災害に備えよう!
爬虫類の防災対策
2024.02.28
ペットの防災の情報やボランティア支援の対象は、ほとんど犬猫に限られるのが現状です。爬虫類は体のしくみやお世話が犬や猫とは異なるので、それぞれの種や個体に合わせて、飼い主が防災を考えていく必要があります。いつ起こるかわからない災害に備えて何ができるか、一緒に考えていきましょう。
爬虫類の防災のポイント
爬虫類の防災で大切なことは、まず逃げ出してしまうのを防ぐことです。日頃の飼育環境では、ケージが倒れたり水槽が割れたりしてどこかに行ってしまう恐れがないように対策を。避難用のケージや水槽はしっかり閉まるものを用意して、中から押し開けられることがないよう、生体を安全なネットや袋に入れてから避難用ケージに入れることも考えておきましょう。
また防災マップなどで起こる可能性のある災害をチェックしておき、大雨で浸水の可能性があるときなどは早めの避難を心掛けてください。そして温度管理も重要なポイントです。特に寒い季節は体温が下がり過ぎて命に関わることも。下で紹介する防災用品もチェックして、温度管理に必要なものは忘れずに充分な量を準備しておきましょう。
爬虫類の防災対策【1】
避難先を考えておく
ペットを受け入れる避難所もありますが、基本的に犬や猫を想定しています。ペットは屋外で管理するケースもあり、温度管理が必要な爬虫類には厳しい環境であることも。爬虫類が苦手な人もいることを考えると、避難所のほかに、自宅が無事であれば在宅避難、また車中泊避難などが選択肢になります。とはいえ、ライフラインが止まっていると管理が大変な状況であることは変わりません。遠方に住む親戚や友人に預かってもらう、一緒に遠方に避難するなど、可能な限り避難先の選択肢を広げておきましょう。
爬虫類の防災対策【2】
室内の防災対策
▲写真①
▲写真②
ケージや水槽は、地震の際に高い場所から落ちることがないよう、床置きや低い位置に置くことがおすすめです。ラックなど高さのある場所にに置く場合は、落下することがないよう、ラック自体を倒れないように固定し、ラックと飼育容器の間に滑り止めになるシートを敷きましょう。さらに、万一に備えてケージや水槽のフタはしっかり閉めるようにしてください。爬虫類がいる場所が無事でも、ほかの高い家具が倒れたり、割れたガラスや物が部屋に散乱したりすると、速やかに避難できなくなります。近くに窓があれば飛散防止フィルムを貼り、背の高い家具はなるべく置かないようにしましょう。ペットがいる場所から屋外へ出る経路にもあまり物を置かないようにします。また防災用品も、飼い主のものと一緒にすぐに持ち出せる場所に置いておきましょう。
※写真①:大型種(ニシキヘビやオオトカゲなど)に用いる大型ケージに、鍵を設置し、脱走を防止している様子。飼い主の外出中に災害が起きても、扉があいて脱走してしまわないよう、しっかり閉じておく。
※写真➁:小型種に用いる衝撃に弱いプラスチック製ケースを、落下や破損の対策として堅牢な鍵付きケージ内に設置している様子。
!避難時にチェック!
