情の度に重い偽妊娠の症状がみられる女の子ですと、避妊手術をすることが望ましい場合もあります。
発情に際して注意したいこと
1.発情時の体調の変化
陰部の腫脹や発情出血などの体の変化だけではなく、頻尿、食欲不振、消化器症状などを示す犬もいます。発情に伴う体調の変化が大きい場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
2.周囲への配慮
未去勢の男の子は発情中の女の子の匂いに敏感に反応します。
お散歩など、男の子との接触が考えられる場合には、追いかけ回される、ケンカに巻き込まれるなどのトラブルが考えられます。犬の受胎可能な期間は長く、約7日間(排卵2、3日前〜排卵後4、5日)とされており、望まぬ妊娠を防ぐ意味でも、お散歩に出かける際には、リードや首輪が外れやすくなっていないかをしっかりとチェックしましょう。また、「犬が今、発情中であること」を周囲の飼い主さんに伝え、相手の犬との距離をとるなど、しっかりとした注意が必要です。
3.偽妊娠の注意
偽妊娠の状態が長く続くことにより、乳腺炎などを引き起こすことがありますので、避妊手術をすることが望ましい場合もあります。偽妊娠の症状が重かったり、長く続いたりする場合は、動物病院さんに相談をしましょう。
4.発情休止期の注意
発情休止期は、黄体から分泌されるホルモンであるプロジェステロンの作用により、免疫力が低下して細菌感染を起こしやすい状態になります。そのため、この時期には細菌が侵入し、子宮蓄膿症を発症するリスクが高まります。陰部などを清潔に保つように心掛け、「元気、食欲、飲水量が普段と変わりないか」、「お腹が異常に膨らんでいないか」、「陰部から膿が出ていないか」、「異常に陰部をなめていないか」などを注意してみるようにしましょう。
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※個別のご相談をいただいても、ご回答にはお時間を頂戴する場合がございます。どうぶつに異常がみられる際は、時間が経つにつれて状態が悪化してしまうこともございますので、お早目にかかりつけの動物病院にご相談ください。
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オスが興奮状態になってしまってから4日程経って居るのですが、後どのくらいまで興奮状態が続きますか?
ご飯やトイレ散歩をしても、静かになりにくく困っています。
呼んだら遊んでくれると思うようになったのか、発情期なのか、原因が分かればありがたいです。
どうすれば良いですか?
女の子のワンちゃんの発情期は一般的に10日くらいとされています。妊娠を望まない場合はドッグランなどの男の子と接触する場所への外出は控え、お散歩中も他のワンちゃんに追いかけられてケガをする危険性があるのでお気をつけください。発情中はワンちゃんも体調の変化にストレスを感じている可能性があるので、過度なスキンシップは控え、おもちゃでたくさん遊んで気を紛らわせてあげてください。