「人用のシャンプーを犬に使ってはいけない」と聞いたことがある方も多いと思います。
でも、なぜ使用してはいけないのでしょう?その主な理由は、犬と人の皮膚の構造の違いにあるのです。
愛犬の皮膚に適切なケアを行うために、犬の皮膚についての知識を深めましょう!
皮膚の基本的な構造
犬の皮膚も人の皮膚も、外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層構造で成り立っています。
いちばん外側をおおう「表皮」は、さらに4層(上から角質細胞層、顆粒細胞層、有棘細胞層、基底細胞層)に分かれます。表皮の細胞は最下層の「基底細胞層」で作られますが、一定の周期で「角質層」に押し上げられることで、細胞の入れ替わりが行われています。これを“皮膚のターンオーバー”と呼びます。
また、皮膚には「皮脂腺」や「汗腺」などの「分泌腺」が分布しています。汗腺には「エクリン汗腺」(*1)と「アポクリン汗腺」(*2)の2種類があります。「皮脂腺」から分泌される皮脂は、汗と混ざり合って天然の保護膜を形成します。皮脂は、「角質層」の水分蒸散を防ぐという役割を持っており、皮膚の潤いを保ちます。
*1エクリン汗腺:運動時や暑い時などに分泌され、人では 体温調節に役立っています。成分は、99%が水分、残りは塩分だといわれています。
*2アポクリン汗腺:性フェロモンの役割を果たしてい ます 。成分は脂質、タンパク質、アンモニア、尿素等であるといわれています。
基本的な構造は同じですが、犬と人とで違う点がいくつかあります。

皮膚構造の項目を見ていただければわかるように、皮膚の外側の角質層は、実は人より犬の方が薄いため、刺激や乾燥に弱いことがわかります。
また皮膚のpHも異なるため、人と同じシャンプー剤を犬に使うことは、おすすめできないのです。
犬の被毛構造
毛自体の構造は人と同様ですが、人と比較して毛が細く、キューティクルも薄いためにダメージを受けやすいという特徴があります。
また人の場合は基本的に1つの毛穴から1本の毛が生えていますが、犬の場合は1つの毛穴から上毛(トップコート)と下毛(アンダーコート)が複数生えています。
また、犬の被毛の種類には、シングルコートとダブルコートがあります。
■ダブルコート
上毛と下毛の二重構造で、上毛は皮膚の保護・下毛は保湿の役割をもちます。下毛は換毛期(通常は春と秋)が訪れると抜け替わります。
ダブルコートをもつ犬種の例:柴犬、ポメラニアン、ウェルシュ・コーギー、ゴールデン・レトリーバー、ミニチュア・シュナウザー、ラブラドール・レトリーバー、シー・ズー 、シェットランド・シープドッグ、ジャックラッセル・テリア、フレンチ・ブルドッグ 、ビーグル など
■シングルコート
被毛が一重で下毛をもたず、また換毛期もありません。
シングルコートをもつ犬種の例:トイ・プードル、マルチーズ、ヨークシャー・テリア、ミニチュア・ピンシャー、ボクサーなど
チワワなど、被毛の長さなどによってバリエーションがあり、一概に分類するのが難しい犬種もあります。
被毛のケアの注意点
■こまめなブラッシング
特にダブルコートの犬は換毛期にまとめて毛が抜けるため、死毛を取り除いてあげることが必要です。 また、毛の長い犬は、毛が絡まり、毛玉ができやすいのですが、死毛や毛玉を放置してしまうと、皮膚病の原因になります。こまめなブラッシングを心がけましょう。
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■定期的なシャンプー
定期的なシャンプーを行うことにより、皮膚状態を健康に保つことができます。特に夏場は皮脂の分泌も増え、皮膚や被毛が蒸れやすいなどの理由から皮膚のトラブルが増える季節です。ただし、過度なシャンプーは皮膚の保護をしている皮脂膜まで奪ってしまう可能性があるため注意が必要です。皮膚の状態や犬種などにより個体差がありますが、一般的に月1〜2回が目安と言われています。
■シャンプーは犬用のものを使う