保温のためのヒーターやバスキングランプがついたままになっていると、火災の恐れがあります。家を出る前に必ずオフに。コンセントも抜いてください。水中ヒーターも同様です。
爬虫類の防災対策【3】
防災用品の準備
防災用品は、次を参考に種類や個体によって必要なものを考え、準備しておきましょう。
・ケージ、ケージを入れるバッグやカバー
避難用に、最低限の大きさのケージや小型水槽を用意します。持ち運びを考えて重さも考慮して選びます。プラスチック製の容器は軽量ですが、フタがしっかり閉まるものを準備しましょう。密閉されてしまう容器の場合は空気穴をあけておきます。爬虫類のストレスを抑えるため、また苦手な人の目に触れることを防ぐために、カバーかケージが隠れるバッグも用意するといいでしょう。
※写真は力の強い大型種用のケース。移動時・避難時の脱走を防ぐ鍵つき。
・洗濯ネットや布袋
スムーズに避難用ケージに移動できるよう、また避難中に慣れないケージから逃げ出すことがないように生体を直接入れる洗濯ネットや布袋などがあると便利です。避難用ケージの中で動いてケガをするのを防ぐこともできます。ケージに隙間が多くて心配な場合は、タオルや新聞紙を詰めることも移動によるケガの防止になります。
・温湿度計
爬虫類の命を守るために欠かせないのが温湿度管理です。必要な湿度・温度が保てているか確認するために、温湿度計は必ず入れておきましょう。
・寒さ対策グッズ
カイロのような停電しても温度管理ができるものが必須になります。電気の復旧に時間がかかる場合もあるので、持続時間の長いものを用意しておきましょう。カイロは命を守るため最低限の温度を保つために使用し、タオルで巻いたりケースに入れたりしてからケージのそばに置くなど、暑くなり過ぎないように工夫してください。ケージを包む毛布なども用意を。
・暑さ対策グッズ
災害はいつ起こるかわかりません。暑い夏の時期に発生することもあります。エアコンなどの空調が効かなくなると、部屋の温度が急上昇する恐れがあります。冷蔵庫に保冷剤や凍らせたペットボトルを用意しておき、タオルで巻くなどしてからケージのそばに置くなど工夫してください。
・水
断水に備えて飼い主だけでなく、爬虫類用の飲み水のほか、半水棲のカメやトカゲの場合は飼育環境に必要な水も用意します。
・水質調整剤(半水棲の品種の場合)
いつも使っているもので未開封のものを用意しておきます。
・ごはん
品種によっては、フード類は準備しなくてもいい場合もあります。温度管理が難しい非常時に食べることで、消化不良を起こしたり吐いたりして体調を崩す恐れもあるので、絶食が適していることもあるからです。種類や成長ステージから飼い主が判断し、必要な場合は常温で保存できるドライフードを中心に準備しましょう。非常用に用意したごはんやおやつは、日頃から与えて慣れてもらいます。(非常時のごはんについては、品種によって対応が変わります。お迎えしたショップや爬虫類に詳しい獣医師などに対応を確認しておきましょう。)
・床材
日常的に使っているもののほか、キッチンペーパー、新聞紙、ペットシーツなど、それぞれの品種に適した管理しやすいものを用意します。
・器
必要に応じて、ごはんや水の器を用意します。
・タオル・クリップ
ケージなどの目隠しとして使えます。
・掃除用品
ゴミ袋、ペット用ウエットティッシュ、ビニール手袋など、必要な掃除用品をそろえておきましょう。
・普段飲んでいる薬
非常時に使う可能性のある薬をまとめておきます。
・シェルター
身を隠して落ち着くことができる場合は、シェルターも用意しておきます。
・わが子の写真(アップ、全身、家族と一緒のもの)
どんなに気をつけていても、ペットが逃げ出すことや、ケージごとはぐれてしまうことも考えられます。保護された場合に、写真があればスムーズに飼い主と証明できます。また捜索を依頼する場合でも、写真があれば的確に特徴を伝えることができます。
・防災手帳
ペット自身や飼い主の情報を記入しておきましょう。
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爬虫類の防災対策【4】
定期的に対策の見直しを
防災対策は一度考えたら終わりにするのではなく、人間の物資と同じように定期的にペットの備えも見直しましょう。爬虫類の場合、避難用のケージなどが現在のからだの大きさに合っているか確認を。またフードや水、薬の期限なども確認し、必要に応じて新しいものと交換します。今の時点では防災情報がなかなか見つからない種でも、今後は情報が増えていくかもしれません。情報も定期的に新しいものを調べるようにしてください。飼い主自身の安全を守るためにも、地域の避難所の情報なども時々見直しを。
※写真はアニコム社員が備えている避難用ボックス。災害時に爬虫類を入れるクーラーバッグやペットシーツ、ホッカイロ、小型のプラケースをまとめたもの。
災害が起きたとき、ペットを守れるのは飼い主しかいません。被災したときに後悔しないよう、飼い主自身の安全の確保はもちろん、ペットのために災害に備えてできることを日頃からよく考えて準備しておきましょう。
<ライター>佐藤 華奈子
公開日:2024.2.27