概要
Overview胃ではペプシンというたんぱく質を分解する消化酵素が分泌され、胃に運ばれた食べ物は塩酸とペプシンを主体とする胃液により消化されます。強酸性の胃液が、胃そのものを分解しないのは、胃粘膜から分泌される粘液が胃の内側を覆い、胃酸と接触しないように防御しているからです。
ところが、この防御機構が何らかの原因で弱まったり、胃酸分泌量が過剰に増えたりすると、胃酸により胃自身が消化されてしまい、胃粘膜に潰瘍(かいよう)※が形成されてしまいます。この状態が胃潰瘍です。
※胃の壁は3層構造をしていて、内側から粘膜層、粘膜下層、筋層から成っています。「潰瘍」とは、このような構造の胃壁がさまざまな原因によって傷つけられ、えぐられた状態です。一般的に、傷が粘膜下層より深くなった状態を「潰瘍」、粘膜下層に達しない状態を「びらん」と呼びます。
※個別のご相談をいただいても、ご回答にはお時間を頂戴する場合がございます。どうぶつに異常がみられる際は、時間が経つにつれて状態が悪化してしまうこともございますので、お早目にかかりつけの動物病院にご相談ください。
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原因
人の胃潰瘍では、ストレスやヘリコバクター・ピロリという細菌の感染が原因となることが知られていますが、犬では、これらが直接的な原因となっているかどうかは、はっきりとは分かっていません。犬の胃潰瘍の原因として多くを占めるのは、薬の服用に伴うものです。
痛み止め・抗炎症薬の中には胃の粘膜を保護する力を抑制する作用を持つ薬剤があり、これらを長期間服用した場合、副作用で胃潰瘍が引き起こされることがあります。
ちなみに、このような薬の例として非ステロイド性抗炎症薬の一つであるNSAIDs(エヌセイド)が挙げられ、このような副作用を予防するため、胃腸薬が一緒に処方されることが一般的です。
また、ヒスタミン産生性の腫瘍(肥満細胞腫)によって、血中のヒスタミン濃度が高くなった場合、胃を攻撃する力が強まるため、胃潰瘍が生じることがあります。この他にも、敗血症のショックや肝疾患などにより起こることも知られています。
症状
痛みのために食欲や元気がなくなり、コーヒー色の嘔吐物を頻繁に吐いたり、黒色の血便を排泄したりするといった症状があらわれます。嘔吐物がコーヒー色に見えるのは、血液の色素が胃酸の作用を受けて酸化しているためです。
治療
胃潰瘍の原因となった基礎疾患が特定できる場合には、まずその治療を行います。薬の副作用により胃潰瘍が起きている場合は、原因となった薬の服用を一時的に中断したり、別の薬に切り替えたりします。同時に、対症療法として胃酸の分泌を抑える薬や胃粘膜を保護する薬、胃酸を中和する薬などを必要に応じ、組み合わせて用います。
嘔吐がひどく、食事を摂ることが出来なかったり、電解質のバランスが崩れていたりする場合には輸液療法を行い、栄養や水分の補給、電解質の補正を行います。また、ひどい胃潰瘍のため大量の出血があり、重度の貧血が起きている場合は輸血等の処置が必要になることもあります。
食べることが出来る状況では、消化の良い食事を与えることが大切です。また、胃潰瘍になった原因に応じて療法食が処方されることもあります。
内科療法で状態が改善せず、命に関わるような出血がある場合には手術による潰瘍の切除を検討 することもあります。最悪の場合には大量に出血をしたり、潰瘍が穿孔(せんこう)※して腹膜炎を起こし、ショック状態に陥ったりして死に至ることもありますので、十分な経過観察が必要です。
※穿孔とは、消化管、尿管、血管などの臓器の壁に完全に穴が開いた状態を指します。原因としては、炎症、外傷、潰瘍、壊死などが挙げられます。
予防
胃潰瘍はさまざまな原因により発症するため一概にはいえませんが、普段から定期的に健康診断を受けて、基礎疾患となり得る病気は早めに治療することも大切です。また、胃に刺激の強い食事を避けて消化の良い食事を与えるように心がけましょう。
一度、胃潰瘍を発症した場合には、再発する可能性がありますので、完治した後も、胃の粘膜保護剤などの胃薬を継続して投与し、予防する方法もあります。再発を予防する上で最も重要なのは食事管理です。食事内容や健康診断の時期、投薬の継続などに関して、かかりつけの先生に相談しておくと安心です。
なお、異物誤飲は、胃潰瘍の直接原因となることは少ないのですが、すでにある潰瘍やびらんを悪化させてしまうことがあります。日頃から誤飲事故を起こさないように犬の周りにあるもので危険なものはないかよく注意するようにしましょう。
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