前述の通り、犬の皮膚は人と比べて表皮が薄くデリケートです。また、皮膚のpHも人とは異なります。シャンプーを行う場合は、人用のものではなく、犬用のシャンプーを使うようにしましょう。
■シャンプーの後は被毛をしっかり乾かす
特にダブルコートの犬の毛は乾きにくいため注意が必要です。生乾きの状態だと細菌が繁殖しやすくなり、皮膚病を起こす可能性があります。ドライヤーの前にしっかりとタオルドライをしてから、ドライヤーをかけると良いでしょう。ドライヤーの熱は犬に負担がかかるため、冷風〜弱温風に設定したり、ドライヤーを犬からある程度離したりしてあげることが好ましいと言われています。
また夏場のドライヤーは熱中症の原因になる可能性もあるので、室温に注意しましょう。
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皮膚の観察ポイント
被毛のチェックやケアだけでなく、被毛を支える皮膚のチェックも大事なポイントです。
■毛をかきわけて地肌を見る
当然ながら犬には毛が生えているので、しっかり毛をかきわけないと、皮膚(地肌)そのものを見ることはできません。見づらい場合は、ブラシなどを活用するのもよいでしょう。
■もともと皮膚の状態を知っておく
普段の皮膚の色を把握しましょう。個体差があるため、一概に「赤い」からと言って皮膚病とは限りません。
色素沈着などで、部分的に黒くなっていたりすることがあります。その部分が大きくなってきたりすると腫瘍のおそれもありますが、もともとの場合もあるので、愛犬の皮膚の模様を把握しておくことが大事です。
■アレルギーやアトピーの症状が出やすい箇所がある
食物アレルギーやアトピーになった際、皮膚の症状が出やすい箇所があります。
・食物アレルギー:眼・口周り、背中など
・アトピー:眼・口周り、耳介、趾間、腋窩、腹部など
特に好発犬種と言われるワンちゃん(柴犬、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、ボストン・テリアなど)は、この部位を知っておくとよいでしょう。
■見づらいところも要チェック
普段目につかないところも、たまに見てあげることが大事です。脇の下、内股、臀部、足先、外生殖器周囲などが抜けがちです。
皮膚のケアのために必要なことは?
特に乾燥肌やアトピーの素因を持っている子などの場合、日々の乾燥を防いで保湿をすることが重要になります。シャンプーのしすぎは皮膚の乾燥を招くので、注意が必要です。
また、フードを変えてあげることで、皮膚・被毛の健康につながることもあります。その場合は、効果が出るまで3ヶ月ほどかかります。
皮膚の状態によって適した保湿方法やフードは異なります。気になる場合はかかりつけの動物病院の先生に相談することもおすすめです。
まとめ
被毛や皮膚は、飼い主さんが日頃から観察することができ、異常にもっとも気づきやすい部分のひとつです。今回ご紹介した内容も参考にしていただき、愛犬の健康を維持していただければと思います。
※コメント欄は、同じ病気で闘病中など、飼い主様同士のコミュニケーションにご活用ください!記事へのご意見・ご感想もお待ちしております。
※個別のご相談をいただいても、ご回答にはお時間を頂戴する場合がございます。どうぶつに異常がみられる際は、時間が経つにつれて状態が悪化してしまうこともございますので、お早目にかかりつけの動物病院にご相談ください。
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コメントいただきありがとうございます。
記事内容を一部修正いたしましたので、ご確認いただければと存じます。
何かお気づきの点がございましたらご連絡いただけますと幸いです。
どう見ても、我が家のビーグルの子は、ダブルコートですが、、、
コメントありがとうございます。社内の他の獣医師やトリマーにも確認いたしました。一部犬種で以前シングルコートと言われていたものが現在はダブルコートとみなされているものもあり、本記事でご紹介している情報が直近の通説のようです。